40年後も「医療が好き」と言える整形外科医に研修医の「学びたい」を「得意」に変える滋賀医科大学整形外科

研修病院ナビTOP > 各専門領域の今を追う > 40年後も「医療が好き」と言える整形外科医に研修医の「学びたい」を「得意」に変える滋賀医科大学整形外科

40年後も「医療が好き」と言える整形外科医に

研修医の「学びたい」を「得意」に変える滋賀医科大学 整形外科

取材日 : 2016年3月30日
更新 : 2020年7月

健康志向の高まりや高齢化の影響を受け、活躍の機会が増えている整形外科医。救急外傷やスポーツ障害、寝たきりにつながりかねない高齢者の転倒骨折など、さまざまな場面で求められるだけでなく、大別して4領域、細かく分ければ10領域以上サブスペシャリティがあり、多彩なキャリアパスが用意されているのが魅力です。そのような整形外科領域において、滋賀医科大学 整形外科では、研修医が将来にわたって楽しみながら医療に携われるよう、フェアな進路決定ができる体制づくりを長年続けてきました。

研修医の「好き」を応援し「得意」に変えるカルチャーと、それを叶える4領域バランス型の医局体制

生死にかかわる疾患だけでなく、QOLにかかわる疾患も扱うことの多い整形外科は、患者の要求水準も高くなりがち。そのような中、同科では過去20年で特に関節鏡手術、人工関節手術を中心に総手術件数を2倍近くにまで増加させたほか、腱板がなくても肩拳上が可能になるリバース人工関節置換術を国内で初めて実施するなど、診療体制を強化し、新しい技術にも意欲的に取り組むなど、患者の要求に応えようとしています。

その同科にて長年、研修に携わってきたのが今井晋二教授。診療だけでなく、研修医20人以上の博士号取得もサポートする中で大切にしてきたのは、研修医それぞれに好きな分野を自由に学んでもらうことだといいます。

「わたし自身、教授になった今も、専門である肩関節の最新手術を執刀しているときが楽しいんです。たとえばリバース人工関節置換術は、肩の機能をあきらめてしまっていた多くの患者さんから喜んでもらえ、日々やりがいを感じています。研修医にも、『好きだ』『楽しい』と思えることを軸に、進路に選んでほしいですね。

一般的に大学病院は症例の種類が偏りやすい面もあり、好きな領域を自由に選ぶというわけにもいきません。そこで当科では、関節・脊椎・手外科腫瘍・肩スポーツの4つの主要サブ領域に、バランスよく指導層を配置しています」

今井教授は10年以上前からこうしたバランス型の医局体制を目指し、同時に、医局メンバーの「好き」を「得意」に促すための取り組みを大切にしてきたそうです。

「各自が抱える問題を共有できるカルチャーを、10年以上かけてつくりあげてきました。弱みをさらけ出すのは勇気のいることですが、たとえばカンファレンスで一言『困っています』と教えてくれれば、みんなで一緒にその問題を背負って解決にあたれます。研修医には、周囲の協力を得ながらどんどん成長してほしいですね。

今井晋二教授

ほどよい規模の医局は、チャンスの宝庫

同科のもう一つの特徴は、大き過ぎず小さ過ぎず“ほどよい”規模感。これにより、研修医には多くのチャンスが巡ってくるといいます。

助教の竹村宜記先生は、自身の専門である手・足の外科領域について次のように話します。

「全国には、わたしと同じ専門領域の医師が100人近く在籍している医局もありますが、当科は5人ほどです。だからといって、決して症例が少ないわけではありません。事実、後期研修1年目から執刀を経験できますし、スピーディに実力をつけたい方にはうってつけの環境といえます」

一般的に大学病院は症例の種類が偏りやすい面もあり、好きな領域を自由に選ぶというわけにもいきません。そこで当科では、関節・脊椎・手外科腫瘍・肩スポーツの4つの主要サブ領域に、バランスよく指導層を配置しています」

加えて研修責任者の三村朋大先生は、将来を見据えてのメリットもあると強調します。

「当科はベテラン世代と若手・中堅世代のバランスが良い。これは、若手・中堅にも活躍のチャンスが多いということだけでなく、10年後にサブスペシャリティ領域を選ぶときにも重要です。たとえば『上級医が多すぎて高度症例がまわってこない』といったことなく、自由に症例を選べるでしょう」

チーフ陣

医局を支えている18年目前後のチーフ陣(左から奥村法昭先生、西澤和也先生、竹村宜記先生)

今だからこそ学べることを学ぶ

三村先生には、日頃から力を入れて指導していることがあるといいます。それは、医師としての心構えを身に付けてもらう事と、ベストな選択肢を常に追求する事。患者にとって医療はブラックボックスです。そこには医師としての絶対的な良心と献身がなければならないという事です。時間を守る、ルールは守る、他人(患者)の尊重、自分の都合を優先しない・・・、医療はそういう常識的な事の積み重ねです。

「手術のスキルは、経験を重ねれば身に付きます。しかし医師としての心構えや態度は、歳を重ねるほど直しがたいものです。主治医・担当医としての自覚を持ち、常に責任感を持って患者さんと接する力を身に付けてもらう事を念頭に指導しています」

三村朋大先生

研修責任者の三村朋大先生

教授を筆頭とした熱心な指導医陣

後期研修1年目の青木崇紘先生は、同科の指導熱心な雰囲気に惹かれたといいます。

「日々学ぶことが多く、わからないことだらけですが、後期研修の若い先生やベテランの先生まで質問すれば丁寧に教えてくださり、非常に勉強しやすい環境です。手術でもどこに着目して取り組めばいいのか教えていただき、ご指導いただけるので、整形外科医として研鑽するにはとても恵まれた環境であると感じています。」

また、他院で初期研修を行っていた山田智輝先生も、非常にフランクな指導医の先生方に助けられているそうです。

「指導医の先生には何でも聞きやすく、優しく教えて頂いています。市中病院で初期研修を行っていたため症例は外傷中心であり、大学病院で行われているような手術はあまり入ったことはなかったですが、基本的なことからご指導頂け、日々成長を感じられます。整形外科1年目として不安な気持ちでいっぱいでしたが、滋賀医科大学の整形外科はその一歩を踏み出す最初の病院としてベストだと思います。」

今回の取材で印象的だったのが、「わたしが准教授になった2004年から、大学スタッフは誰ひとり辞めていないんですよ」と話す、今井教授の誇らしげな表情でした。2004年といえば新臨床研修制度が始まり、大学医局にとって厳しい時代が始まった年。逆境の中でも医局を発展させられたのは、「問題を共有できるカルチャー」が着実に育ってきた証左ともいえそうです。

夕方のカンファレンスには教授から研修医まで勢ぞろい

後期研修医1年目 青木崇紘先生

後期研修医1年目 青木崇紘先生

後期研修医1年目 山田智輝先生

後期研修医1年目 山田智輝先生

1日の流れ(手術日の例)

8:30~ 手術/病棟業務
13:00~ 手術/病棟業務
17:00~ 術後カンファレンス
8:30~ 手術/病棟業務
13:00~ 手術/病棟業務
17:00~ 術後カンファレンス

手術日以外(月・水・金)は、上記のうち8時30分~17時が1日の平均的な流れとなります。