常に変化する血液診療の進歩の中で、自分で考えて決断する力を養成

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常に変化する血液診療の進歩の中で、自分で考えて決断する力を養成する

診療と研究の双方に精通した若手血液内科医輩出の場
自治医科大学 血液学部門

 

  自治医科大学血液科
「後期研修プログラム」

今年度の医局説明会は終了しましたが、見学や個別説明は可能ですので、お気軽に御連絡ください。
お申し込みはこちら >>
https://www.jichi.ac.jp/usr/hema/SeniorResidentNoEvent.html

取材日 : 2023年6月

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悪性腫瘍から免疫異常まで―、扱う疾患が幅広い血液内科。いつ急変するかわからない重篤患者の全身管理や治療に加え、血液疾患診療は変化のスピードが速く、常に最新の治療法をキャッチアップし続ける必要があり、平行して研究活動にも取り組むため「休みが取りにくい過酷な診療科」「職人肌の人が目指す科」といったイメージを抱く人は、今も多いようです。


そんな中、自治医科大学附属病院の血液内科は、夜間および休日に当番制を導入。オンオフがはっきり分けられる勤務システムを構築し、院内カンファランスを教育の場として活用して各医師の経験値を高めるなど、さまざまな工夫を施しながら、血液学の将来を担う次世代エキスパートの養成に取り組んでいます。

初診から検査、診断、先端治療まですべての診療過程を実体験
カンファランスはみんなで学んで「考える」場


地域医療の中核を担う自治医科大学附属病院の血液科には、栃木県および近隣県から数多くの患者が集まってきます。そのため、血液科の専門研修では、一般的な症例から稀な症例まで短期間に数多くの経験を積むことができます。また、同プログラムには、栃木県立がんセンターや那須赤十字病院など関連施設への派遣が原則1年単位で組み込まれており、大学病院では経験できない高齢者の診療や終末期診療などの経験も可能です。



神田善伸 教授

神田善伸 教授

「都心の大学病院では、既に診断がついた患者さんの治療に当たることが多いですが、当院のように初診から検査、診断をつけるまでの一連の過程を実践で学びながら、造血幹細胞移植や免疫細胞療法などの先端治療まで継続して経験できるのは、地方の基幹病院だからこその魅力でしょう」(神田善伸教授)

専門研修プログラムは原則として指導医、専門研修医、初期研修医の3人で診療チームを構成。血液科病棟および無菌治療部病棟の両方を担当します。治療方針は週1回の全体カンファランスで相談しながら決めていくため、診療に不安を感じることなく、治療の決断の過程を学ぶことができます。

神田教授はこのカンファランスを「重要な教育の場」として位置づけています。


「重要な教育の場」週一回の全体カンファランス

「重要な教育の場」
週一回の全体カンファランス


「血液内科は4~5年前の教科書が役に立たないほど変化のスピードが速い診療科です。また、血液内科に携わって約30年になる私も、初めて出合うような症例がたくさんあります。一人の医師が人生の中で経験できる患者さんの数はそれほど多くはありません。だからこそ2セットの診療端末とスクリーンをフル活用して全員で情報を共有し、必要に応じて重要な論文等のデータをスクリーンに投影して一例一例について深く検討することによって疑似体験を高めていくことが大事なのです」

更に、ひとつひとつの治療選択の理由について尋ねられたら、しっかりと自分で回答できるような思考能力を身に付けることが重要だと言います。

「これは私自身が恩師から教わった考え方で、医師として大きな転機となりました。研修医の先生方も、いずれは自分で決断しなければならない時が必ずきます。カンファランスでは若い先生が話しやすい空気感を作り、自分で考える機会を与えるように心がけています」

神田善伸 教授

神田善伸 教授

「重要な教育の場」週一回の全体カンファランス

「重要な教育の場」
週一回の全体カンファランス

「いつ呼ばれるかわからない不安」を解消
子育て中もキャリアが途絶えない仕組みを確立


白血病をはじめとする造血器腫瘍は本人の生活習慣などに関係なく、不合理に突然訪れる疾患です。若年層の患者も多く、患者や家族に寄り添う医師側のメンタルをいかに守るかも大切な課題です。


同科では、医師のメンタルヘルス対策の一環として、ワークライフバランスの整備に力を入れています。病棟診療はチーム制とし、当直は月1~2回。夜間や休日は当番制を導入して医師がしっかり休みを取れる体制を整えました。


大学院入学を機に同科に入局し、現在3人の子どもを育てながら診療と研究を継続する山本千裕先生は、「育児と仕事を両立する上で一番困るのが、いつ呼ばれるか分からない状態がずっと続くことです。当番制であれば、オンオフがはっきり分けられるので、予め準備ができてありがたいです」と話します。


山本千裕 講師

山本千裕 講師

山本先生は同科の魅力について、いろいろなバックグラウンドの先生が無理なく共存できていることだと言います。

「育児中や体調不良など、いろいろな事情があっても、誰もが戦力になれる仕組みがここにはあります。もし、24時間365日の呼び出しに応じられないなら病棟を外れて、子どもが大きくなるまで外来の仕事をしなさいと言われていたら、今私はここにいないと思います。時短勤務や当番制によって育児や介護などの事情のある医師も持続的に活躍できる仕組みがあり、実際にキャリアが途切れなかったことが、今も仕事を続ける上で大きな力になっています」


Blood誌に掲載された費用対効果分析の研究

Blood誌に掲載された費用対効果分析の研究


臨床研究にも取り組み、医薬品の費用対効果分析に関する論文を完成させた山本先生。実は、子どもが小さいうちは大きなプロジェクトに参加するような研究は、自分には無理だと諦めていたそうです。論文に挑戦する気持ちになったのは、神田教授から「データとPCさえあれば、自宅で一人で完成できるテーマで論文を書いてみないか」と提案されたことがきっかけでした。

「時間や場所の制約があっても、アイデア次第で論文になり、成果を出すことができました。そういったことが実現できるのも、自治医大ならではの魅力だと思います」

山本千裕 講師

山本千裕 講師

Blood誌に掲載された費用対効果分析の研究

Blood誌に掲載された費用対効果分析の研究

専門研修修了後の進路の自由度の高さも魅力!
「研究が臨床に直結する」経験がやりがいに


もともと血液内科医を志望していたという海野健斗先生。志した理由や、初期研修および専門研修先に自治医大を選んだ理由について、次のように話します。

海野健斗 病院助教

海野健斗 病院助教


「診断から治療、フォローアップまで、一人の患者さんを継続して診られる血液内科に魅力を感じました。この領域は若い患者さんも多く、重篤な状態の方も多いのですが、治療によって元気になって、社会復帰されていく姿を見て、とてもやりがいのある科だと思いました。当院を選んだのは、血液内科が有名で、初期研修にも力を入れているからです。大学病院でありながら、医局員の出身大学はバラバラで、学閥がないことも魅力でした」

海野先生は2023年3月に大学院を卒業し、4月から臨床復帰したばかり。基礎研究に没頭した4年間の成果を臨床に還元し、少しでも医療に貢献したいとの思いで、日々診療に当たっています。

自治医科大学附属病院・血液内科は症例数が豊富な上に、患者の同意を得て、実際の患者の血液や組織を使用した基礎研究を行っていることも特徴です。

「患者さんの検体を使った基礎研究が可能なので、研究と臨床が直接結びつくことをより実感できます。臨床研究についても、神田教授はやりたいことがあれば何でも自由にやらせてくださいます。研究に興味・関心がある医師にとっては、臨床研究と基礎研究をバランスよくできる点も魅力だと思います」

また同科には、希望に応じて研修期間中から臨床研究に着手し、学会発表や論文発表に取り組める環境が用意されていることも大きな特徴でしょう。


左:大学院の卒業式にて<br>右:Blood誌に掲載された学位論文

左:大学院の卒業式にて
右:Blood誌に掲載された学位論文


大学院への進学は希望があればいつでも可能なことは勿論のこと、大学院には進学せず、診療と両立して臨床研究、基礎研究を行うなど、進路の自由度はかなり高いと言えるでしょう。加えて、学位取得を目指す医師を、教室員が手厚くサポートする体制も整っています。

海野先生と同時期に大学院を卒業したある医師は、今秋アメリカへの留学が決まっているそうです。このように将来の進路は自分の意思で決められる自由度の高さも、同科ならではです。

海野健斗 病院助教

海野健斗 病院助教

左:大学院の卒業式にて<br>右:Blood誌に掲載された学位論文

左:大学院の卒業式にて
右:Blood誌に掲載された学位論文

たとえ優秀でなくても、治療の最前線を走れる!
診療・研究の双方に精通した若手医師をチームで育成


血液内科医に求められる能力は、幅広い対応力です。専門研修2年目の横山大蔵先生は「全身を診る」ことに興味を持ち、どこに行っても通用する医師になりたいと考え、血液内科を志したと言います。


初期研修から自治医科大学附属病院に入った横山先生。当時は、先輩たちのスピード感に憧れつつ、あまりに高いレベルについていけないと感じる日々だったそうです。それでもカンファランスの場に出続けることで、大きな刺激を受けたと話します。


専攻医 横山大蔵先生

専攻医 横山大蔵先生

「カンファランスはとても臨床に近く、神田教授や指導医の先生方の経験による感覚、論文を用いた根拠のある治療法の選択など、なかなか治療効果が上がらない患者さんに、次の一手を打つための‟考え方“を学ぶことができます。それは教科書にも載っていませんし、いくら調べても分からないので、ここでの学びが自分の糧になっています。専門研修医となった今は、ただ答えをいただきに行くのではなく、考え方の基本をしっかり身に付けて、自分の診療に活かしていかなければいけないと思っています」

現在は栃木県がんセンターに派遣中で、自分の枠のある外来を初めて担当。初診から診断、適切な治療計画を自分で考えて実践していくことに、改めてやりがいを感じていると言います。

「以前より自分でできることが少しずつ増えている実感があります。決して優秀とは言えない自分でも、治療の最前線を走る先輩方に相談しながら、血液内科医として成長できる環境は、とても恵まれていると思います。また、医局での会話で、先輩方も自分と同じように悩み、同じような疑問を抱えていたと聞き、ほっとします。これほど優秀な先生たちも、最初から完成されていたわけではないと分かり、少しは救われました(笑)」と横山先生。

専攻医 横山大蔵先生

専攻医 横山大蔵先生

最後に、血液内科医に向いている人について、神田教授は次のように話します。

神田善伸 教授

神田善伸 教授


「血液疾患は研究成果が診断法や治療法の開発に結びつきやすく、研究が診療現場に役立つことを肌で実感できる分野です。例えば、慢性骨髄性白血病は、研究によって分子標的薬剤が開発され、不治の病から慢性外来疾患へと一転しました。そして、治療によって患者さんの病状にダイナミックな変化が現れるのが血液内科の魅力でもあります。一方で瞬間的な判断が求められることは少ないので、しっかりと調べて考えた上でアクションを起こす、そういったペースを好む人は向いているでしょう」

神田善伸 教授

神田善伸 教授

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血液内科は臨床と研究を両方こなす優秀な人が目指す診療科というイメージがあるかもしれません。自治医科大学附属病院・血液科は、診療・研究の双方に精通し、「患者を助けたい」という志を持った若手医師の育成を第一の使命に、若手が能力を伸ばせる環境づくりをチーム一丸となって取り組んでいます。


血液内科医として実力をつけたい方は勿論、専門科に悩んでいる方も、学閥のない風通しの良い環境で、成長を実感したい方は、是非問い合わせてみてはいかがでしょうか。

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