医師インタビュー企画 Vol.8 丸山泉
仕組み、制度は、時代の要請があってこそ生まれる。今の否定は、過去において積み重ねられてきた議論の否定にしかならず、事態の収拾を困難にするばかり。一度はすべてを受け入れて過去から学ぶ姿勢を忘れてはなりません。

丸山泉 Izumi Maruyama
一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会理事長

総合診療医に、今こそアイデンティティを。
医療を揺さぶりつづける丸山泉。

vol8_12010年4月1日に誕生した日本プライマリ・ケア連合学会(以下、プライマリ・ケア学会)は、「連合」の言葉が示すように3つの学会が合併してできた学会である。医療の細分化にともなって酷似した学会が乱立する中、その流れに異を唱えるように日本プライマリ・ケア学会、NPO法人日本家庭医療学会、日本総合診療医学会がひとつになる報が、当時の医療界に投げかけた衝撃の大きさは記憶に新しい。そして、初代理事長の前沢政次からわずか2年で新生学会を引き継いだのが丸山泉だ。難産のすえ未熟児で生まれた赤ちゃんが保育器から出られるか否かは、彼の手腕にかかっている。「どうせ、かたちだけの合併だろう」。関係諸氏の声が聞こえそうだが、丸山は医療界の諦観や薄笑いなど意に介さない。「3つの学会は反目し合っていましたが、医療環境が激変する中で小競り合いをしている場合ではない、価値観のリセットを要するほど、たいへんな時期に差しかかっているとの危機感を共有しました。外部からどう見られているかは知りませんが、少なくとも3つの学会に籍を置く会員たちは自らの意識改革の必要性を悟ったすばらしい方々の集まりでした。結果、無理だろうとのおおかたの予想を覆し合併がかなったのです」。新学会が保育器から出される日がそこまできている。不可能を可能にする唯一無二の人、丸山泉の源泉に迫った。

すべての医師会活動から突然、身を引く

vol8_2『いまどちらを向くべきか』と題する著書を出版したのは2010年。福岡県にある小郡三井医師会の会長の任に就いていた丸山が、誤解多き医師会に身を置き、希望と諦念の間を揺れつつ、地域医療のために悪戦苦闘する20年の軌跡と提言を記した1冊である。驚くのは、そのあとだ。上梓後、すべての医師会活動から身を引き、数多(あまた)の肩書を返上した。

「地域で長く医療活動にたずさわると、限られた範囲で考えが固定して視野が狭くなり、医療の本質を見失ってしまう。そんな危機感を覚えて執筆を始めたのですが、筆を進めていくうちに自己矛盾に次々と気づいてしまった。
このまま自分をごまかしつづけられない。一度、権威的なものから離れる必要性を感じたのです」

しかし、プライマリ・ケア学会の籍だけは残した。

「実は、前述した本のまえがきを前理事長の前沢先生にお願いした経緯からなんとなく除籍しないですませてしまった。本当はあのとき辞めていてもおかしくなかったのです。軽い気持ちから籍を抜かなかっただけ。しかし、それだけに、今では何か運命的なものを感じます」

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