密着取材!研修病院見学ツアー
「湖上と現場で考える『滋賀県地域医療フォーラム2015』」、2日目は滋賀県内の研修病院をめぐるバスツアーが開催されました。滋賀県の魅力が凝縮された同ツアーに記者が同行。その様子をお届けします。
個性豊かな見学ルート
記者が参加したのは大学病院や市中病院など、特徴の異なる5つの研修病院がバランスよく組み合わされたBコース。関西はもちろん、関東や北陸など、さまざまな大学から11人が参加していました。
なお、同ツアーは他にも、琵琶湖を一周して県内の医療圏をまわるルートなど、医学生の志向に応じたコースが計3コース用意されていました。
「各科の最先端に触れられる」滋賀医科大学医学部附属病院
最初に訪れたのは、滋賀県唯一の大学病院である滋賀医科大学医学部附属病院(612床)。同院では、研修医専用医局で研修医と医学生の座談会が行われました。大学・市中病院双方の長所や短所、マッチングでの実体験など、研修医から生の声を聞くことができました。
医師臨床教育センター長の西田保裕先生は、「各科の最先端に触れられる大学病院は魅力的」「基本領域はもちろん、多様なサブスペシャリティの専門医が揃っている大学病院であれば、広い視点で今後のキャリアプランを練ることができる」と解説しました。
大津市民病院で北米型ERの現場の雰囲気を実感
次に訪れたのは大津市民病院(506床)。北米型ERとICUを展開する同院では、救急専門の医師を中心に内科系、外科系の医師が救急患者の状態を診て、重症度や緊急度、専門性を決定し、治療に当たります。1次から超重症まで、受け入れ患者は多岐にわたるそうです。
同院の研修医からは、「大学か市中かという違い以上に、救急搬送患者の重症度合いは、研修病院を選ぶ大きなポイントだと思う。自分に合った救急のスタイルをぜひ考えてみて欲しい」とアドバイスがありました。
「患者を治すだけでなく、プラスアルファを提供したい」草津総合病院
3番目に訪れたのは、草津総合病院(719床)。公的病院がない草津市で、救急、介護を含む高齢者医療、災害医療など公益性の高い医療だけでなく、全国でも数少ない肥満症外科治療の先進医療認可施設でもあるなど、特徴的な取り組みも行っています。
同院の医療にかける思いについて、副院長の卜部諭先生は「目の前の患者を治療するのは当たり前。医療機関として地域にプラスアルファの価値をどう提供できるかが大切」と語りました。
「バランスのとれた医師は、総合的医療体制で育つ」公立甲賀病院
次に訪れたのは、70年以上の歴史を持つ、地域に根付いた基幹病院である公立甲賀病院(413床)。2013年の新築移転を機にICU病棟を新設、手術室・救急医療室を一新し救急・急性期医療を拡充。さらに緩和ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟を新設するなど、総合的医療を提供できる体制を整備しています。
同院の院長である清水和也先生は、「(急性期や回復期など)バランスのとれた医療を展開しているからこそ、様々なことをバランスよく学ぶことができる。地方ならではの良さを体験できる環境が整っている」と指摘。
現場の研修医も「新築の整備された医療環境で、たくさんの手技がまわってくる。即戦力になりたい方にはおすすめ」と魅力を語りました。
手術室を改装してつくった圧巻のスキルスラボ 東近江総合医療センター
最後に訪問したのは、東近江総合医療センター(320床)。2014年度から基幹型研修病院として研修医募集を開始した同院では、これまで大学病院の協力型研修病院として培ってきたノウハウを活かし、研修医の受け入れ体制を整えています。
同院で医学生を惹きつけたのが、実際の手術室を改装してつくったというスキルスラボ。超音波診断・内視鏡操作・IVR手技・心音呼吸音聴診など多彩なシミュレーターを完備しています。同院副院長の来見良誠先生は、「医療者が満足できないと良い医療は提供できない」と、研修環境を充実させた背景を説明。このほか医局には、研修医が当直時に使用できるシャワー、ベッド、机を備えた個室が17室配備されているなど、ハード面での充実ぶりに、驚きの声があがりました。
病院見学ツアーを終えて
1日で5つの研修病院をまわった今回の見学ツアー。移動中のバス内では参加者間で、各大学の学生生活や、今後の研修病院選びについて活発に情報交換する様子が印象的でした。ツアー終了後、参加者からは「次は別のルートをまわってみたい」「気になった病院に改めて見学に行きたい」などの声があがり、滋賀県での研修に対する注目の高さがうかがえました。
2日間にわたって行われた「湖上と現場で考える『滋賀県地域医療フォーラム2015』」。今回、記者が痛感したのは、同じ県内でも研修病院の雰囲気や特徴は実に多様だということ。「滋賀県の地域医療に貢献したい」「優秀な研修医を育成したい」といったコンセプトの大枠は各院に共通しているものの、そのアプローチの幅広さ、奥深さは、実際に現場を見てはじめて腹落ちする部分も大きいものと実感しました。