真の変革力を!新潟県「イノベーター育成臨床研修コース」とは

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イノベーター育成臨床研修コースとは

「イノベーター育成臨床研修コース」は、新潟県内の臨床研修病院で初期研修を行いながら、2年間をかけてリーダーシップやマネジメントスキルなどを取得する県独自のコースです。医療でいい仕事をするために欠かせない「変革力」を培うために必要な4つの力(思考力・実践力・創造力・人脈力)を身につけます。

講義は月2回(90分×2コマ)で、休日や時間外に自己研鑽として実施。クリティカルに考えるロジカルシンキング、人を動かすリーダーシップや交渉学、最新技術を操るイノベーティブ思考など、MBA/MPHの領域から特に重要な科目を学びます。そして、座学で学ぶだけでなく、実践と振り返りのサイクルを高速回転させることで、成長を加速させます。

講師は、MBA取得医師や起業経験のある経営・変革のプロフェッショナルが担当。国内外でチャレンジし続けるイノベーターがメンターとなり、受講生の成長をサポートします。また、全国各地から同じ志を持って集まる仲間同士の「横のつながり」から生まれるかけがえのない人脈は、受講生にとって大きな資産となりえます。

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医師に必須の‟変革力“を培う、新潟県独自の研修コース
「イノベーター育成臨床研修コース」第1期生修了式レポート

2024年3月9日、新潟県が臨床研修医を対象に行う独自の研修コース「イノベーター育成臨床研修コース(以下、イノベ枠)」の第1期生最終発表会と修了式を実施しました。

イノベ枠は県が医師確保のために実施する施策の一つで、初期研修を行いながら自己研鑽によりリーダーシップやマネジメントなどのスキルを体系的に習得することを目的としています。

当日の前半は12人の受講生が2チームに分かれて、最終プログラムであるプロジェクトワーク(新潟の医療における課題発見と改善策提示)の取り組みの成果を発表しました。

チームすばる
発表後、オンライン参加する研修先の院長先生等からでフィードバック

チームすばるの発表テーマは「医師の働き方改革」

チームすばるの発表テーマは「医師の働き方改革」。2024年に新制度が施行されるなか医療従事者は不足しており、病院での生産性向上が必須であることを課題として挙げました。業務効率化のポイントとして提案したのが「詳細な現状把握」です。スタッフの役割分担を実施、患者導線の明確化を行いました。その結果、診察1回あたり20秒の時間短縮となり、外来業務の7%を効率化することに成功しました。

会場やオンラインで参加した医師たちは「業務可視化の重要性に気付けた」「チームで改革する取り組みに感動した」と講評。その一方で「測定者の確保が難しい」「外部組織に業務を依頼する場合はコストがかかる」と課題が浮かびました。

チームCrux
研修医目線での改善提案を提示し、「変革する」ために必要なことを議論。

チームCruxの発表テーマは「医師採用教育維持」

チームCruxの発表テーマは「医師採用教育維持」。県内研修医の人数は増加傾向である一方、専攻医の数は期待通りには増えておらず、県内研修医を3年目以降も定着させる必要があることを課題として挙げました。解決のカギとして提案したのが「研修医のモチベーション向上」です。重要な要因は、医学的興味が満たされること、メンターに出会えること、プライベート時間の確保、結婚・出産・子育てへの理解など。そのためには、各病院の取り組みだけでなく、病院間の連携強化や県全体での取り組みが必須と主張しました。

講評では「若い世代の本音を知ることができた」「ハーズバーグの二要因理論による分析が興味深い」のほか、「ヒアリングのサンプル数が少ないのでぜひ継続的に調査してほしい」との声も上がりました。

修了式
修了生12名一人一人に修了証を授与

全員に修了証を授与、優秀者2名を表彰

後半は修了式を開催し、受講生たちが修了証を授与しました。その後、講師などの投票によって選出された優秀賞を発表。チームすばるの山本泰雅さんと磯邉綾菜さんが表彰されました。最後はプロジェクトワークの壁打ちを担当したコーチやボードメンバーが講評を行い、受講生一人ひとりが感想を発表。懇親会で親睦を深めた後、初開催のイノベ枠は大きな成果と手応えを感じながらの閉幕となりました。

松本晴樹氏
厚生労働省医系技官(前 新潟県福祉保健部長)松本晴樹氏
2006年千葉大医学部卒、2018年ハーバード公衆衛生大学院修士

講師・ボードメンバー・新潟県のイノベ枠にかける思い

イノベ枠の発起人である前福祉保健部長の松本晴樹氏は、立ち上げにかけた並々ならぬ思いについてこう語ります。
「新潟は慢性的な医師不足であることから若い人を呼ぶには魅力が必要で、そのためには臨床プラスαの学びが必要だと考えていました。そこでMBA取得医師や海外留学経験豊富な医師に声をかけて賛同・協力をいただき、全国でも類を見ない『医師に必要な変革力を養う』コースが誕生しました。イノベ枠が飛躍的に成長できる唯一無二の環境であることは、受講生たちの成長からも証明されたと思います」

加勢博康氏
経営コンサルタント 加勢博康氏
新潟県出身、米系戦略ファームなど複数の大手コンサルティングファームを経験

プロジェクトワークでは一流の講師陣が壁打ち相手となってサポートを行いました。講師の一人であるコンサルタントの加勢博康氏は、イノベ枠は非常に意義のある取り組みだと語ります。
「受講生たちは2年間を通じて、論理的思考力と病院で改革を起こす実行力を磨いてきました。座学と実践を循環することで、大きく成長したと感じています。コース修了後、活動の舞台が県外になるメンバーが多数ですが、各自がそれぞれ学びを得て、ぜひいつか新潟に戻って還元してもらえたらうれしいですね」


中村洋心氏
新潟県福祉保健部長 中村洋心氏
2011年東北大医学部卒、2020年オックスフォードMSc、2021年ケンブリッジMBA

イノベ枠を運営する福祉保健部長の中村洋心氏は、1期生が修了し「大きな手応えがあった」と振り返ります。
「受講生たちは病院や一流の医師たちの協力を得ながら、プロジェクトワークにて成果を残してくれました。受講前はモノの捉え方が漠然としていましたが、細かく分析・具体化して問題を整理できるようになりました。イノベ枠は新潟を魅力に感じる要因の一つになるのでは。今後も継続するにあたり、後々は世界各国で活躍するような人材を輩出していくコースになればと考えています」

修了生の声

山本泰雅先生
自分が大きく変化し、伸び代にも気づけました
魚沼基幹病院/山本泰雅

医療政策に興味があり、臨床以外の「考えるスキル」を学べることでイノベ枠に惹かれました。様々な学びを得たなかで、特に交渉学は納得できる合意にたどり着くために役立つと感じています。2年間の受講を通じて自分が大きく変化し、同時に伸び代にも気づきました。 得たスキルは、日々働くなかでの困りごと解決に役立てられると思います。また、全国各地に同期の仲間や講師がいるつながりができました。この縁を大切にしながら今後も励んでいきたいです。

勝俣揚先生
知識ゼロの状態から深い学びを得られました
新潟医療センター/勝俣揚

私は臨床研修期間中に何か新しいチャレンジをしてみたいと考えていました。イノベ枠に惹かれた理由は「事前知識不要」状態から無料で参加できること。実際に参加し、座学の知識を学ぶほか、毎週チームで講師と壁打ちすることで、マインド面も鍛えられました。 臨床とコース受講の両立は体力的に辛かったですが、やり抜くことができて達成感でいっぱいです。今後は、学んだロジカルシンキングの思考法を活かして、現場の課題解決に活かしていきたいと考えています。

島田剛先生
臨床の現場にて「変革力」が役立ちました
済生会新潟病院/島田剛

イノベ枠に参加して自身の大きな変化がありました。一つ目は「考える力が高まったこと」。思考法を学ぶことで、日々の課題を見つける方法やどんなプロセスで捉えていくかなど、論理的な考え方ができるようになりました。 二つ目は「改革のやりがいを感じられるようになったこと」。研修先の済生会新潟病院にて、救急車8000台以上を受け入れるプロジェクトに参加し、講義で習った知識や考え方を活かせました。まさに“変革力”が役立ったと感じています。

宮城禎弥先生
共に頑張る仲間がいたからやり遂げられました
立川綜合病院/宮城禎弥

私はプロジェクトワークでチームリーダーを務めました。週に一度壁打ちを行うなかで自分だけの力の限界を感じ、メンバーと力を合わせる大切さが身に沁みました。リーダーシップや発言の仕方など、実践で学ぶことは多かったです。 イノベ枠の参加は私にとって冒険で一人では漂流して沈没していたと思いますが、共に頑張る仲間がいたからこそ修了までたどり着けました。感謝しています。今後は、新潟の病院の経営改革に貢献し、周囲を引っ張る存在となっていきたいです。

瀬川靖久先生
現場で活かせる汎用性の高いスキルが身につきました
新潟大学医歯学総合病院/瀬川靖久

臨床以外にも進路の幅を広げたいと考えていたことからイノベ枠を受講しました。プロジェクトワークでは新規性のある価値を生み出す大変さを感じながら、試行錯誤したのが良い経験です。学びを通じて、汎用性の高い論理的思考力や人を説得する力、コミュニケーション能力が身についたと思います。 今後は、県央基幹病院にて総合診療科医として働きます。比較的新しい専門診療科のため、学んだことを活かして地域にニーズを発信していきたいです。

星野有輝先生
ロジカルシンキングは一生もののスキルです
佐渡総合病院/星野有輝

研修先の院長先生の紹介でイノベ枠を知りました。医学の知識だけではなくビジネススキルを身につけられるのがおもしろそうと興味が湧いたのが参加の理由です。多岐に渡る学びがありましたが、なかでも役立っているのがロジカルシンキング。 実践的な学びであり、医療の現場では救急外来時のプレゼンテーションや看護師への説明など、論理的に考えて伝えるスキルを日々活用できています。この先の長い医療者人生のなかで、学んだことを活かしていきたいです。

木村真依先生
講師との距離が近いから相談しやすいです
魚沼基幹病院/木村真依

「医師は多忙で疲れている」「常に忙しい」という課題を日々感じており、解決のヒントがイノベ枠に詰まっていると期待して受講しました。座学や実践を通して、問題がどこにあるのか分析し、施策を立案する流れや考え方が理解できました。 また、想像以上に先生方との距離が近く、1対1でキャリアの相談をさせていただきました。受講生や先生方とグランピングの小旅行をしたのは良い思い出です。今後は学んだことを活かして新潟の医療に貢献していきたいです。

Chen Xingjia先生
世界の舞台で活躍するために必要な経験ができました
新潟医療センター/Chen Xingjia

以前から日本の医療の非効率性を感じており、構造的要因があると感じていました。受講することで現状を分析する力が身につき、それらの課題を捉えられるようになったと思います。また、ロールモデルとなる先生との出会いもあり、 1対1でMBA受験のアドバイスをしていただけたのがありがたく貴重な機会でした。今後私は、海外を舞台に活動する予定です。イノベ枠にて日本の高齢化が進む地・新潟で得た知見や経験を活かしていきたいです。

伯田智貴先生
2年間の受講で大きな成長を実感しています
済生会新潟病院/伯田智貴

課題発見力や課題解決力のスキルを高めたいと考えているなかでイノベ枠と出会いました。ロジカルシンキングの思考法を身につけ、座学や実践をくり返して2年間が経過したいま、自身の大きな成長を実感しています。 研修を行いながらプロジェクトワークを進めるのは大変でしたがやり抜くことができました。今後、私は産婦人科医として活躍していきたいと考えています。医師数が少ないという問題に向き合い、学んだことを活かして解決できるように取り組んでいきたいです。

北出成先生
「問題」を意識する習慣が身につきました
上越総合病院/北出成

友人の誘いでイノベ枠を知りました。医療業界は閉鎖的なイメージがあったので、受講することで視野を広げられるかもしれないと期待して受講しました。学生時代の学びと180度違うと感じたのは、与えられたテスト問題を解くのではなく 「自分で問題を見つけること」。さらにロジカルな考え方を身につけたことで、臨床の場でも問題発見を意識するようになりました。優秀な同期メンバーたちとの出会いもあり、かけがえのない貴重な2年間を過ごせました。