付加価値を身に着けた心臓血管外科医(中編)―医師による、医師のための健康ライフハック Vol.3

高度な技術を要する心臓血管手術を年間300件以上もこなし、「心臓手術のスーパードクター」として注目されている、東京女子医科大学の新浪博士先生。海外で心臓血管外科医としての実績を積んだ後、天野篤先生と出会ったことがひとつの転機になります。中編では、天野先生から受けた影響や、ナンバーワン医師として患者と関わる際に大事にしていることを伺いました。(取材日:2018年11月19日)

天野先生から教わった、スーパードクターになるための秘訣

—留学を終えて東京女子医科大学で助教授を経た後、順天堂大学の天野篤先生の元へ移られたのは何かきっかけがあるのでしょうか。

2000年前後から、天野先生たちが心臓を動かしたまま手術を行う「オフポンプ手術」という革新的な手術に取り組み始めたからです。それまでは人工心肺を使ったオーソドックスなバイパス手術を行っていたのですが、次第にオフポンプの手法は世界的な潮流になっていきました。今振り返ると、その潮流に乗れた人と乗れなかった人がいたと思います。

当時、私は30代の若手。女子医大の看板としてオフポンプによるバイパス手術を始めてしばらくした時に、天野先生から「バイパスだけやっていてはだめ、いろんな手術をやらなきゃ。うちに来なさい」とお誘いをいただいたのです。

—当時、天野先生はどのような存在だったのでしょうか。

天野先生は割と異端児でした(笑)。天皇陛下の手術をする前でしたし、順天堂大学の教授とはいえ民間病院出身だったので、学会からは違うフィールドの人とみなされていたんです。でも私は、短期間に患者を集めて、内科医から「バイパスだったら天野先生」とものすごく評価されている状況に「これはすごいな!」と感銘を受けました。当時は女子医大で自ら術者として執刀する立場にありましたが、天野先生のような新しい風がどうやって患者を集めているのかを知りたかった。順天堂大学に移る際、いろんな人から反対されましたが、唯一「よかったね!」と賛成してくれたのは、私をオーストラリアへ導いてくださった南淵先生でした。

―その後、天野先生からはどのようなことを学びましたか。

患者さんや内科医に対して「付加価値をつけ、人よりも違う技量を見せつけて、圧倒的な信頼を得ること」が大事だと気づきました。

順天堂大学ではどっぷりと臨床に浸かり、天野先生に無茶ぶりされましたけど(笑)とても充実した3年間でしたね。天野先生と一緒に手術に入ることはほとんどなく、隣の手術室でそれぞれ執刀していましたが、さまざまな影響を受けました。たとえば、医師も立派なサービス業だということ。手術が上手い先生はいくらでもいますが、アピール力を兼ね備えている人はなかなかいない。それが「付加価値をつけ、人と違う技量を見せつける」というところにも通じるように、医師として自ら売りだす術を知っていると、天野先生のようなスーパードクターになれる可能性が高まるのだろうと思います。

ナンバーワンの医師として、自分の腕で患者さんを集める

—天野先生から大きな影響を受けた後、埼玉医科大学の教授に就任されてから考え方に変化はありましたか。

順天堂大学では天野先生に次ぐナンバー2の立場でしたが、埼玉医大ではナンバー1を担わざるを得なかったので頼りになるのは自分の腕だけでした。埼玉県は私にとって未開の地で、行ってみたら申し訳ないけれどすごい田舎。こんな所でどうやって患者を集めればいいのかがわからなかったので、最初は車に乗ってあいさつ周りから始めました。

その後は患者を一人ひとり丁寧に診て「2本足で返す」ことをモットーに、同志の医師4人で当直も手術もしながら治療をこなしていきました。そうすると少しずつ評判が上がって、6~7年目で天野先生がいる順天堂大学を抜き、日本で一番心臓手術をする大学病院になっていました。

ここまで成長するのは大変でしたがラッキーだったのは、埼玉県は人口730万人という国内でも5番目の密集地域なのに、病院と医師の数がものすごく少なかったこと。埼玉県の患者さんは東京都の医療機関に行く傾向がありますが、それを食い止めたら結構な人数がいるんです。そのため、時には病院が所有している救急車に乗って患者を迎えに行ったこともありました。「待っていたって患者は来ない、だから救急車を自由に使わせてください」と訴えて(笑)。

—患者さんとの関わり方で、心がけていることはありますか。

私の名刺には携帯番号を記載して、患者さんには「何かあったら電話してください」と渡しています。そのくらい医師という仕事に没頭しないと心臓血管外科医はできません。今でも毎日手術をする前に患者さんの顔を見て、終わった後は患者さんの傷をチェックする回診が欠かせません。

その時、何かを訴えたいように見える人には立ち止まって診てあげたり、「Face to Face」でそれぞれの患者さんに応じた接し方をしたりするように心がけています。手術や痛みに弱い方もいますからね。「病は気から」というように、患者さんを安心させて治療への自信を持たせると術後の回復も違うんですよ。

すでに世界の潮流に乗りバイパス手術を実践していた新浪先生は、天野篤先生との出会いによって医師のあり方を再認識し、一流の外科医としてさらなる発展を遂げました。最近では国内の活躍にとどまらず、海外に活動を広げ精力的に医療支援活動を行っています。後編では、海外での医療支援活動の実情や展望、そして多数の手術をこなす新浪先生が集中力を維持するための習慣をご紹介します。


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