心臓血管外科医が伝授!集中力を保つ術(後編)―医師による、医師のための健康ライフハック Vol.3

バイパス手術を中心に高度の技術を要する心臓血管手術を年間300件以上もこなし、「心臓手術のスーパードクター」として注目されている、東京女子医科大学の新浪博士先生。国内で一流の外科医として活躍するかたわら、タイやミャンマーでも精力的に医療支援活動を行っています。後編では日本と東南アジアにおける医療の関わりや、日々難しい手術に従事している新浪先生が集中力を保つための秘訣を伺いました。(取材日:2018年11月19日)

医療における、日本と東南アジアの未来

—新浪先生は、国内のみならずタイやミャンマーでも医療支援活動を続けていらっしゃると伺いましたが、具体的にはどんなことをしているのでしょうか。

両国とも、心臓手術の教育に関わっています。

タイは医療先進国なので、首都バンコクと東北部コンケーンを拠点に、毎回2日間で4件、これまでで30件の手術を行っています。基本的な手術ができる医師はタイにもいますが、バイパス手術などの難しいテクニックはまだまだ教育が必要な状況です。

逆に、ミャンマーは医療の発展途上国。心臓手術そのものから教える必要があります。徐々にオーストリアやオーストラリアをはじめ、他国からの支援を受け始めていますが、バイパス手術を教えられる人がいないため、私がサポートしています。バイパス手術は費用が抑えられるので経済的に有効ですし、東南アジアの人は手先が器用なので技術的にも向いていると思います。

—医療における日本と東南アジアの関係は、今後どのように展開されていくのでしょうか。

実は、心臓血管外科医の名医と呼ばれる順天堂大学の天野篤先生と榊原記念病院の高梨秀一郎先生、そして私の3人には共通点があるんです。そのキーワードは「東南アジア」。これからは日本と東南アジアの間で、医師がギブアンドテイクの関係になると私たち3人は期待しています。

というのも、心臓血管外科の患者数と医師数を考えると、日本国内で手術をするにも限界があります。そこで、日本人医師を東南アジアに派遣し、日本の優れた技術を現地の医師に伝える代わりに、日本人医師に手術の機会を与えてもらいたいと考えています。

日本は医療レベルが高いため、アジアの人たちは「医療は日本で」という志向を持っています。だからアジアの医師たちは「医療を教わるなら日本人から」と希望するのです。さらに日本人は謙虚な性格の方が多いので、ジェントルマンだと思って頼りにしてくれますし、日本のことを尊敬してくれる。尊敬されながら仕事をした方が気持ちいいものです。アジアの国に手を差し伸べることは、アジアのリーダーである日本人が率先してやるべきことだと思うんです。私はそういうつもりで支援活動を続けています。

【新浪博士先生からの「集中力」ライフハック術】
自己を管理しながら、やりたいことに集中することの大切さ

—バイパス手術のスペシャリストとして、相当な執刀数をこなしている新浪先生。細かな技術を発揮するために必要とされる集中力を、どのように維持されているのでしょうか。

私は、手術と手術の合間にいつも寝るようにしています。この習慣は、実は天野篤先生から伝授されて。順天堂大学にいた当時の私は40代、緊急処置が必要な患者さんを担当していたので、手術が終わると精神的に相当疲れていました。かなり集中した後なので、テレビドラマの『相棒』を見ながら寝落ちする毎日でした(笑)。

実際、30分寝るだけで頭がスッキリするものです。無理して起きているよりは、カクンと寝てしまった方がいいでしょう。そしてできれば、どこでも寝られた方がいい。他の先生がいようがいまいが、なるべく周りを気にせずに寝て、携帯で呼ばれたら起きればいいんです。こうした休憩だけでなく、毎晩の睡眠もすごく大事。私はショートスリーパーですが、普段頭を使っているのでベッドに横たわるとスコンと寝て熟睡できています。

―日常生活の中では、どのようなことに気を付けていますか。

集中力を使う状況に備えて、リラックスしておくことが大事です。そのためにはストレス解消と体力維持を心がけたほうがいいでしょう。

私は週に数回ジムへ通っていますが、トレーニングに入る前に10分、終わった後に20分のストレッチを必ず行って筋肉痛にならないように工夫しています。家庭ではありがたいことに妻が全てやってくれて、私は仕事だけに集中させてもらっています。家族のサポートがないと、この世界ではやっていけないかもしれません。

—集中力を維持するためには健康が第一だと思います。心臓のスペシャリストとして、心臓病を予防するために日常生活で実践できる事を教えてください。

心臓病は、動脈硬化がキーワード。動脈硬化の原因になるのが高血圧です。私の血圧は120~130を維持していますが、太っていた時は一時的に140まで上がったこともあります。標準体重よりも重いと血圧が上がりやすく、体重を落とすと自然と血圧が下がる人が多いでしょう。

また「血液サラサラがいい」と言われるように、コレステロール値が上がると血液の循環が悪くなるので注意したいところ。特に脂質の過剰摂取が一番よくないので、私はなるだけ和食を食べるようにしています。糖尿病にも気をつけて、糖質制限はかなりやっている方です。

立場上、お呼ばれ会食なども頻繁にあり、脂質や糖質が多い料理を食べざるを得ませんが、妻がしっかりと管理してくれていて会食がない日や週末は野菜中心の食事です。

—ストレスから高血圧になるという話もよく聞きますが、新浪先生のストレス解消法は何ですか。

誰にでもイライラしてしまうことはあるでしょう。実は、私がストレスを解消できる場所は手術室なんです。子供の頃から細かい作業をすることが得意で好きだった私は、ラッキーなことに毎日自分が好きなことをやらせていただいています。

でも仕事が好きではない人は世の中にいっぱいいるはずです。その場合はアフターファイブにやりたいことをする時間を短時間でも持って、リラックスすることをおすすめします。そうすることで健康維持にもつながり、仕事では集中力も発揮できるため、充実した生活が送れるのではないでしょうか。


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