【開催レポート】計参加者1000人突破!ベテラン指導医の真髄学ぶ 第11回「大阪どまんなか」

研修病院ナビTOP > キャリアと臨床推論 > 【開催レポート】計参加者1000人突破!ベテラン指導医の真髄学ぶ 第11回「大阪どまんなか」

【開催レポート】計参加者1000人突破!ベテラン指導医の真髄学ぶ 第11回「大阪どまんなか」

有名指導医による講義やワークショップを通じて、実臨床・今後のキャリアに活かせる知見を得られる総合診療勉強会「大阪どまんなか」が2017年10月28日に開催されました。2014年の初開催以来、1125人もの医学生や研修医が参加し、所属を超えて交流を深めてきたこのイベントは、現場のトップランナーから臨床推論やフィジカルアセスメントのポイントを教われるのが特徴。11回目となる今回も全国から多くの医学生・医師が参加し、4人のベテラン医師のもとで、感染症治療のポイントや聴診のコツ、臨床推論など、横断的なテーマを学びました。

鑑別難しい感染症、どう絞る?

今回トップバッターを務めたのは、筑波大学医学医療系・水戸協同病院感染症科の矢野晴美先生。国際医療協力への関心から米国で感染症を学び、「日本の感染症科をつくる会」(現「IDATEN」:日本感染症教育研究会)の立ち上げにも携わるなど精力的に活動してきた矢野先生は、「ワクワクする臨床推論と微生物」と題し、感染症治療のポイントを語りました。

講義では模擬患者への医療面接が行われ、参加者はその様子を見ながら、「感染症だとすれば、どの微生物がどの臓器に影響を及ぼしているか」「どのような検査・抗菌薬が必要そうか」などとグループでディスカッション。上級医に患者の病態についてプレゼンテーションすることを目標に、情報を整理しました。鑑別診断の難しさを体感する参加者に対して矢野先生は「暫定診断として本命(Most likely)、対抗馬(Possible)、大穴(Must be ruled out)の3つを持っておく」など、現場のノウハウを紹介しながら講義を進めました。

矢野晴美先生の講義

ベテラン医師が実践する聴診の極意とは

次に登壇したのは、洛和会音羽病院京都医学教育センター長の酒見英太先生。若手医師を対象に京都GIMカンファレンスという症例検討会を開催している酒見先生は、「聴診の威力+α」というテーマで講演しました。

聴覚の活用も然りということで、酒見先生は、視覚に頼りすぎるあまり、肺の聴診をせずに胸部X線やCT検査をしたり、心臓の聴診をせずに心臓超音波検査を行ったりしてしまうなど、診療現場において「画像検査の氾濫」が起こっていると指摘。
「人体が発している様々な音に意識を向けて、聴く努力をしてほしい」と話し、「患者の声の性状の変化や、気道の雑音に気づいたらカルテに記載し、患者の病態についても考察している」と、自身の取り組みを紹介した上で、ふだんあまり使われていない身体各所の聴診法を解説されました。講義後半では、会場のリクエストに応じて聴診の実演も行われ、聴診器を当てる場所や聞き分けのポイントなど、実践的なアドバイスを熱心にメモに取る参加者の様子が見られました。

酒見先生の講義

文献ソムリエが語る「バイタルサイン」

「バイタルサインは、どの病院、どの科目に行っても必要な知識であり、失敗すると重大な事象を引き起こす」と清田先生。一方で日本ではバイタルサインの中でも特に、呼吸が軽視されている傾向にあると指摘し、具体的な注意ポイントを解説。「特に重篤な患者さんについては血圧や脈拍、体温だけでなく、1分掛けて呼吸の数やパターンをよく確かめてほしい」と強調しました。

“文献ソムリエ”とも言われるほど数多くの文献に通じている清田先生はこのほか、19世紀以降に世界各国で集積されたエビデンスを紹介。医学の歴史を紐解きながら、バイタルサイン測定時の注意点などについて語りました。

清田雅智先生の講義

専門医が教える「危険な患者さんの見つけ方」

「呼吸器疾患の病歴と身体所見」というテーマで最後に登壇したのは、沖縄県立中部病院呼吸器内科の喜舎場朝雄先生。呼吸器感染症や閉塞性肺疾患、間質性肺炎といった呼吸器内科の代表的な疾患を中心に、医療面接や経過観察においてどのように危険な患者を見分けるべきかポイントを紹介しました。

離島で診療経験を積んだという喜舎場先生は、当時高齢者疾患への対応や、公衆衛生的な分野へのアプローチを学んだことでスクリーニング能力が向上したと解説。科目横断的な臨床能力を磨くことで「医師としての強い足腰が身につく」と、臓器別専門医の視点から、総合診療能力の重要性を強調しました。講演後は清田先生も交えた臨床推論の実演も行い、病歴や主訴、検査所見、病状の経過にどう注目すべきか、要点を解説。「ここまで来るのに10数年かかる」と清田先生が語るほどハイレベルな着眼点や発想に、熱心に耳を傾ける参加者の姿が目立ちました。

喜舎場朝雄先生の講義

次がいよいよ最終回!1000人以上が学んだ大阪どまんなか

これまで、1125人もの参加者を巻き込んできた大阪どまんなかですが、実は次が最終回。豪華な指導医陣の下で臨床推論をしたり、医師としてのキャリアについて考えたりできるボリューミーな内容を企画しており、副代表の山本晴香さん(滋賀医科大学医学部6年生)も「国試対策をしているだけでは学べないことを数多く学べる場にしたい」と意気込みを語ります。最終回の詳細は以下の通り。これだけの人数の有名指導医からレクチャーを受けられる貴重な機会、興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。

大阪どまんなか写真

全体写真 全体写真

第12回大阪どまんなかは、2018年1月20日(土)開催予定です!

講師:
・志水太郎先生(獨協医科大学総合診療科)
・和足孝之先生(島根大学卒後臨床研修センター)
・平島修先生(徳洲会奄美ブロック総合診療研修センター)
・北和也先生(やわらぎクリニック)
・佐田隆一先生(亀田総合病院総合内科)
・片岡裕貴先生(兵庫県立尼崎総合医療センター)
・松本謙太郎先生(国立病院機構大阪医療センター)
・忽那賢志先生(国立国際医療研究センター)
・矢吹拓先生(国立病院機構 栃木医療センター)
※ 詳細は、ホームページなどをご確認ください。
大阪どまんなかFacebookページ
大阪大学・未来医療研究人材養成拠点形成事業