一生のキャリアに気づける場所、垣根のない全科共用医局とERでの並行研修で「安全に」かつ「チャレンジ」できる環境を

研修病院ナビTOP > 話題の研修病院 > 一生のキャリアに気づける場所、垣根のない全科共用医局とERでの並行研修で「安全に」かつ「チャレンジ」できる環境を

一生のキャリアに気づける場所

垣根のない全科共用医局とERでの並行研修で「安全に」かつ「チャレンジ」できる環境を

取材日 : 2022年11月

箕面市立病院(大阪府、317床)は、初期研修では近年マッチングにおいて、定員の3-4倍の学生が第1希望で登録するほど、人気が高く、専門研修で同院を選ぶ方も少なくありません。年間約4,000件の救急搬送に対応しており、研修医は各科を回りながら並行して週1回はERの現場に立ちます。ハードな日々ですが成長を実感できるのは、全科共用の医局で気兼ねなく上級医に相談でき、ワークライフバランスも病院全体で担保されているからです。また、2027年度内の新築移転を目指し、診療科の拡充によって研修もさらに充実する見込みです。 同院の研修の特徴について聞きました。

【研修医1年目対談】「必ず誰かが見ていてくれる」という安心感は大きい

小原先生 私はERで通年研修できることから、この病院を選びました。通常の研修をしながら並行して1週間に1度ER研修があるので、習得したことを忘れずに蓄積できます。一般的な疾患(common disease)で受診される患者さんがほとんどのため、国家試験で勉強した内容が臨床に直結していると感じます。

小池先生 ERでの研修が魅力なのは同感です。ある程度研修医にファーストタッチをさせてもらえることも利点です。

小原先生 診断が既についてから紹介されてくるのではなく、どんな検査をするかを決め、問診も経験できることが重要ですね。

小池先生 そうです。経験が自信になるといえば、こんなことがありました。鼠径部の動脈から採血をする手技を習得する機会があり、最初は汗びっしょりで緊張していました。そういう場面でほったらかしにされるのではなく、きちっとどの場所を押さえてどうするかを指導医や上級医から見せてもらい、繰り返すことでできるようになり、自信がつきました。最初はうまくいかなくても、患者さんにどのように説明をするのかなど自分で対応できるようになることが大事です。
当院のコメディカルスタッフはベテランが多いので、研修医は自分で「やります」と能動的に機会を見つけていく必要があると思っています。

小原先生 働く環境としては、当直後や週末前に申し送りをしっかり行うことが病院全体に行き渡っていて、担当医が疲弊しない仕組みが確立されていると感じます。

小池先生 院内全体にチーム意識がありますよね。医師同士の声掛けが多く、研修医への声掛けも頻繁に行ってくれます。

小原先生 「必ず誰かが見ていてくれる」という安心感は大きいですね。大学時代の仲間と近況を報告し合うと、ほかの病院では当直がないところもあるそうです。でも「その方が楽でいい」とは思いません。いずれ一人で当直をやるようになると、困りますよね。早い段階から見ていてもらいながら経験しておく方がいいと思います。

――専門研修や、その後については、どう考えていますか。

小池先生 私は箕面市の出身で、医師人生の最後は地元で働きたいと思っています。この病院の先生方は、学会に参加、発表する等アカデミックな面も、ワークライフバランスも実現できていますので、将来も当院で働くことは有力な選択肢の一つです。

小原先生 当院の30代の女性ドクターを見ていると、子育て中は例えば外来と内視鏡だけを担当して、担当患者さんを持たないなどフレキシブルな働き方をされています。院内保育もあり、ライフイベントも変化が起こりやすい初期・専門研修とも当院で続けられるのは、安心ですね。

小池先生 そうそう、病院は移転新築されます。現状では、ちょっと動線に問題があったり、トイレが古かったりするので、それは改善されるでしょう。

小原先生 はい、加えて現在より駅が近くなるので患者さんにとって交通アクセスの利便性が高まりますよね。これから患者さんが増えて、研修医が経験できる症例も多くなると思います。

小原(おはら)先生

研修医1年目 ※取材当時
小原(おはら)先生

山下 裕代(やました ひろよ)先生 医師1年目

研修医1年目 ※取材当時
小池 明生(こいけ あきお)先生

研修医1年目対談の様子

【外科系/研修医・専攻医対談】自分が先輩方にされたように後輩に「恩返しできたら」

大久保先生 箕面市立病院との縁は、同じ大学の先輩の話を聞いて見学に来たことです。初期研修を受け、手厚く指導を受けたので「恩返しできたら」という思いで、そのまま専門研修も当院で続けながら後輩にも接しています。

植田先生 いつも頼りにしています。形成外科の基本的な処置の流れは大久保先生から習いました。なぜ形成外科を選んだのですか。

大久保先生 1年目の救急の当直で、形成外科3年目の先生と一緒になった時、縫合の技術の高さに憧れ、同じ道に進みたいと思いました。専門研修では複数の疾患がある高齢の患者さんを診ることもあります。自分は今、形成外科ですが、入院中に肺炎や肺塞栓などを起こした患者さんの場合は、ほかの診療科の先生に直接相談することもあります。こういった関係性ができていることは初期から続けて同じ病院で研修を受けるメリットですね。
植田先生はなぜこの病院を選んだのですか。

植田先生 別の病院の見学で出会った学生が「よかった」と言っていたのです。私も見学に来て、雰囲気がよく、先生やコメディカルスタッフに話しかけやすい穏やかな雰囲気に惹かれました。もとは小児科志望でしたが、外科系の手術を経験し、「一生やっていくならこっちだ」と思い直しています。また、指導医の先生はとても優しく知識が豊富で、自分の持っている技術を惜しみなく教えてくださいますね。

大久保先生 各科の先生方それぞれに得意分野があり、多様な診察や説明の方法を学びました。例えば、レントゲンを撮った後に骨折があるかどうかや、腫瘍が悪性か良性か等―。患者さんへの説明は、まず結論を言ってから詳細をお伝えすることも学びました。

――形成外科研修中の日々の業務はどんな感じですか。

大久保先生 1日のおおまかな流れは、朝病棟を回って、午前は外来、午後は手術をします。夕方からまた病室を回ります。一日中手術の日もありますが、手術は1週間に2.5日で、助手だけではなく良性腫瘍を中心に早くから執刀も担当させてもらえます。

植田先生 どの診療科に行くのかは、だいたい2年目の夏までに決めなければいけません。箕面市立病院では早めに適性を見極めるために、選択研修の時期を1年目に調整することも可能です。形成外科を志望する人は多かったので、私は形成外科の選択研修を1年目の冬に回りました。そこで学んだことが、2年目に外科研修で入った手術でも役立ちましたね。 初期研修で入職後に感じたギャップもほとんどありませんし、さまざまな点から当院を研修先に選んで本当に良かったと思っています。

大久保先生 そうですね。すべてにおいて手厚いです。学会に参加したり、休暇を取ったりするときは、ほかの先生のサポートがありますし、他科の先生をはじめ看護師、検査技師さんも、質問すると丁寧に答えてくれますよ。病院が一体で診療しているのです。

大久保 遼平(おおくぼりょうへい)先生

形成外科 後期研修医
医師4年目 ※取材当時
大久保 遼平(おおくぼりょうへい)先生

植田 彩音(うえだ あやね)先生

研修医2年目 ※取材当時
植田 彩音(うえだ あやね)先生

外科系後期研修医・研修医2年目対談

【内科/研修医・専攻医対談】「全科共用の医局」が将来の医師像を見つけることにつながった

西村先生 堺市出身なので、大阪府内で研修先を決めたいと思っていました。当院は指導が手厚く、初期から処置に参加できて、ERや当直もある。「安全に」かつ「チャレンジ」させてもらえる環境です。
現在、自分がいる消化器内科は研修医3人、指導医が約10人で、担当患者さんは7、8人です。「2人主治医体制」で、研修医に入院患者さんが割り振られる時に指導医もセットで決まります。
山森先生はどうですか。

山森先生 私は豊中市出身です。見学した時、研修医同士が高め合いながら仲良くやっていると感じ、お昼休みに先生方からいろいろな話を伺って当院に決めました。初期研修は期待した通りの内容です。指導がしっかりしており、勤務後は勉強できる時間が充分にあります。勤務が終わったら、家でその日のうちに分からないことを調べてインプットして、次の日の仕事に備えるという流れです。非侵襲検査のエコーを毎日させてもらえることも自信がついています。

西村先生 最初は体力がついていかなくて困ることもあったけれど、それはどの病院でもそうだと思います。当院は当直明けは休日扱いで、給与面など福利厚生面も充実していると思います。診療科の垣根が低い、専門性が高い、働きやすい、これらのバランスがとても良く、心から「お勧め」の病院と言えますね。

山森先生 診療科の垣根が低いことについて、この病院には研修医ルームがないと聞き、学生時代には「研修医ルームがあったほうが良いな」と思っていました。しかし、今はいろいろな診療科の先生とコミュニケーションが取れる環境が逆に良かったと思います。初期研修から専門研修に残る先生も多いですしね。

西村先生 それは、自分たちにとってもうれしいです。入職当初、私は小児科と迷っていましたが、自分に合っていると思ったのは消化器内科でした。
現在、専門研修中ですが、初期研修の先生方と一緒に教わることの方がまだ多いと思っています。でも、後輩が困っていることがあればアドバイスもできていますし、ゆくゆくは内科や内視鏡の専門医等の資格を取って、後輩を教えられる立場になれたらと思います。
医師としてどんな将来像を描いていますか。

山森先生 私はすでに糖尿病・内分泌代謝内科に進もうと決めています。でも血糖値ばかりを診るのではなく、腎機能や循環器などの合併症も診ることができる専門医になりたいと思っています。当院は診療科の垣根が低く、糖尿病もいろいろな視点から教わっていくうちに、そのような医師像が見えてきました。実際に、糖尿病専門医の先生方も循環器や腎臓など多様な知識を持って患者さんを診ておられます。そういった姿に影響を受けつつ、丁寧に指導を受けられる、その指導体制が目指す医師像を自分の中に培ってくれたのだと思います。

西村先生 この病院は、箕面の土地柄でしょうか、親切な職員が多いです。働きやすいし、気持ちに余裕があるように見えます。だからこそ質問にもじっくり答えてくださるのだと思います。

西村 智達 (にしむら ともみち)先生

消化器内科 後期研修医
医師3年目 ※取材当時
西村 智達(にしむら ともみち)先生

山森 大地 (やまもり だいち)先生

研修医2年目 ※取材当時
山森 大地(やまもり だいち)先生

内科後期研修医・研修医2年目対談

【責任者インタビュー】新築移転により、研修も一層充実させたい!

研修医同士の対談から、箕面市立病院では活発なコミュニケーションによって初期・専門研修で充実感が得られていることが分かります。このような環境をアップデートすべく心を砕いているのが病院長の岡義雄先生、卒後臨床研修室の室長・平尾隆文先生、副室長・平田歩先生です。
研修医にとって最適な研修病院であるための取り組みについてそれぞれの立場から語っていただきました。

――研修医の皆さんの話を聞き、ERでの鍛錬が成長を実感できる機会になっていると分かりました。

平尾先生 研修医が1番やりたいのは ERです。その熱意をチームでバックアップし、生き生きと不安なく頑張れるような環境づくりが大事だと思います。

岡病院長 ただ忙しかったというだけで終わってしまうのではなく、習得したことや経験したことの振り返りが必要ですので月2回程度、勉強会を開いています。

平田先生 勉強会では各科の専門医が講師を務める機会を設けました。これは研修医の声を聞いた結果で、当院の研修は研修医によってアップデートが繰り返されていますね。

――「全科共用の医局」は垣根のない指導の根本となり、研修医の医療人としてのありかたにまで影響を与えているようですね。

平尾先生 医局はワンフロアで上級医・研修医は区分けなく配席しています。コンサルテーションはしやすく、研修医からは「概ね満足」という声が多いですが、困った点があれば研修の改善につなげるようにしています。

岡病院長 上級医には「とにかく研修医と話をするように」と言っています。研修医が考えていることを知り、疲れてないかなどと声をかけて人となりを理解することが大事です。

平田先生 診療科によっては「怖い先生が多いのでは」というイメージがあるかもしれません。研修医から「質問しやすい」と思われるよう待っているのではなく、こちらから声をかけていくことが大事です。「メンタルがしんどい」となる前に、例えば後期研修医から(初期研修医の)情報を得たりするなど、心理的な部分のケアを大切にしています。

――このほか、貴院での研修の特徴はどんな点でしょうか。

岡病院長 大きく3つ挙げられますね。1つは、整形外科研修を必須としている点。高齢者の転倒骨折等は今後も多くなる一方なのでプライマリ・ケアの一環として学ぶ必要があります。2つ目は、最先端の医療を経験する機会も設けている点。手術支援ロボット「ダヴィンチ」を2015年に導入し、オペ見学もできます。3つ目は、当院は大阪府がん診療拠点病院ですが、緩和医療を含めてがん診療が充実している点です。もちろん、これは研修医が直接ではなく、上級医と一緒に受け持ちをすることで、その経験を後々、生かしてほしいと思っています。

――福利厚生の充実や働き方改革はどのような職場でも求められる反面、医師として鍛錬を積むことも必要です。このあたりのバランスはいかがでしょうか。

平尾先生 研修は自分の意志で頑張ってもらうことが大事だと思います。自分が手術をした患者さんがいて終業時間がくる場合、「じゃあ、どうする?」と尋ねます。すると強制しなくても自発的に行動し、責任感が培われるようになります。

平田先生 時間のマネジメントが大切です。研修医はお客さんではないので必ず自分で時間を把握して行動してほしいですね。信頼関係を構築するためにも大事だと思います。

岡病院長 残業しないで日中にどれだけ効率よく仕事ができるかが大事なので、Work hardと言っています。2年間の初期研修を何となく過ごしてしまった人と、しっかり過ごした人では大きな差が出ます。2年間で自分の中にどれだけの引き出しを作れるか――。たくさんの引き出しを持って専門医になっていってほしいと思います。

――貴院の未来と研修の充実についてはどうお考えですか。

岡病院長 病院の新築移転は2027年度末を目指しています。呼吸器内科などいくつかの診療科を増やす方針であり、診療科を拡充する構想があります。これにより研修も一層充実させるつもりです。また、新築移転により新たなスペースを設けることも可能ですが、「全科共用の医局」はそのままの予定です。当院ならではの良さは持ち続けていきたいですね。

岡 義雄(おか よしお)先生

病院長
岡 義雄(おか よしお)先生

平尾 隆文(ひらお たかふみ)先生

卒後臨床研修室長
平尾 隆文(ひらお たかふみ)先生

平田 歩(ひらた あゆむ)先生

卒後臨床研修室副室長
平田 歩(ひらた あゆむ)先生