医師の身一つで、どこまで患者に向き合えるか
~日米で専門医資格を持つ聖路加国際病院アレルギー・膠原病科 岡田正人部長に聞く~
国民の約2-3人に1人が何らかのアレルギー疾患に罹患しているとされ、先進国の中でもアレルギー大国として知られる日本。老若男女問わず多くの患者が、根治の難しいアレルギー疾患と付き合いながら、生活を送っています。
これまで、アレルギー疾患の治療は、症状の現れる部位によって、耳鼻科、皮膚科、呼吸器科など、さまざま診療科が分担して行ってきました。しかし昨今、アメリカと同じように日本でも臓器横断的な診療を行うアレルギー科に注目が集まっているそうです。日米でアレルギーやリウマチに関する専門医資格を取得した、聖路加国際病院アレルギー・膠原病科の岡田正人部長に、その背景や、アレルギー科医の意義や治療の面白さについて伺いました。
「医師の身一つで、どこまで患者をフォローできるか」
―臓器別診療科ではなく、アレルギー科医がアレルギー疾患を診ることの意義はどんなところにあるのでしょうか。
アレルギー科の仕事の3分の1は減感作療法による治療ですが、残りは患者さんの診断です。疾患に関連しているアレルギーを特定して、それに対する対策を導き出す。これが喘息やアトピーだと、アレルギーだけが原因ではありませんから、呼吸器科や皮膚科にも治療をお願いすることになります。
-アレルギー科医にはどんな姿勢が求められますか。
『身一つでどこまで細かくフォローできるか』ではないでしょうか。患者さんごとに病態やライフスタイルが違うので、教科書通りに対応したり、最新技術にばかり頼ったりするのではなく、常に自分の知る限りの治療選択肢の中から、ベストチョイスを選んでいくことが求められます。
札幌や砂川、函館などの研修病院と比較検討されることも多い同院ですが、見学してみて、「地域における存在感を実感した」「さまざまなCommon Diseaseにふれられそう」と、同院ならではの魅力に惹かれる医学生は多いそうです。北海道出身の佐々木明洋先生(初期2年目)は、入職の決め手を次のように語ります。
たとえ生死に関わる病態でなくても、疾患が患者さんのQOLに与える影響は少なくありません。医学的根拠に基づいて説明し、生活習慣の改善と併せて薬を減らし、副作用を少なくしていくことが大事になります。それを患者さんに理解してもらうために、時間を掛けて説明する場合もあります。地道な仕事にはなりますが、医師によって対応の差が出やすい分、自分の影響力の大きさが実感できる。難しい面もありますが、やりがいだとも言えます。
―アレルギー科で優秀な医師になるには、どんな訓練が必要だと思われますか。
新しい治療法や薬の情報は随時アップデートされていますから、それを積極的に学んでいく必要があります。海外の方が進んでいることも多いので、海外の主要ジャーナルを読むのはもちろん、海外の学会にも勉強に行くなど、貪欲に学ぶ意欲が不可欠です。
海外の論文を読めばおよそ1年後、学会に行けばおよそ2年後の医療が分かります。1年後、2年後が分かれば、患者さんに提案できる選択肢が増える。わたしの科では、誰かが学会に行ったら、見聞きしたセッションの内容を科のメンバーに即座にメールでシェアしてもらっています。とにかく海外からもできる限り知識を吸収してほしいですね。
―医学生・研修医へのメッセージはありますか。
キャリア選択のルールをひとつご紹介します。それは、1.得意なことの中から、2.好きなことを見つけて、その中からさらに3.人の役に立つことを選ぶ、という3つのステップで考えることです。
たとえ『好き』だとしても、それが『不得意』だと成果は出せませんし、『得意』で『好き』だからといって、それが『人の役に立たな』ければ、誰にも認められませんから。3つのステップに合致していれば、あとはその道を信じて努力するだけです。自分の信じる道を邁進してください。