人が集まるクリニックの仕掛けとは―開業までのロードマップ(5)

開業医T

内装工事と進めて行いたいのが、スタッフの採用や開業の宣伝です。クリニックの内装にはあまりこだわらなかったわたしですが、ここにはこだわりました。今回は、どのように採用、宣伝を進めたかお伝えしたいと思います。

【著者プロフィール】
専門:腎臓内科
開業時期:2000年前半
クリニック形態:開業11年目に個人診療所→医療法人化
クリニック収益:約1600万円/月
現在の月収:約120万円(手取り)
クリニックの家賃:約85万円
スタッフ:非常勤医1名、看護師3名、臨床工学士(血液透析)2名、事務1名、送迎スタッフ2名

経験値、人柄こだわったスタッフ採用

言わずもがな、採用はとても重要です。看護師や事務を雇ってもすぐに辞められてしまっては、その度に採用コストが掛かります。それだけは避けたかったので、当時の立地よりも高い年収を提示し、勤務時間もなるべく融通を利かせるなど、働きやすい環境を作ることに尽力しました。
工夫した点としては、研修に時間が掛からないようにするために、経験者を中心に採用したことです。看護師3人のうち、1人は知人に声をかけて採用しましたが、他の看護師と事務に関しては採用サイトを通して採用をしました。面接は行いましたが、ほぼ雑談が中心で、最終的な決め手となったのは、「話しやすいかどうか」でした。どれだけ高いスキルを持っていても、やはり性格的な相性がよいかどうかは別です。話しやすく、職場の雰囲気がよくなりそうなことを意識して採用をしました。経験者がほとんどだったため、研修らしい研修はしていません。なるべく働きやすい環境を作ったのがよかったのか、当時採用した看護師は、現在も働いてくれています。その後、クリニックが成長するに従い、技師や送迎スタッフも採用できるようになってきました。

インターネットを駆使して開業を宣伝

地域のニーズを把握したうえで開業しているので、ある程度の患者数を見込めてはいたものの、それだけではクリニックの経営を軌道に乗せるには足りません。開業当初から10名程度の患者さんが集まっていましたが、最終的には30人程度まで増やしたいと考えていました。そこでわたしは、集客の主な材料として、インターネットを利用しました。

わたしが開業した2000年代前半は、インターネットを媒介にした宣伝方法が非常に増えており、開業前からクリニックのホームページを開設することは決めていました。ただ、ホームページだけ開設しても患者の皆さんの目に触れにくいと考えていたため、同時にSEO対策を業者に依頼しました。SEOとは検索エンジン最適化のこと。特定のキーワードで検索するとき、その検索結果を上の方に出すようにする仕組みです。これはある程度の予算を立て、しっかりと地域の人の目につくようにしました。なぜSEOだったかというと、もともと開業した地域では腎臓内科クリニックが少なく、人工透析を受けるときに患者に負担がかかるということを聞いていたからです。
潜在的に「〇〇(地域名) 腎臓内科」や「〇〇 人工透析」などで検索される需要がもともと高いだろうとは考えていました。結果的にはホームページを見てくれる人も増え、人工透析の患者さんも、総合内科の外来の患者さんも増えて経営は軌道に乗りました。加えて、開業同時から駅にも広告を出しています。開業しているエリアの最寄り駅が大きい駅なので、地域の皆さんに認知してもらえるよう努めました。

わたしは大学病院で人間関係をあまりうまく築けませんでしたが、もし大きい病院で働いていて良好な人間関係を築けているならば、それも大事にした方が良いでしょう。開業したときに、患者さんを紹介してもらえる可能性があります。大学病院時代にはあまり意識できなかったことですが、重要なポイントです。

地域との関係づくり

当院は人工透析をメインで行うクリニックですが、地域医療に密着するために、総合内科も設置しています。人工透析の患者は開院当初からそれなりにいましたが、総合内科の患者は一から集客する必要がありました。そのためにも、最寄り駅に大きな看板を設置していますし、開業当初からSEOを意識したHPも作ってあります。地域住民との関係構築のために、開業当初から町内会に加入しています。特に、家族に高齢者と子どもがいる方々の口コミのネットワークはとても大きいものです。町内会では高齢者を中心に挨拶をして、初めて来院してくれた子どものご両親には、時間をかけて症状をなるべくかみ砕いて解説して、診療の満足度を高めるように努めてきました。今では、総合内科の患者だけでも30人/日ほど。多い時で50人/日ほど来院していただいています。

当院では病診連携、診診連携を多数の病院、診療所と行っています。出身大学の病院と地域の赤十字病院の登録医となっており、当院では対応しきれない症例は大きい病院へ紹介状を書かせて頂いています。また当院がある路線の病院を中心に、出身大学から個人診療所を紹介してもらい診診連携の体制を整えました。当院では腎臓内科をメインに総合内科や小児内科も診ていますが、それだけではどうしても対応しきれない症状も多くあります。不安な思いで診察を受けに来た患者さんに少しでも安心してもらえるように、大学病院や赤十字病院などの大病院をはじめ、循環器科や血液内科、消化器内科、眼科、脳外科など様々な診療科の診療所への紹介が可能な体制になっています。


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