地方でも「つらいとき、すぐに」を叶える
ゆうメンタルクリニックの勤務医として約5年間働いた後、2018年5月にとみおか心療クリニック(群馬県甘楽郡甘楽町)を開業した二階堂恭太先生。50歳で勤務医生活にピリオドを打ち、開業に踏み切ったのは、これまで赴任したさまざまな精神科病院で直面してきた、「なかなか受診ができずに悪化してしまう患者さんが多い」という精神科医療の現状をなんとか打破したかったからだといいます。そのため、開業したクリニックでは「つらいとき、すぐに」かかれる、ゆうメンタルクリニックと共通する思いを掲げたそうです。
「開業にあたり、3つの柱を定めました。1つは、つらいときすぐにかかれること。2つめは薬以外の治療法も取り入れること。3つめは社会情勢や近隣に世界遺産・富岡製糸場があることを踏まえ、外国人にも最低限の対応ができることです。1つめと2つめはゆうメンタルクリニックと同じ思いを受け継ぎつつ、3つめで当院のオリジナリティを出しました。
また、この場所に開業した理由は、常勤先で受け持っていた患者さんたちが通いやすい場所でと考えたからです。都心部から遠いエリアであるため、最初は不安があったのが正直なところですが、蓋を開けてみたら子どもからお年寄りまでたくさんの方にお越しいただいています。つらいときすぐにかかれるクリニックは何も都会だけでなく、地方にも必要なのだと確信しましたね。患者さんの中には入院治療を必要とし、当院を介して病院に紹介することで重篤化を防げた方も多く、病院の前段階にあるクリニックの重要性を感じています。また入院に至る前にヨガやアロマテラピーなどの治療で断薬できたケースもあり、そういう意味でも我々の果たせる役割は大きいと思います」(二階堂恭太先生)
診療、運営の両面で自信がつく

今でこそ開業の重要性を実感している二階堂先生ですが、はじめから開業への強い決意があったわけではありません。医師20年目にしてゆうメンタルクリニックで働き始めたのは、「病院とは違う環境で働き、学びたい」という向学心からでした。スポット勤務の後、同院の効率性や働きやすさにも魅力を感じ、長期勤務に踏み切った二階堂先生。その中で、学んだことがたくさんあると振り返ります。
「診療面では、私の診療経験が浅かった軽度~中等度のうつ、発達障害、アルコール依存症など、病院ではあまり出会えなかった患者さんへの診断力が身につきました。また、心理カウンセリングといった薬物療法以外の治療を提案するときは、どこまで医師が対応し、どこから専門職に引き継げばいいのかという線引きの感覚がつかめたのもよかったです。そして、詳細が書かれたマニュアルやカルテ入力をサポートする秘書の動きなどから、クリニックを効率的に運営する方法も学べました。
とはいえ、最初は固定の患者さんがつかず苦労していたので、初診時にいただける患者さんからのアンケートが励みでした。よいところは続けて、悪いところは改善した結果、最終的には対応患者数が院内1位になったのが嬉しかったですね。その実績が出せたからこそ開業しても何とかなるかもしれないという自信が持てたように思います」(二階堂恭太先生)
そのほか、開業後も診療や事務手続きに関する細かな疑問点は法人の総務に質問できたりと、安心感やバックアップの面は引き続き途切れることのない連携体制が構築できているといいます。
理念を分かち合った仲間を応援する
勤務医が独立・開業すること。それは貴重な戦力を失い、クリニックのノウハウも流出してしまう、マイナスの要素に見えるかもしれません。しかし、同法人は開業を前向きに捉え、できる限りのことを応援しています。なぜなら、その背景には「つらいとき、すぐに」という理念を持つクリニックを全国に広げたい思いがあるからです。

「私たちは『つらいとき、すぐに』という理念を実現するため、都内だけでなく全国に拠点を広げたいと思っています。しかし、当法人だけでは限界がありますから、同じ志のもと開業を考えている医師たちと協力していきたい。そのためなら、私たちの知識や経験をどんどん伝えたいと考えています。
そもそも開業には『コントロール幻想』がつきまといます。これは自分で選んだ道なら、きっと大丈夫だろうという思い込みに陥ってしまうこと。したがって、自分ですべてを決めてしまう前に、ぜひ遠慮なく相談してもらいたいと思います。私の開業経験も踏まえて、開業場所や他院との差別化はどうするかという相談にものりますし、マニュアルの内容やホームページの作り方なども、どんどん参考にしてもらいたい。それぞれの場所で『つらいとき、すぐに』を実現するため、アップデートしてもらえたらと思っています」(理事長・安田雄一郎先生)
開業を考えている、若手からベテランまで
2014年からは皮膚科・美容皮膚科のスキンクリニックを立ち上げ、患者さんの外側からのアプローチも取り入れている同法人。内側と外側の両面で「つらいとき、すぐに」患者を受け入れる体制を整えてきました。これからも診療の質を維持しながら、拠点を増やしていくためには、この理念に共感し、共に実現を目指す仲間が必要です。
そんな仲間の一人である二階堂先生はゆうメンタルクリニックで働いたからこそ、自分に自信がつき、開業を決意できたと胸の内を明かしてくれました。そして「若手で経験を積みたい医師はもちろん、10年、20年以上の経験ある医師でも新たな発見があるのでは」と、自らの経験を振り返り強調します。常勤、非常勤、スポットとさまざまな勤務体系があり、常勤では院長職のポストがあるなど、働き方の選択肢も豊富な同法人。精神科・心療内科で開業を視野に入れている医師は、一度門戸を叩いてみてはいかがでしょうか。