医師インタビュー企画 Vol.13 渡邊剛
医師の偏在などで心臓外科の弱い地域が生まれていることが分かっています。仕方のない面もあるかもしれませんが、同じ保険料を払っておきながら、同等レベルの医療が受けられないのはやはりおかしいと思います。ですから、僕にできる形でこの“不平等”を解消したいのです

渡邊剛 Go Watanabe
医療法人社団東京医心会ニューハート・ワタナベ国際病院総長

「日本の心臓外科医療を立て直す」ために新病院を立ち上げた渡邊剛

道を歩いていて、通り沿いのガラス張りの建物に目をやると、中では心臓外科手術が行われている―。そんな光景を見られるのは、2014年5月に東京都杉並区に開設されたニューハート・ワタナベ国際病院(一般43床)だ。同院は、新宿駅から電車で約20分の距離にあり、地上5階の建物には2つの心臓外科用手術室を備える。立ち上げたのは、日本発の術式を数多く開発し、金沢大学心肺総合外科教授や東京医科大学心臓外科初代教授を歴任した渡邊剛だ。

2014年5月に開院したニューハート・ワタナベ国際病院の外観病院1階にあるガラス張りの手術室は、 患者家族が手術のゆくえを見守ることができるようにもなっている。これは、新病院の“透明性”や“公明正大さ”を象徴するものとして、渡邊のアイデアを実現したものだ。

「心臓外科手術の死亡率は全国平均で約3%。これに対して、当院は約0.5%です。この差が生まれる理由は、日本における心臓外科手術のレベルがスピードと正確さの双方において低いことにあります。東京の病院には、冠動脈バイパス手術でつないだ血管が3本中1本以上、時にはすべて詰まってしまう病院もあります。私はこのような現状に鉄槌を下して、日本の心臓外科医療を立て直したいと思い、病院を立ち上げました。この手術室では、患者さんやご家族にすべてを見てもらいながら早く正確に手術を行いたいと思っています」

手術時間は全国平均の半分以下-「チーム・ワタナベ」

心臓外科手術の成功率99.5%を実現する「チーム・ワタナベ」は、渡邊の長年の同僚である麻酔科医や看護師、人工心肺装置を扱う臨床工学技士で構成される。弁置換手術の全国平均時間が約97分のところを、チーム・ワタナベは約40分で終えてしまうという。

「手術において、いかに時間を短くするかが成功のキモです。手術時間が短縮されれば、患者の回復もそれだけ早まる。ただそのためには、各分野の一流を集めたプロ集団をつくる必要があります」

その必要性を思い知ったのは、トルコのある著名医師を訪ねたときでした。彼は“稀代の天才外科医”と呼んでいいほど見事な技術を持っているだけでなく、年間2000件の手術をこなすというのです。それだけの数をこなせる秘密は、効率的なオペレーションで手術室3部屋を同時に稼働できる彼のチームにありました。次から次へと手術をこなしていく彼のチームを見て、目からうろこでした。

外科医1人が手術に長けていればいいわけでなく、チームとして手術での段取りやトラブル対応をうまくこなさないと無理なのです。プロ集団のチームを本気でつくり始めたのはそれからです」

外から見えるようになっている手術室。全てをOPENに、医療の透明性を一般の方にアピールしている。もちろん手術中は外からは見えない。金沢大学の教授になって3年目だった渡邊はその後、最高のチームづくりに勤しんだ。そして、ニューハート・ワタナベ国際病院は、彼とともに仕事をしたい同志が結集した病院と言える。現在、チーム・ワタナベを構成するのは金沢大学時代から苦楽をともにした外科医や麻酔科医、渡邊と働くために職場まで変えたベテラン看護師や若手の臨床工学技士らだ。秘書さえも、金沢から東京に移ってきた仲間なのだという。

 

 

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