「全科参加型聖マリア式ER」で成長加速 「若いうちに一度は経験すべき」と出身者が語る理由

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「全科参加型聖マリア式ER」で成長加速

「若いうちに一度は経験すべき」と出身者が語る理由

取材日 : 2017年9月27日
更新 : 2020年8月

周辺の大学病院を凌ぐ日本最大級の規模、1,097床、41科で、1次から3次救急の「24時間365日」を実践し、年間1万台近くの救急車に応じる聖マリア病院(福岡県久留米市)。ここで経験を積んだ医師の多くが「若いうちに一度は経験すべき」と語る理由は―?取材を通じて、症例数だけではない、同院の魅力が見えてきました。

研修医がいいとこ取り!?「全科参加型聖マリア式ER」

初期研修中でも、多い時には1日20台もの救急車に対応する同院の救急。実際に現場を体験した高田綾子先生はこう語ります。

「救急や当直では研修医が初期対応をするため、自分の無力さを日々痛感します。だからこそ勉強にも身が入りますし、経験し、勉強し、それを次の患者さんに生かすという成長のサイクルを何度も繰り返すことができます」

高田綾子先生

高田綾子先生

確実に自信がつけられると言われる同院の救急は、北米型ERならぬ「全科参加型聖マリア式ER」と呼ばれています。

特に複数の疾患を抱える高齢患者さんの場合、どの科が担当すべきか判断しにくいもの。これに対し、同院では搬送直後に研修医の目の前で瞬時に関係各科専門医が集まり、ベッドサイドでカンファレンスが始まります。よって、研修医は救急の最前線でCommon

さらに“聖マリア式ER”の場合、各科への橋渡しに掛かるタイムラグがほとんどなく、パラメディカルも積極的に救急からの要望に応じるため、夜でも昼と変わらない対応が可能。同院に総合診療科はないものの、この環境に2年もいれば、基本的な初期対応はもちろん、患者さんをどの科で診てもらうべきか判断できる“高い総合診療力”が自然と身に付いていきます。

「物凄いスピードで病状が変化していく急性期医療の最先端に立つと、研修医は最初、机上と現実のギャップを感じて棒立ちになってしまいます。

この誰もが直面する“机上と現場のギャップ”を、各領域の専門医と横断的に連携し、多様な要素を含む実症例の問題解決方法を効率よく学ぶことで、ストレスなく埋めていくことが可能となります」(初期臨床研修プログラム責任者の古賀仁士先生)

ウォークインを含めた救急患者数はなんと年間6万人、うち小児が3万人を占めることからも分かるように、この地域では貴重な小児・周産期救急の担い手でもある同院。世界最大の120床の新生児センター(うち30床はNICU)も充実しています。

“救急・小児・周産期”に強みを持つ同院は、専門医取得環境としても貴重な存在。「特に外科や小児は当院だけで専門医資格取得に必要な症例が集まります」と語るのは専攻医指導部長の靏知光先生。

脳血管内科なら脳卒中、循環器科なら急性心筋梗塞、整形外科なら外傷・骨折、その他消化器科、呼吸器科、精神科でも、救急患者数が多い故、多くの症例を経験し、急性疾患への対応力を磨けるようです。

古賀仁士先生

初期臨床研修プログラム責任者 古賀仁士先生

靏知光先生

専攻医指導部長 靏知光先生

有村亜希子先生

有村亜希子先生(外科)
同院での初期研修中、乳腺外科の患者が女性
医師をいかに頼りにしているかを実感。同科
に進むことを決めたそうです。

医師の向上心に応えられる環境を

現場が充実感を持って働けるよう、同院ではキャリアアップ制度にも磨きをかけています。

学会発表時の旅費支給はもちろん、希望すれば後期研修時に、VHJ機構に加盟する亀田総合病院や相澤病院などで研修ができる「武者修行研修」制度も創設。また、JICA協力病院であるため、途上国医療に携わることも可能です。

「個々のスタッフが努力し、資質を高めれば、組織全体が良くなります。医師の向上心に応じられる環境を作るのは院長としての使命です」(島弘志院長)

島弘志先生

院長兼臨床研修管理委員会委員長 島弘志先生

海外研修の様子

海外研修の様子

現場の声を聞き、進化し続ける研修体制

現場の主体性を尊重するのも同院の伝統。今回の取材時にも、救急患者を振り返る研修医主体のカンファランスが開かれていました。

「救急カンファでは、重症例だけでなく、一見軽症だけれども見逃してはならない患者さんについて、先輩医師がピックアップして実践的に教えてくれます。研修医の要望をくんでサポートしてくれる体制には、とても助かっています」(後藤諒介先生)

カンファランス以外にも、研修医の発案で当直スケジュールは研修医同士で決めているのだとか。こうした背景には、研修医からの意見を反映させて研修体制をつくることで“納得感”を高めたいという思いがあるようです。

2015年度から同院では、新専門医制度にも対応すべく、研修プログラムをバージョンアップ。研修期間・時期を自由に設定できるようになったことで、より研修医の主体性が活かされやすい環境が整備されました。

井上智博先生

後藤諒介先生(左)と、救急カンファを主催する井上智博先生(右/救急科)

永沼恵美先生

永沼恵美先生
将来は外科に進もうと考えているものの、初期研修1年目はあえて内科系を中心にローテートし、視野を広げたいと考えているそうです。

「24時間365日」を実践し続ける医師は“一味違う”

最後に、「同院で働く意義」を現場の医師に聞きました。

「アーリー・エクスポージャーという概念があるように、若くから責任を持たせてもらえる環境で経験を積めば、価値観が変わります。

患者さんは生身の人間で家族もいる。そんな等身大の患者さんを治療する怖さ、やりがいは本では分かりません。自分がどんな医師でありたいか、真剣に考えざるを得ない状況がここにはあります。現場を見、自分の人生は自分で決めたいという人に、是非来て欲しいですね」(脳神経外科・橋川拓郎先生)

外科の岩永彩子先生は、同院で11年間働き続けてきた理由を、次のように語ります。

「当院には、厳しい環境で24時間365日を実践してきた、第一線の医師がいます。彼らに“もしあなたが目の前の患者さんを拒んだら、もはや行き場はないと思って接しなさい”と教えられてきました。そんな一味違うロールモデルがいるからこそ、ここで頑張ろうと思えるんです」

この地域で頻発していた救急車のたらいまわしを改善しようと、同院が救急指定を受けたのは1964年。以来実に50年、「24時間365日」を掲げ、地域を守ってきた過程で育まれ、受けつがれてきたDNAがここにはありました。

橋川拓郎先生

橋川拓郎先生 (脳神経外科)

岩永彩子先生

岩永彩子先生 (外科)

アクセス

九州新幹線が開通し、聖マリア病院の最寄りである久留米駅-博多駅間はわずか17分。天神までは西鉄久留米駅から特急で約30分。