医師インタビュー企画 Vol.14 林祥史
いかに医学的に正しい診療を行うか、そしていかに無駄な検査・投薬をせずにお金をかけずにすませてあげるか。治療費が高すぎると患者は来れなくなってしまうので、これも「医の倫理」の大事な要素です。カンボジアのようなお金がない国では特に重要だと認識しています。

林祥史 Yoshifumi Hayashi
医療法人社団KNI北原国際病院脳血管内治療部長

救命救急センター の“輸出”をめざす林祥史。

カンボジアに日本発の救命救急センターが設立されようとしている。2016年1月からの稼働を目指してプロジェクトを推し進めているのが、林祥史だ。34歳という若さで、北原国際病院(東京都八王子市)の血管内治療部長として診療を続けながら、株式企業KMSI取締役としてカンボジアプロジェクトの指揮を執る。日本式医療を海外に輸出しようとする、その原動力とは―。

日本の医療提供体制は発展途上国にフィットする

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「日本では簡単な手術が、カンボジアではいまだ誰も挑んだことがない手術だったりして、重宝される。たった一人の医師でも与えられるインパクトが大きく、非常に感謝されます。発展途上国で医療に携わる醍醐味ですね」

これまで6年間、林は数え切れないほどカンボジアに赴き、調査も兼ねて医療協力を行ってきた。現地の医療に触れる中、日本式の医療輸出する意義について見えてきたものがあるという。

「日本の医療は質が高い。そして、日本の医療提供体制はカンボジアや他の発展途上国にもフィットするものだと思います。欧米では、多くの医療者が分業して1人の患者を診療しますが、日本では医師、看護師などひとりひとりがカバーする領域が広く、少人数の医療者で診療が行われています。労働環境を日本の現状よりも改善する必要はあると思いますが、少人数でチーム医療を行うという日本のよさが出せれば、医療インフラの構築にコストを掛けられない発展途上国の状況にぴったりです」

約20年間続いた内戦によってインフラが脆弱なカンボジアには、国民皆保険のような社会保障制度は整備されていない。内戦の犠牲になった医師も多く、たとえ治療費を支払う余裕があっても、十分な医療を受けることは難しいという。
こうした背景から、カンボジア国民が自国の医療をあまり信頼していないという問題も噴出しており、年間21万人がベトナムやタイなど隣国で医療を受けている状況だ。

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そんなカンボジアの首都プノンペン市に、林の日本式救急救命センターは設立される。経済成長とともに自動車も増え、交通事故が増えている同市では、救急のニーズが高まっているのだという。 林が目指すのは、北原国際病院の理念にも謳われている「適正な価格で正しい医療を受けられる環境」をカンボジアにつくること。北原国際病院が得意とする脳神経外科治療を輸出できれば、カンボジア国民は、国外に渡るよりも安い治療費で医療を受けられるようになる見込みだ。脳神経外科医が10人程度しかいないカンボジアにおいて、そのインパクトは大きいという。

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