医師インタビュー企画 Vol.16 志水太郎
つらいときにいつも心に浮かぶのは、『自分の後ろには後輩がいる』という思いです。とてもありがたいことに、わたしと出会えたことで、『内科医になりたい』『勇気を持って明日からの臨床をもっと頑張ろう』と思ってくれた後輩がいる。そういうことを思い返すと、手探りでもいいからどうにかして一歩進んでみようと、前向きな姿勢になれるんです。

志水太郎 Taro Shimizu
東京城東病院 総合内科チーフ

志水太郎が「愛され指導医」になれたわけ

vol16_1東京都江東区の東京城東病院(130床)。同院には、異例の人気を誇る後期研修プログラムが存在する。立ち上げたのは、若くして日本・アメリカ・カザフスタンで医学教育に携わってきた志水太郎だ。

志水のノウハウをまとめた著作『愛され指導医になろうぜ』(日本医事新報社)は現在、後進指導に悩む指導医のバイブルとして親しまれている。30代という若さにして、華々しい実績を残しているように見える志水。しかしその裏には、数々の挫折があった。

3週間で総合内科メンバー15人が殺到

2014年11月、後期研修医の募集を開始するには遅い時期にもかかわらず、東京城東病院に新設された総合内科後期研修プログラムでは、3週間で15人の採用枠が充足。その後も応募者は殺到した。

ここまでの人気を集めたポイントは、“ベッドサイド重視の指導”と“新しくて、楽しいプログラム”にあると、志水は語る。

vol16_2「カンファレンスは臨床業務をさまたげないよう必要最低限の1日30分にとどめ、その分、後期研修医が患者と接する時間を大幅に増やしました。
一方でアメリカのプログラムなどを参考にし、業務負荷が掛かり過ぎないように勤務形態も工夫し、プライベートや自習の時間も確保できるよう配慮しました。

希望があれば、大学院進学・臨床留学のサポートも行いますし、将来指導医として活躍したい人には、リーダーシップやマネジメントの訓練をします。

もちろん研修内容には指導医が考えて提供するものもありますが、一方で後期研修医自身にも自主性をもって提案・行動してほしいと思っています。個々の要望に応じて一緒にプログラムを作っていくというフレキシブルな体制を敷いています」

夢は、新しいコンセプトの医学部をつくること

vol16_3医学教育にかける志水の思いは、並大抵ではない。

はじめて医学教育に興味を持ったのは、医学生のとき。母校・愛媛大学医学部の解剖実習で下級生に指導して以来、どんどんのめり込んでいったという。
イギリスの大学に短期留学した際は、現地の実践的なベッドサイド教育に衝撃を受け、帰国後に母校の自治会委員長に立候補し、60名からなる医学教育小委員会と教育プログラムを組織。学内の教務委員会に『医学教育改革案』を提出したほど。

医学部卒業後も、医学生・研修医向けのTdP(Teaching delivery Project)と名付けた勉強会で講師活動を続けてきた。そうした成果もあって、若手医師や医学生の間で志水の知名度は高い。志水に指導を仰ぎたいと門戸を叩くケースも多いそうだ。

志水の将来の夢は「新しいコンセプトの医学部をつくって、世界をリードする医学教育を展開すること」だという。

「自分がいなくなった後も、自分を超える後輩が次々と育っていく教育システムを確立したい。そのためには医学部をつくって、卒前教育にも携わっていきたいと思っています。

今思い描いているのは、単に医療現場で戦力となるための臨床スキルを磨くだけでなく、医師としての”初等教育”までしっかりできるような医学部です。

卒前教育の段階で、患者さんと接する上で大切な、人としての優しさや医師としてのマインドを学んだ医師が増えていけば、絶対に社会はもっと良くなる。話が大きいと思われるかもしれませんが、良い医師が増えれば、わたしの最終目的である世界の平和・教育・文化にもそれぞれ貢献できると思っています」

これまでの実績が買われ、2016年度からは、獨協医科大学の総合診療教育センター長として、大学病院の強みを活かした教育プログラムを新たに立ち上げる予定。

大きな目標に向かって、着実に歩を進めている今日の志水を“若き成功者”として見る向きは強いかもしれない。しかし、これまでのキャリアは必ずしも順風満帆ではなかった。

東京城東病院の総合内科プログラムの特徴

vol16_4東京城東病院・総合内科アドバンスド・レジデンシー・プログラムは、2週間×26ブロックからなる多様なローテーションを基本骨格としている。

後期研修医は各ブロックで、病棟業務、夜間業務、外来業務、救急外来、臨床研究など特定の業務を集中的に研さんする。

東京城東病院で2年間後期研修を受けて以降は、プログラムの外部選択ができるようなローテーションを計画中だという。

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