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日本の医療は平等か? “誰もが医療を受けられる”ために、格差社会に挑む!

取材日:2017年9月6日(エムスリーキャリア編集部)

医療福祉生活協同組合いばらき

 「高齢者人口3514万人で過去最多」「孤独死年間3万件に」「非正規雇用比率40%台に到達」。日本の社会情勢の変化を示すニュースが目立つようになって久しい現在。こうした社会の変化は、高齢者の孤独死や若者の金銭的問題による受診拒否といったかたちで、医療の現場にも確実に影響を及ぼし始めています。

そういった社会問題を解決するべく様々な取り組みを実施しているのが、医療福祉生活協同組合(医療福祉生協)です。今回は、医療福祉生協が運営する医療機関として、茨城県南部を中心に活動している“あおぞら診療所”を取材しました。

国の制度を活かし、平等な医療を提供

 東京のベッドタウンの一つであり、高齢化率が32%(2017年統計)を超える茨城県取手市において、すでに医療福祉生協の一員として地域を支えている、あおぞら診療所。同診療所の所長であり、取手市医師会で副会長を務める石井啓一先生も、経済的な理由から通院できず孤立してしまう患者さんに出会う場面が増えてきたと話します。そこで、あおぞら診療所では経済的に困窮した住民が無料・低額で診療が受けられるようにする国の制度を利用して診療を実施しています。

あおぞら診療所・院長 石井啓一先生
あおぞら診療所・所長 石井啓一先生

「無料・低額診療は国の制度・社会福祉法に基づいて行っており、収入が基準以下の患者さんに適用しています。この制度を利用できるお陰で、経済的な理由から通院をやめている患者さんを見つけた場合にも、安心して受診を促すことができます。これは済生会や他の医療機関でも行っている施策ですが、医療福祉生協がその中心的役割を果たしています」(石井先生)

個人で不可能なことは、組織の力で可能にする

 医療福祉生協の特徴の一つであるのが、地域に住んでいる組合員が3人以上集まって行う班活動です。班活動では専門職(医師・歯科医師・看護師など)と組合員が一緒になって病気の予防や健康づくりについて学ぶ活動を行っており、健康づくりを地域社会に広める活動として、世界保健機関(WHO)からも注目されています。
石井先生もこの班活動に積極的に参加。その経験から、健康促進以外にも組合員から経済的に苦しんでいる患者や見えないところで病んでいく患者がいないかをヒアリングし、早期発見に繋げることができる、と話します。

「あおぞら診療所では班活動のために診療所を開放しており、私も病気の予防・健康づくりについての講話や組合員の健康チェックを行っています。班活動は健康づくりを目的とした活動が多いですが、写真撮影やお茶会など、気軽に参加できるものもあります。私自身も趣味の写真を通して班活動に関わりながら、地域の中で孤立している患者さんがいないか情報を集めています。コミュニティ作りから地域住民の病気の予防や早期発見・治療へとつなげていけるので、班活動の意義と地域貢献度は高いと思います」(石井先生)

あおぞら診療所・外観
あおぞら診療所の外観

組織力を活かし、在宅医療に力を入れた取り組み

 こうした組織を通じて医療格差をなくそうという石井先生の動きは、医療福祉生協での活動だけにとどまりません。かつては副会長に就き、現在も理事を務める取手市医師会では、医師会管内の11の医療機関からなる在宅ネットワークを形成し、連携している病院や訪問看護ステーション、ケアマネジャーとの非常に良好な関係性を築くことができました。これにより、主治医が在宅の患者さんに対応できない時でも、このネットワークに参加している他の医師が対応できるようになったといいます。

 地域により円滑に在宅医療を届けるために、近年ではこんな仕組みも構築されているそうです。

「2011年の東日本大震災を機に、各災害拠点病院と各地域の医療機関・関連施設の情報交換・共有の必要性や重要性が認識されるようになりました。また、地域の特性上、医師不足や高齢化が進んだことで、住民への医療サービス低下が危惧されています。これらを踏まえて、県民にとって安心で、安全な地域医療・介護環境を提供できるよう、茨城県医師会はIT化を進めています。その代表例が、患者情報やその他の医療情報について情報交換・共有するシステム「いばらき安心ネット(iSN)」。このシステム及び在宅で運営する電子@連絡帳を使用して、登録に合意された患者さんのデータ共有はもとより、その日のバイタルサインまでチェックすることができるようになりました。

 まだ、全ての病院や訪問看護ステーションが利用しているわけではありませんが、徐々に広がりを見せてきており、在宅医療に関わる医師にとっては便利なツールとなっています」(石井先生)

 その他にも、副会長時代からのネットワークを活かし、行政や、民間に委託された地域包括ケアセンターと協力し合いながら、認知症サポーター医として認知症の初期集中支援事業にも積極的に携わるなど、一層活動の幅を拡げているそうです。

 格差社会が進む日本で、医療の不平等という社会問題をあらゆる角度から変えようとしている、あおぞら診療所。一朝一夕には解決できない課題も多いですが、個人では難しいことも組織の力であれば動かせる可能性を秘めています。誰もが平等に受けられる医療、その意義の深さに共感できる方は、あおぞら診療所の挑戦に加わってみてはいかがでしょうか。

あおぞら診療所問い合わせ