医師インタビュー企画 Vol.12 佐藤賢治
地域医療をよりよい方向へ向かわせるためのアイデアを持っている医療者が、全国に大勢いると思います。たとえどんなに小さなことでも、そのアイデアを実践してみてほしい。現場の一人ひとりの実践の積み重ねが、課題だらけに見える地域医療を確実に良くしていくと、わたしは思うんです。

「“仮想”佐渡島病院構想」に挑戦する佐藤賢治

vol12_1日本海沿岸に位置する、新潟県の佐渡島。過疎化・高齢化や医療者不足といった、地域医療に共通する課題の先進地域であるこの離島で、2013年4月から、あるプロジェクトが動き出した。

まるで島全体が一つの病院であるかのように、島内の医療機関や介護施設が島民の診療情報を共有する。この共有情報を参照しながら、多職種が施設横断的に連携を取りあう-。この「“仮想”佐渡島病院構想」を提案し、実現の立役者となったのが、佐渡総合病院の外科部長を務める佐藤賢治だ。縁もゆかりもなかった佐渡島に佐藤が足を踏み入れたのは、1995年。課題山積のこの島を見てきた佐藤が、成し遂げたいこととは-。

「前提を嘆いても、何も変わらない」

vol12_2新潟港から高速船で約1時間。港から車でさらに20分ほど進んだ島の中心部に、佐渡総合病院はある。病院6施設、医科診療所21施設を抱える佐渡島における最大の中核病院として、“最後の砦”の役割を果たす。佐渡総合病院がどこまで対応できるかが、この島の「医療の限界」を規定していると言っても過言ではない。

「島の中心に位置する佐渡総合病院は、この島の救急車の85%を受け入れる、2次救急のかなめです。ほかの病院で対応が難しい患者さんも、ほぼすべて当院に紹介され、当院でも対応が難しいとなれば、本土の病院に送ります。島民が受ける“この島での最後の医療”は常に当院が担っていると言っていいほど、患者の流れが出来上がっている。この島の医療体制の大きな特徴だと思います」

vol12_3佐渡島の面積は、東京23区の1.4倍に当たる。離島としては全国有数の広大な面積に対し、島民は6万人、うち37.9%は65歳以上の高齢者が占める。天候が悪ければ、島外搬送もままならず、ある程度は島内で医療を完結させなければならない。佐渡総合病院が位置する島の中心部は平野部に当たり、人口や医療機関も多いが、同院から車で1時間半ほど掛かる北端部にも、島民は暮らしている。島内の医師数は90人ほどで、10万人当たりの常勤医師数は、134.6人と、全国平均(224.5人)の6割にも満たない。

「残念ながら、島の北端まで片道1時間半もの時間をかけて、1-2人の患者を相手に在宅医療を展開するのは現実的でありません。

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診療所同士が連携して在宅患者への24時間対応を実現させようという国の方針もありますが、ここにはそれができるほどの数の開業医もいない。国が示す施策を実行するのに必要なリソースが圧倒的に不足しています。

ただ、それでも在宅医療は推進すべきだと思います。住みなれた自宅で過ごしたいという患者さんは、少なくないですから。課題を嘆いても、何もはじまりません。この島が抱える前提を踏まえて、医療と介護のリソースをどう組み立てていくか。わたしたちは、それを考えなければいけません」

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