酒好き肝臓専門医が一押しする飲み方(後編)―医師による、医師のための健康ライフハックVol.2

肝臓専門医として『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社、2017年)を監修し、お酒の飲み方のスペシャリストとしても注目を集めている浅部伸一先生(アッヴィ合同会社)。2017年から外資系製薬会社の開発マネジメントを行うかたわら、地方での訪問診療も精力的に行っている異色かつバイタリティ溢れる医師です。後編では二拠点生活から見えてきた地方と都市の治療の違い、そして健康を維持しながらお酒と付き合うためのポイントを伺いました。(取材日:2018年11月19日)

専門的なケアからプライマリ・ケアに

—本業で製薬会社に勤務しているかたわら、在宅医療も始めたそうですが。

まったく趣味に近いんですが、最近お世話になっている診療所が山形県にあり、週末などの時間で在宅医療に従事しています。月1~2回、2~3日の滞在で、山形県内のとある地域に住む高齢者のお宅を車で回って診察していくのですが、消化器や肝臓だけでなく何でも診なければいけない。一人暮らしのお宅にお邪魔して診察をすることも多く、いろいろと考えさせられます。その地域は高齢化が進んでいて、国内でも先行ケースなので「都会もいずれはこうなっていくのかなあ」と、高齢社会の医療現場を感じながら患者さんと接しています。

—今まで勤務されていた都市の病院と、山形の田舎。全く異なる環境で医療の違いはありますか。

都市の方が厳しい要求をされる人が多いので、最期の看取りをどうするかなどで問題になりやすい傾向があります。かなり前ですが、虎の門病院に勤務していた頃は、末期ガンの厳しい状況でも「最後の最後まであらゆることをしてください」と患者さんのご家族から治療の要望があり、本人との関係も含めて対応に苦慮した経験もあります。

一方、山形は良くも悪くも、ご高齢の方の治療にこだわる人が少ないようです。「もういいよね」と穏やかに看取りを待つ患者さんも多く、田舎の方が延命を求めない傾向が強いのかもしれません。延命を希望しない患者さんは点滴なども少なく、あまり苦痛を感じずに綺麗な状態で亡くなっていくことも多いんです。最期は、穏やかに眠るように逝かれることも珍しくありません。

今までは大学病院勤めがほとんどだったので、この現場は真逆の環境。その点も面白いなと思って在宅医療を続けています。床ずれの有無や栄養状態など、自宅での介護の状況も見なければいけないので、まさにプライマリ・ケア、これまで病院でやってきた専門的なケアとは両極端なことへのチャレンジでもあります。診療は淡々とやりますが、患者さんに近い現場感はあります。本業の製薬会社では英語を使っていますが、山形弁の方が難しい(笑)。おじいちゃん、おばあちゃんが喋っていることを聞き取る方が大変で、看護師さんに助けてもらっています。

【浅部伸一先生からの「お酒の飲み方」ライフハック術】
健康を維持しながらお酒とつきあうために

―前編でご紹介があった自治医大のワイン会や留学先のカリフォルニアでたくさんのお酒をたしなんでいたようですが、浅部先生がお酒を飲まれる際に気をつけていたことを教えてください。

まず、二日酔いには極力ならないように心がけていました。二日酔いになるということは、明らかに飲み過ぎで適量ではありません。最近、注意しているのは、水を飲むこと。飲みの場だと、グラスが空いたからお代わりとか、つい惰性が働いてダラダラと飲み過ぎてしまいがちですが、習慣として時々ウーロン茶などに変えてしまうんです。そうすることで、お酒を飲んでない時間を一時的に作れますし、水分補給もできます。お酒は利尿作用があると同時に、アルコールを代謝するためにも水が必要になりますので、水分を摂ることで夜間の脱水状態を防ぐことができます。

また飲み始めから繊維質のものなど、お腹に溜まるものを食べるのもオススメです。枝豆も繊維が含まれています。あとは、ほどよく脂肪が入っているものやチーズといったたんぱく質を摂ると、アルコールの吸収をゆっくりする作用が働くので体への負担が減るでしょう。

—率直に、肝臓のスペシャリストの視点から見たとき、お酒は「毒」ですか。「薬」ですか。

その質問はよく聞かれるのですが、基本的には「毒」といってよいでしょう。アルコールを摂取することで、肝臓が異物に対する反応を起こすのは明らかです。でもお酒を飲むことで「楽しい」とか「美味しい」と感じることも大事だと思います。毒を一切絶ったらなかなか苦しいですよ、今の世の中は。

大事なのは程度の問題でしょう。「どういう風にお酒を飲むべきか」を考える必要があります。医療者としては、飲酒の危険性をわかってもらいたいので、その人にとっての適量を越えて飲むことはオススメしません。男性に多くみられますが、どうなってもいいと思って飲み過ぎる人も、いざ病気になったら泣きつく傾向がありますね(笑)。

—飲み過ぎてしまわないために、自分のお酒の「適量」をどうやって把握したらよいでしょうか。

実は、飲酒の「適量」について、厳密なことは未だわかっていないんです。我々は「何が体にいいか」を疫学で判断しますが、疫学は大勢の人を調査した統計的な解析結果ですから、その人個人の適量は確実にはわかりません。患者さんは自分のことを知りたいのに、医者は多くの人のデータに基づく目安しかアドバイスできないところに、これまでの医療のジレンマがあります。ただ、体質と体の大きさは関係あると考えています。特に体が小さい人や女性の方は、アルコールの抵抗力が弱いので要注意でしょう。

—ALT数値の見方を、肝臓専門医の視点で教えてください。

血液検査で肝臓の状態がわかるALTの正常値の上限は、通常は30~40程度とされていますが、専門医の立場から言うと、男性で30以下、女性で25以下程度が適切だと考えています。時々血液検査を受けたときに、肝臓の数値が高いようなら肝臓にダメージが加わっている証拠なので要注意。医療機関にもよりますが、50~60だと「数値高いですね」でそれ以上の指示が無い場合もあるかもしれませんが、最近の研究では40~50でも病気が進行することがある、とされています。厳密なことをいうと40でも高く、30でも「場合によっては注意した方がいい」と専門医は見ています。このALT数値と体調を定期的に確認しながら、ご自身の「適量」を定めつつ、健康を害さない飲酒を心がけることをオススメします。

—最後に、先生にとってお酒とは?

私もお酒は大好きなので、美味しく長く飲んでいきたいです。ただし、それなりの年になったら、美味しくないお酒・飲み方は避けましょう。自分の適量を把握しながら、なるべく肝臓に負担がかからないように飲むことをオススメします。酔いつぶれるためのお酒は、肝臓にも他の臓器にもよくありません。酔うためではなく、味わうために飲みたいですね。


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