医師インタビュー企画 Vol.7 徳田安春
私は疫学者としての危機感から本土をめざし、欧米化によって本土が被るであろう悲劇を総合診療医の育成によって回避させるために、今、ここにいるのです

徳田安春 Yasuharu Tokuda
筑波大附属病院水戸地域医療教育センター総合診療科教授

“闘魂!”をたずさえて本土防衛を決意した徳田安春。

「イチロー型総合診療医」の育成、「闘魂外来」など、医師教育においてユニークなネーミングの施策を次々に打ち出し、医学生や研修医に絶大な人気を誇っている徳田安春は、生まれも育ちも沖縄県だ。彼が、本土での総合診療医育成に本腰を入れたのは2009年の春から。筑波大附属病院水戸地域医療教育センター(以下、水戸教育センター)は、筑波大学が水戸協同病院内に設けた民間病院内サテライトキャンパスで、徳田は、そんな全国で初の試みに初代総合診療科教授として参加した。高度医療と専門教育を担う筑波大教官が、市中病院として1次・2次医療を支えている水戸協同病院内で同院の医師と一体になり、医学生や研修医に、地域が必要としているプライマリ・ケアを実践的に教育している。多くの人には知られていないが、研修のメッカ・沖縄県立中部病院で総合診療の神髄を叩き込まれた徳田は、実はひとつの使命感に背中を押され本土での活動を決意したのだった。

実践力は、生身の人間を診察する以外には身につかない

vol7_2まずは、高まる興味を抑えつつ水戸教育センターを舞台に繰り広げられている医学生を対象にした臨床実習について聞いた。

「ローテーションで医学生が来たら、有無を言わさず院内PHSを持たせます。ファーストコールはすべて学生のPHSに入る。たとえば、入院患者が熱を出したときや、救急部から入院病棟に患者を移すときも、最初に呼ばれるのは学生。救急隊からの受け入れも同様で、患者が心肺停止していたら即座に心臓マッサージをするのも学生です。私たちはこれを診療主役型の臨床実習と呼んでいます」

診療主役型とは、医学生が”主役”となり、診療にあたるスタイル。”お手伝い”として参加する診療参加型と区別するための名称だそうだ。

現在、多くの大学病院で行われている臨床実習は診療参加型ですらない。診療見学型、あるいはマネキン相手に手技訓練を行うシミュレーション型である。真剣に対しているのだろうが、やはり、生身の患者を相手にしての実習とくらべれば、緊張感、リアル感が違い、教育効果の点で天と地ほどの違いがあると言わざるをえない。

5年次、6年次になっても国家試験のための座学が大半を占める医学部のカリキュラムの現状に照らせば、水戸教育センターが実施している臨床実習は特殊だ。「特殊」を「無謀」の意味を込めて口にする人も多いだろう。

「医学生に、なんて乱暴な行為をさせるのかとお叱りの声も聞こえてきそうですが、何があっても、医療の最終責任は私たち指導者がとります。指導者が常に目を配る環境下で、1日約30人の救急初診外来部門患者のファーストタッチを医学生が担います」

医学生は患者の病歴をとり診察、採血し、アセスメントプランを立てて、指導医にプレゼンテーションする。その繰り返しが実践力を生む。

「シミュレーターでは、胃潰瘍の穿孔による腹膜炎の身体所見などが出せません。実践力は生身の人間を診察する以外には身につかないのです」

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