うつ病を経験した医師が語る、心身のセルフマネジメント―宮島賢也氏(YSこころのクリニック)

長時間労働の是正に向け、本格的に舵を切り始めた「働き方改革」。医師については5年間の適用猶予期間が設けられていますが、研修医の過労自殺や残業代訴訟が騒がれるなど、改革待ったなしの状況が続いています。体制が整うまで時間がかかる中、ますます重要性になるのが心身のセルフコントロールです。今回は、自身もうつ病罹患経験のある精神科医の宮島賢也氏(YSこころのクリニック・院長)に、自身の体験を踏まえながら、医師のメンタルヘルスケアに関する課題と改善策を聞きました。

うつ病を乗り越え、精神科医へ

―まず、ご自身がうつ病を患われた経緯を教えてください。

宮島賢也出身の防衛医科大学校病院は、2004年の初期臨床研修が始まる前から、総合的な臨床医を育てるためのローテーション研修を行っていました。
もともと子どもから高齢者、男女関係なく診療できる医師を目指していたので張り切っていましたが、採血からカルテ書きまで、何でも完璧にしなければならないと思い込み、同期の中でも要領の悪さが目立っていました。2年目から専門を循環器科としましたが、朝から晩まで病院にいて、ポケットベルを24時間携帯する日々。当時、すべてのコールは研修医が受けていたので気が休まる日はありませんでした。その後、調子を崩して1ヶ月お休みをもらいましたが復職しても意欲が戻らず、精神科を受診したところ、うつ病と診断されました。

―率直に、その原因は何だったと思いますか。

24時間365日の過労はひとつの原因だったと思います。あとは、生真面目で責任を感じる場面が多く、もう少しマイペースに働けばよかったかなと思います。

そもそも精神疾患にかかる原因には、環境原因と根本原因があります。環境原因は過重労働や人間関係など外的な影響によって引き起こされるもの。転職などで環境が変われば、ある程度改善することがあります。わたしは、うつ病診断後に大学病院から自衛隊の病院に異動して、専門を精神科にしました。オンオフが切り替えられ、診察中も相談できる環境があったので、服薬しつつではありますが欠勤することなく働き続けました。

一方、根本原因は手付かずになりがちですが、自分の根っこにある考えのことで、遺伝や生育歴など、過去の記憶が大きく影響しています。当院にも、医師や医師のお子さんが受診されることがありますが「勉強ができないと親から認めてもらえなかった」「医者以外の職業を選べなかった」と口にする方がいます。こうした過去の経験が、現在の根本要因につながっている可能性があるのです。そのため、折を見て自分の過去を振り返り、嬉しくなかったことも含めて「これでよかった」と思うことを書き出してみると良いと思います。

明日から実践できる、習慣と考え方

―日々の忙しさに追われている医師が、具体的に気をつけるべきことは何ですか。

食生活は、工夫する余地があるかもしれません。わたしも以前はゆっくり食事ができず、コンビニのパンやおにぎり、健康ドリンクなどが定番メニューでしたが、うつ病を患ってからは野菜や果物を多めに摂るようにしています。また、当直が多いと睡眠不足になりやすいので、ちょっとした時間でも横になって休める場所をつくっておくと気持ちが楽になると思います。

―考え方の面で気をつける点はありますか。

人と比べないことだと思います。現在、当院で取り入れているメソッドに「満月の法則」というものがあります。月は、満月や三日月といった変化がありますが、三日月という月は存在しません。たまたま太陽の光が当たっているだけで、元々はまんまるですよね。これと同じことが人間にも言えて、どこかが欠けているように見えても、本当の自分はまんまるなので、そのままの自分を受け入れようという考え方です。
この法則に気づくと、自然と前向きになる方が多いです。わたし自身も「自分が患者さんを治す」のではなく「病気は患者さん自身が治す。自分はサポート役だ」と思えたとき、楽になったのを覚えています。

医師を守り、誰もが働きやすい場づくりを

精神科医―現在の医師の働き方に関して、改善すべき点は何でしょうか。

今や医師の3割が女性です。そのため、産休・育休・介護休暇のとりやすさをはじめ、これからは女性の働きやすさを基準に、医師の働き方を検討していくことが大切ではないでしょうか。たとえば、完全主治医制ではなく副主治医制やチーム制にすれば交代要員ができ、いざという時も休みやすくなります。一方、そうした複数担当制で陥りがちなのは上下関係が厳しいヒエラルキー制。できれば、医師同士はもちろん、コメディカルや患者さんと対等な関係を築きたいですね。

また、実働に見合った給与保障も大切だと思います。アルバイトをしなければ生活が成り立たない研修医がいるとすれば、本来休むべき時間も働いているので、当然疲弊します。自己研鑽は労働時間に入るのかという議論も起こっていますが、最低限の生活は守られるよう配慮してほしいです。

そして、もし、皆さんが働く医療機関で医師が倒れてしまったら、病院全体の仕組みや勤務状況を振り返るときかもしれません。「今まではできた」といった前例にとらわれず、人員状況や職員のワークライフバランスを見直す機会と捉えてもらいたいと思います。

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