【開催レポート】北海道から沖縄まで120人の医学生・研修医が一堂に!第9回「大阪どまんなか」

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【開催レポート】北海道から沖縄まで120人の医学生・研修医が一堂に!第9回「大阪どまんなか」

「大学とはひと味違った講義が聴ける」、「実践的なワークショップで学びが深まる」と評判の総合診療勉強会「大阪どまんなか」が、2017年1月14日(土)、大阪梅田ブリーゼプラザ小ホールで開催されました。北は北海道、南は沖縄から約120名の医学生・研修医が集まり、第一線で活躍する先輩医師の講義に耳を傾け、ワークショップに取り組みました。

多くの学びと出会いを持ち帰ってもらえたら

 今回で9回目の同イベントは、参加受付開始からわずか半日で約70人もの申し込みがあり、早い段階からキャンセル待ちに。

 さらに、前回開催時のアンケート結果を活かし、参加者同士がより活発に交流できるよう、所属や学年をバラバラにした座席指定制という初の試みも行われました。

 その参加意義について、代表の清田敦子さん(大阪大学医学部5年生)は、「同じ志を持つ仲間が集い、学びあえるのが『大阪どまんなか』。講師陣のお話はもちろん、ワークショップなどを通じて、いろんな考え方に触れていただけたら」、副代表の山本晴香さん(滋賀医科大学医学部5年生)は、「総合診療といっても、先生によって診る視点はさまざま。会を通じてその視点を知り、新しいことに興味を持っていただける場になればうれしい」と語っています。

代表の清田敦子さん、副代表の山本晴香さん

代表の清田敦子さん、副代表の山本晴香さん

総合診療医としての第一歩は「相談せず、まず考えること」

1人目の講師は、ER型救急の先駆者、研修医のバイブル「研修医当直御法度」の執筆者としても知られる福井大学医学部 地域医療推進講座教授・寺澤秀一先生。「日本の救急医療、地域医療はなぜ苦戦しているのか?」と題し、その背景、そして総合診療医、家庭医、ER型救急医、救命型救急医がなぜ必要なのか、ご自身の経歴を交えて講演されました。

「わたしの医師人生を振り返ると、その時々の求めに応じて、できることをしてきただけ。何も自分で決めていません。その結果が今です。よく、『ER型救急医、総合診療医になるためにはどうすれば良いか』と質問されますが、わたしは必ず、相談するのを止めなさいと答えています。これからの時代に必要になるのは、『救急力、総合力を備えた各科専門医』『横断的に診療できる医師』。まずは自分に必要なものを考え、それを満たすカリキュラムを自分自身で組み立てること―それができれば、自ずと道は拓けると思います」

寺澤秀一先生

巧みな話術で会場を盛り上げてくださった寺澤秀一先生。「患者さんとコミュニケーションをとるにも、“ユーモア力”は大切」と話されていました。

早い段階から医療政策を意識すべき

次に講演されたのは、飯塚病院総合診療科の井村洋先生。「みんなが待ってるジェネラリスト」という題目で、現在進行中の医療政策、総合診療医に、特に強く求められるコミュニケーションスキルを中心に解説しました。

井村先生は、「総合診療医を目指す場合、今後ますます地域包括ケアシステム、地域医療構想がキャリアパスに大きな影響を与える」と指摘。「認知症を発症した場合、これまでは大病院のみで完結していたものを、地域包括ケアではかかりつけ医が中心となって周囲の関連施設と連携をとり、地域完結型を目指す時代が既に始まっている」と、具体的実例を用いてわかりやすく説明してくれました。参加者からは、「恥ずかしながら医療政策について現時点であまりキャッチアップできていなかったけれども、これを機にしっかり勉強していきたい」と前向きな声が挙がりました。

井村洋先生

地域医療構想について、大阪府、福岡県を例にあげて説明された井村洋先生。「学生時代から医療経済を意識することも大切」と呼びかけていました。

スマホアプリで、心雑音をマスター

登壇早々、「わたしのような音痴でも、心雑音を聴き取れます」と会場を沸かせたのは、洛和会丸太町病院 救急・総合診療科副部長の上田剛士先生。収縮期雑音、拡張期雑音を聴き分けるために、スマートフォンアプリを用いて心雑音のモノマネをするワークショップを行いました。その成果を参加者の前で披露し、見事、上田先生のお墨付きをいただいた信州大学医学部4年生の田川哲也さんは「心雑音に苦手意識があったけれど、グループメンバーと一緒に口真似をして、楽しく覚えることができてよかったです」と笑顔を見せました。

後半は、さまざまな歩行障害の実例について動画を用いて解説。上田先生は「心雑音も、歩行障害も、自分で真似することが疾患を見抜く近道。今回のように、身近にあるさまざまなツールを使って、楽しく学んでみてください」と参加者に呼びかけました。

上田剛士先生

上田剛士先生が行ったのは、実臨床に役立つワークショップ。「覚えにくいことは、五感を使って覚えようとすれば忘れにくくなります」とアドバイス。

パターン化できるものは、しっかり押さえる

最後に登壇したのは、NHK『総合診療医 ドクターG』でもおなじみの沖縄県立中部病院 総合内科・リウマチ膠原病科の金城光代先生。「皮診と関節炎の見かた」という題目で、グループごとに症例や病歴から疾患を診断するワークショップを実施。老若男女問わず、日常的に起こりうる症例で実践的に総合診療を学びました。

金城先生は、皮膚診断は「病変の主座がどこにあるか、解剖まで意識して診ること」、関節炎は「見て、触って、動かしてもらい、関節の可動領域までしっかりみること」が重要と解説。「皮膚診断も関節炎も、まずは所見を言葉で表現して情報整理しましょう。また、病歴と併せてパターン化できるものがあれば、それをしっかり押さえること。そのためにも、日常的に所見の表現を練習することが大切です」という言葉に、参加者たちも強く頷いていたのが印象的でした。

金城光代先生

診断までのプロセスも一緒にプレゼンテーションするのが金城光代先生のワークショップ。大勢の前で発表する練習にもなりました。

次回開催は2017年6月24日(土)

約10時間にわたり、最先端の総合診療を学んだ研修医・医学生たち。「講義内容はもちろん、プレゼンテーションの素晴らしさにも感激した」、「今日の先生方のように、ユーモアを大切に患者さんと接する医師を目指したい」など、目を輝かせながら話してくれました。

次回開催は2017年6月24日(土)。講師陣は、神戸市立医療センター中央市民病院 産婦人科 池田裕実枝先生、神戸大学医学部附属病院 感染症内科 岩田健太郎先生、加古川中央市民病院 総合内科 金沢健司先生、関西医科大学総合医療センター 呼吸器膠原病内科 西澤徹先生を予定しています。ひと味違った学びを体験したり、同じ志を持つ仲間とつながりを拡げたい方は、ぜひ参加してみてください。会の終わりには、参加前よりアップデートされた自分にも出会えるはずです。

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