開業を検討している医師に、ここだけは押さえて欲しいこと―開業までのロードマップ(6)

開業医T

ここまでは「開業するまで」についてお話ししてきました。本稿では、実際にどのくらいの期間で費用回収ができたのか、医療法人へ切り替えた理由、そして最後に開業をお考えの医師のみなさんに、わたしなりのアドバイスをお伝えしたいと思います。

【著者プロフィール】
専門:腎臓内科
開業時期:2000年前半
クリニック形態:開業11年目に個人診療所→医療法人化
クリニック収益:約1600万円/月
現在の月収:約120万円(手取り)
クリニックの家賃:約85万円
スタッフ:非常勤医1名、看護師3名、臨床工学士(血液透析)2名、事務1名、送迎スタッフ2名

融資、借り入れは10年で完済

 

『実録! 1億円の開業資金の集め方―開業までのロードマップ(3)』でも触れたように、初期費用は自己資金1000万円、親族からの借り入れ6000万円、日本政策金融公庫から3000万円とおよそ1億円が必要になりました(クリニックは賃貸です)。一般的な内科ならばここまで大きな額が必要になることは稀ですが、クリニックで人工透析を行うため、ここまで金額が膨らんでいったのです。
返済期間については、日本政策金融公庫からの融資は10年で返済が完了しました。日本政策金融公庫は低金利のため、無理のある返済ペースではありませんでした。親族からの借り入れが最も大きな比重を占めていましたが、日本政策金融公庫と同じペースで返済していました(金利はありませんでした)。

初年度の診療報酬がだいたい4000万円程度、5年目で8000万円程度、10年目からは1.5億円前後で安定しています。開業2~3年目で資金の返済にほとんど不安を感じなくなり、5年目前後で人員を増やして、診療内容の向上を試みてもよい状態となりました。現在は人工透析の患者さんだけで30人前後おり、経営的にはとても安定しています。外来患者も増加傾向が、病院のキャパシティ的に現在がマックスだと考えているので、これ以上規模を大きくしようとは考えていません。

個人事務所から、医療法人化へ

個人事務所から医療法人にしたのは、わたし自身の結婚が契機となりました。家族を養う立場になるので、社会的な信用の大きい法人成りをしたかったというのが理由の一つです。社会的信用は個人事務所よりも医療法人の理事長という立場の方が大きく、住宅を購入したり教育ローンを組んだり、将来的に病院を賃貸ではなく所有するときにも有利に働きます。
また、税制上の問題も医療法人化した理由でした。自分一人に収入を集中させるよりも、妻を医療法人の理事にして収入を分散することで税制面で有利になります。将来的に子どもが医者になってくれた場合も、相続が容易になります。
わたしは医療法人化したことでデメリットをあまり感じたことがありませんが、強いてあげるなら議決権が発生するということでしょうか。当院には理事長であるわたしを含めて、理事が5人存在します。病院運営が一人ではできなくなることは、デメリットといえばデメリットです。ただし、当院のスタッフ同士の仲は非常にいいため、このことをデメリットと感じたことはありませんね。

開業する医師のみなさんへ

診療科によって業務内容や必要な医療機器が異なるため、開業希望の医師にアドバイスをすることは難しいですが、「集客には力を入れる」ということはお伝えしたいです。何度か申し上げていますが、特に賃貸物件でのクリニック経営は固定費が大きいことが特徴です。家賃や人件費などで、毎月の固定費が飛ぶように出ていきます。しかし固定費を超えて売り上げを出せるようになったら、あとは利益率が上がっていくだけです。

開業する段階で、毎月どの程度の固定費が発生し、それをクリアするためにはどの程度の集客を見込めばいいのか、しっかり計算をするようにしましょう。わたしは独力でやりましたが、今の時代は集客方法も多様化していて、病院数も多いため、開業コンサルタントなどの専門家を入れたほうが失敗のない経営に近づけるかもしれません。開業コンサルタントの人と話したこともあるのですが、経営理念や診療方針の策定から開業地の選定、分析、不動産仲介業者の紹介、内装業者の紹介、採用、研修など非常に多岐にわたってサポートをしてくれます。開業を考えている人は、一度話を聞いてみるのもよいかと思います。


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