限界に挑み、医療の未来を切り拓く。頂点を目指せ! 限界に挑み、医療の未来を切り拓く。頂点を目指せ!

INTERVIEW

インタビュー

理事長インタビュー

医魂営才で2040を生きる、医誠会式病院経営 医魂営才で2040を生きる、医誠会式病院経営

大阪地区における全国病院「改革実績」ランキング(※)で1位を獲得するなど、その先進的な経営スタイルに特徴を持つ医療法人医誠会(ホロニクスグループ)は、2023年10月1日、次世代型病院を目指す「医誠会国際総合病院」をオープンします。今回の移転に至った思いや経緯について、一代で同グループを築いた谷幸治理事長に聞きました。

※週刊ダイアモンド、2016年

コペルニクス的発想転換、時代の望む形に私が変わります。

──なぜ今回医誠会国際総合病院として移転をすることになったのでしょうか。

ホロニクスグループは医療を中核とする事業複合体、垂直統合型の新しい事業モデル「医療事業生態系ホロニクス(メディカルビジネス・エコシステム)」の完成を急いでいます。診療サポート機能・病院サポート機能を充実強化することで医療主体が輝き、医療主体が輝くことで診療サポート機能・病院サポート機能が生きてくるという関係性を構築し、医療技術商業化分野を育成強化することで健康意識の向上、健康長寿社会の実現を目指しています。グループの理念は「豊かな健康文化の創造と生命質の向上への限りなき挑戦」です。
答えは17年前に財政破綻した夕張市にあります。財政破綻後、171床の夕張市民病院が閉鎖に追い込まれました。誰もが医療崩壊が起こると予測しました。17年後の現在、死亡率は変わらず、救急出動件数は減少、緊急時は札幌市へ搬送(広域救急の実現)、在宅医療による自宅での看取りの普及等、社会効率の良い医療環境が出現しました。医療の敗北です。
2035年、85歳以上の老人が一千万人を超え、その内の半数が要介護となり、四割が認知症になると推測されています。団塊の世代の出生数は270万人弱でした。昨年の出生数は80万人を切っています。一体この国はどうなるのでしょうか。誰が介護を担うのでしょうか。誰がその費用を負担するのでしょうか。合理化・効率化、機械化・IT化を大胆に進めて、医療介護の生産性を向上させなければ、医療の動脈産業化を促進させなければ、財政破綻・医療崩壊は避けられない。医療人の意識変革と行動変容、体質転換が喫緊の課題です。
戦後78年が経過、発展途上段階に有効な供給者保護政策が、成熟社会となった現在も継続し不都合な現実の主因となっています。ゲシュタルト崩壊です。病院は機能不全、職員は適応不全に陥っています。供給者の弱者と受給者の弱者の混同が社会の混乱を招いています。受給者の弱者はセーフティネットで救われるべきですが、供給者の弱者を過剰に保護すると、業態が劣化して業界そのものが衰退してしまいます。ダイナミズムを失った社会は新陳代謝が進まず、社会そのものが衰退の一途を辿ることになります。
2040年には現在8000強ある病院が4000程度まで減少すると予測されています。病院は高密度短期型か低密度長期型か、時代に選択を迫られています。医誠会国際総合病院は時代の要請を受け止め、社会の中でその役割を担うべく、次世代型病院を目指して未来に挑戦しています。

幌馬車をいくら列ねても蒸気機関車にはならない。

──病院の上場というと、日本ではあまり馴染みがないですね。

病院の利益率が極端に悪化し薄利となった今、デッドファイナンスの限界が見えてきました。手段としての市場資金の調達(エクイティファイナンス)なくして、経営の安定性、事業の継続性、事業の成長性は担保できない。病院規模の拡大と共に、病院そのものを上場させるしか選択肢はありません。
欧米をはじめとした先進国では、持ち分のある医療法人の上場が認められています。むしろ、上場が認められていないことに私は違和感を覚えています。市場資金の調達=悪、儲け主義という考え方はもう古い。医療は農業とか工業と同じような社会的装置の一つです。今や、病院事業は莫大な資金を要する設備投資産業であり情報投資産業です。医療は労働集約型・知識集約型・設備投資型・情報投資型、四つの産業形態を持つ複雑系の世界です。
ざんぎり頭を叩いてみればIT開化の音がする。
明治維新を迎えた武士たちは「士魂商才」を謳い、武士の魂は捨てず、商才を発揮して新しい時代を生き抜きました。「医魂営才」、私は今自分自身に問いかけています。医師としての魂まで売ることは決してありません。しかし、商才を発揮しなければもはや生き残れない。医療はビジネスかと問われれば即座に「YES」とは言い難い部分があります。しかし、病院事業はビジネスかと問われれば即座に「YES」と答えることができます。

ダイバーシティ構想、その中核としての医療

──次世代型病院として、どのようなビジネスモデルをお考えですか。

医療複合施設「i-Mall」は新しい健康文化の発信基地です。今回のプロジェクトに込めた医誠会の思いを「医誠会ルネッサンス」という言葉で表現しています。「i-Mall」の「i」は医誠会の「i」、愛の「i」、事業コンセプトは「医療と劇場とAIと」です。価値観やライフスタイルの多様化に伴い、「i-Mall」は新しい価値の創造と新しい健康文化の発信基地としての社会的役割を担います。ホロニクスグループは健康経営優良法人ホワイト500の認定を受け、ESG経営、SDGsにも積極的に取り組んでいます。健康医療分野のみならず、医療技術商業化分野を育成強化することで健康意識の向上、健康長寿社会の実現を目指しています。
<新しい価値の創造>
⑴i-Mall×医療
 低侵襲・個別化医療による早期の社会復帰、先進・先制医療と国際医療ツーリズムへの挑戦
⑵i-Mall×アート
 アートストリート(i-Mall内に設置)、院内アート
⑶i-Mall×生物多様性
 都市緑化(扇町公園と野崎公園をつなぐ緑の回廊)、院内緑化、都市養蜂、(→NPO法人未来プロセスによるマレーシアでのオランウータン保護と植林活動)
⑷i-Mall×ダイバーシティ
 異業種交流・多文化交流カフェ、国際交流の促進
<医療コンテンツ>
地域医療・救急医療・災害医療はもとより、低侵襲医療を始め、先進医療・先制医療を行います。ロボット手術、ピンポイント放射線治療、超音波治療、内視鏡治療、カテーテル治療を始め、ゲノム医療、再生医療、認知症医療、医療美容、予防医療、そして国際医療ツーリズムにも取り組みます。IT革命と社会進化に伴う医療のあり方そのものに対する大胆な挑戦です。

プロセス・イノベーション(業務変革) & ソリューション・レボリューション(問題解決革命)

──なるほど、従来の病院経営にはない斬新な発想ですね。

人力による体位変換ゼロを目指した自動変換ベッドと自動変換マットレスの導入、インカムの導入、電子カルテ音声入力、看護師が行っている薬剤業務の薬剤師へのタスクシフティング等、相当な予算をかけて思い切ったタスクシフティング・タスクシェアリング、機械化・IT化を進めています。
「困ったときのホットライン」をバックオフィスに設置、解決精度と解決スピードの向上を目指し、諸問題の発生時点解決・専門職解決を図っています。また、モンスター患者のみならずトラブル・紛争に対応すべく弁護士・警察OBをバックオフィスに配置して事の解決に当たっています。保育園、病児・病後児保育園、バイリンガル保育園、24時間フィットネス等をi-Mall内に設置しています。働きやすく働きがいのある職場作りを目指して医療環境エンリッチメントを充実強化しています。

時代はサスティナビリティ、目指す四者満足

──構想の背景に、様々な立場の視点と配慮が伺えます。

人類の長い歴史的実験の結果、純化した社会主義や行き過ぎた資本主義は最良の社会システムではないということが分かって来ました。もはや、我々に残された社会システムは公益資本主義しかありません。
医療法人医誠会の行動基準は「患者中心主義(ペイシェントファースト)と四者満足の実現」です。四者満足とは患者満足・職員満足・病院満足・社会満足です。
高度に専門分化した医療環境下において、医師は優れた医療専門技術者として周囲からの尊敬と信頼を勝ち取る努力が必要となります。医療専門技術者として、標準技術の習得と専門技術の修練、そして先進技術への挑戦が期待されます。
医誠会では新たな取り組みとして経営専門医育成プログラムを開始しています。偏差値教育を受けて、狭く閉じられた世界で純粋培養されて育った医師は環境の変化に極めて疎い。経営は環境適応業です。スーパーゼネラリスト(iPS細胞型人間)の育成が欠かせない。
2025年に大阪・関西万博が開催されます。医療法人医誠会は万博の共創パートナーに認定されました。共創パートナーとして、ゲノム医療、再生医療、認知症医療、国際医療ツーリズム、救護班への協力などを考えています。屋上ヘリポートには空飛ぶ車の離着陸も可能です。
過去の延長線上に未来はない。現在、医誠会が進める病院改革の延長線上に未来はある。聖域なき病院改革を志向する医誠会と共に、高い志を持ち未来を共創する意欲のある医師の参画を強く期待しています。

診療科対談

診療科対談 診療科対談

谷幸治理事長が提唱する病院改革の中核を担う、次世代型病院である医誠会国際総合病院のオープンを目前に控える医療法人医誠会(ホロニクスグループ)。開院の核となるのは、医師たちの働きです。日頃からペイシェントファーストの精神のもと診療にあたり、心臓血管外科をけん引する3名の医師に、現場で働いていて感じることや新病院への思いについて語っていただきました。

執刀経験0から30へ⁉外科医人生の転機

  • 丹羽先生

    丹羽先生

    間もなく医誠会国際総合病院がオープンしますが、まず皆さんはどういう経緯で医誠会に入職されたのでしょうか。

  • 上田先生

    上田先生

    前勤務先での小開胸のトレーニングで山下先生(現部長、以下略)とご縁があり、お話をいただいてこちらに来ることになりました。

  • 西川先生

    西川先生

    私も医局人事の中で一緒に働かせていただく機会があった山下先生から、新規立ち上げということで声をかけていただきました。

  • 丹羽先生

    丹羽先生

    山下先生の存在は大きいですね。かく言う私も山下先生を慕ってここに来た一人で、前勤務先であまり症例に恵まれなかったところ、一緒にやろうと声をかけていただいたのがきっかけです。当時はどこまで経験を積めるか未知でしたが、ここにきて2年ほど経過して、思っていた以上に多彩な経験を積ませていただいている実感があります。

  • 上田先生

    上田先生

    私もそう思います。心臓血管外科医としてのキャリア形成を考えたときに、執刀医としての経験、外科治療としての治療経験をどれだけ早期に積むことができるかというのは課題ですよね。

  • 西川先生

    西川先生

    専門医取得には50例の手術件数と執刀数が必要ですが、普通の大学であってもなかなか多くの件数を経験することは難しいのが現状です。そんな中で、山下先生の指導のもと多くの経験を積んで、いち早く専門医を取得できる可能性を、この医誠会病院に見出してやってきたのが我々ということですね。実際に、大学時代は全くなかった執刀を、今では月2、3例、年間にすると30例ほど経験できているので、恵まれた環境で成長できていると感じます。

対患者、対医師双方にベストな診療方針を

  • 上田先生

    上田先生

    大学との違いという点で言うと、主治医制をとっていないと言いますか、“みんなで診る”形をとっていることが大きいのではないでしょうか。

  • 丹羽先生

    丹羽先生

    そうですね。主治医制のもとワントップで、という診方ももちろんあると思いますが、心臓血管外科は基本的に患者さんが重症なので、この体制が適切だと判断しています。どの医者にあたっても同じレベルの診療を受けられることや、一人の医者でなく複数名の医者からのフォローが受けられることは、患者さんにとって大きなメリットだと感じます。

  • 西川先生

    西川先生

    大学だと、どうしても上下関係に伴って業務上の役割が決まりがちですが、ここでは山下部長も雑務をしないわけでもなく、私が手術に執刀しないというわけでもありません。皆さんは「業務の均等化」が図れていることで感じる良い点はありますか。

  • 丹羽先生

    丹羽先生

    主治医制ゆえのずっとはりつめていないといけない、誰かに任せないといけない、という状況が生まれないので、学会や家庭の事情での休みが取りやすいことでしょうか。誰かの代わりを誰かがやる、を当たり前にできる環境ですね。

  • 上田先生

    上田先生

    当直も月単位ではなく、その都度各々の勤務状況やプライベートを考慮して決めることができるので、呼び出しや夜間の相談頻度はかなり軽減したと思います。

  • 丹羽先生

    丹羽先生

    医師の働き方改革が注目されている一方、大学だと週6日勤務、頻繁な当直やオンコールもまだまだ往々にしてある中で、ありがたいことですね。

  • 西川先生

    西川先生

    心臓血管外科に勤務しながら、日勤帯でほぼ超過勤務なく17時頃に帰宅できる病院というのもかなり珍しいですよね。

  • 丹羽先生

    丹羽先生

    私は月に2回趣味の乗馬を楽しめるほど、プライベートも充実しています。

  • 西川先生

    西川先生

    しっかり働いてしっかり休んで、というスタイルが確率できていますね。

  • 丹羽先生

    丹羽先生

    もちろん診療科のスタイルや患者さんの傾向に応じて適切なマネジメントの仕方は異なると思いますが、それぞれに合った体制を現場の声で構築できる柔軟さは医誠会ならではですし、それが結果として患者さんの満足度や医師の働き方改革に繋がっているのではないでしょうか。

働き方改革を促進するタスクシフト

  • 西川先生

    西川先生

    働き方改革という観点で、他に医誠会に来て変わったと感じることはありますか。

  • 上田先生

    上田先生

    度重なるカンファレンスがなくなったことでしょうか。大学時代は日中3、4回カンファレンスをすることもあって、準備も含めかなり大変でした。

  • 西川先生

    西川先生

    医局の机が横並びなので相談ごとはタイムリーにできますし、わざわざカンファレンスを開くというよりは常にカンファレンスをしているような感じですよね。それもやはりみんなで診ているという前提が大きいのかなと思います。

  • 丹羽先生

    丹羽先生

    確かに。大学のときは指導医の先生に相談したいことがあってもオペが終わってからにしよう、などと考えて結局夕方までかかってしまうこともありましたが、今はその場のたった一言で解決するなんてこともよくあります。

  • 西川先生

    西川先生

    うちの医局は複合型になっていて、心臓血管外科に限らず他科の先生も同じ部屋にいらっしゃるので、診療のこと、患者さんの紹介など、科を横断した相談をしやすい点もありがたいです。あとはクラークさんたちがやってくださることの範囲がかなり広いと感じますね。診療請求などはここに来てお任せできるようになったので、とても助かっています。

  • 上田先生

    上田先生

    周囲からのサポートで言うと、麻酔導入に関しても優秀な麻酔科の先生が揃っていて、とてもスピーディーだと感じます。おかげでスムーズに手術に入れています。

  • 西川先生

    西川先生

    オペ周りの環境整備については、清掃システムも緻密に仕組化されていることで、手術間のインターバルがかなり短縮できているという話を聞きました。

  • 丹羽先生

    丹羽先生

    それは知りませんでした。我々は1日に2例縦で入るということがあまりないので実感としてないのが残念ですが、日々快適に手術をできているのはそういった皆さんの努力があるからだということを肝に銘じてやっていきたいですね。

若手がより研鑽できる環境に

  • 上田先生

    上田先生

    様々な方のサポートもあり、日々診療に専念できる環境で多くの経験をさせていただいている中ですが、今回の新病院移転に際して期待していること、新たに実現したいことはありますか。

  • 丹羽先生

    丹羽先生

    前提として、新病院になっても今やっていることを継続してできること、が大事だとは考えています。ただ、新病院にはハイブリッド手術室があると聞いていますし、ロボット導入なども検討されているようなので、そういった点でとても楽しみにしています。まずは今と同様の開心術を同じくらいの件数できるという目処がたった上で、症例数を増やしたり、TAVIやMitraClipといった高度な治療を行ったりしていきたいです。

  • 西川先生

    西川先生

    私は、というよりこれは部長も含めた心外としての総意だと思いますが、ゆくゆくは専門医、専攻医の教育機関にしていきたいという思いがあります。そのために今、新制度における認定施設の申請をして、研修方法を考えているところで、新病院移転のタイミングでうまく軌道にのせていけたらと考えています。

  • 上田先生

    上田先生

    心外に限らず、病院全体で若手がより研鑽できる環境にしていこうという機運が高まっていますよね。

  • 丹羽先生

    丹羽先生

    新病院への応募を検討されている先生方は、それぞれ新しいことへの挑戦だったり現状の打破だったり、“何かを変えたい”というマインドを持った先生方だと思います。その熱い思いを持って、あとは自分を信じて頑張っていただけたら、それを実現していくための設備や環境は整っている病院になると思います。