いつまでに自身の専門を決めるべき?
新医師臨床研修制度(以後、「新制度」)以前、医師は自身の専門を医学部卒業前に決めていました。しかし新制度以降専門決定時期が遅くなり、初期研修2年目の後半になっても進路に迷う研修医が増えてきたという声も耳にします。エムスリーキャリアでは、「どの診療科に進むかのある程度の方向性を初期研修開始前に決めておくべき(以後、「決めておくべき」)か」についてアンケートを実施しました(実施日2013年11月25日~12月1日、m3.com医師会員1,135名が回答)。結果、「決めておくべき」と思う医師は53.7%、思わない医師は43.7%でした。
自由回答欄に書かれたコメントに目を向けると「決めておくべきだと思う」という回答者からは
- 病院実習中にだいたい決めることができる。
- 2年間の実習の後、研修で同じ事をまた2年繰り返すのは時間の無駄。
- 将来何をやりたいかにより研修する内容も変わる。
- 内科系と外科系では研修内容も異なる。
- 研修プログラムの作成に影響する。
- 態度、意欲に差が出る。
等、初期研修の本来の目的や位置づけ、およびそれを全うしようとする指導者側の意見が出たのに対し、「決めておくべきだとは思わない」という回答者からは
- 各診療科がどのような仕事をしているのかは学生時代にはわからない。
- 現実を知らないまま決めるものではないし適性があるかもわからない。
- 高い志や先入観がない方がいろいろ吸収できる。
- 経験後の決心の方が明確で強靱。
- 決めた科以外の研修がおろそかになりがち。
等、専門は実態を知ってから決めるべきであり、学生時代にそれはわからないという実体験に基づく意見が出ました。
初期研修開始前に決めておくべきか否かについては賛否両論ありましたが、将来専門としたい科を中心に研修科目を選択できる初期研修2年目が始まる前には、最終的に選択する専門の候補を絞り込み、実際に経験し、決定できる状態にしておく必要がありそうです。
なお、「回答者自身がいつ、どの診療科に進むかのある程度の方向性を決めたか」に関しては、新制度以前か以降かで差が見られ、新制度以前の医師の84.3%が初期研修開始前にある程度の方向性を決めていたのに対し、新制度以降の医師においては当該比率が55.9%まで下がっていました。
【参考資料】 「回答者自身が初期研修開始前にどの診療科に進むかのある程度の方向性を決めていたか否か」とのクロス集計結果
回答者自身が初期研修開始前にどの診療科に進むかのある程度の方向性を決めていていた医師ほど、「決めておくべき」と思っており、回答者自身がある程度の方向性を決めていなかった医師ほど「決めておくべきとは思わない」傾向にある。
【参考資料】 回答者の年齢とのクロス集計結果
45歳まで年齢が上がるにつれ「決めておくべき」と思う医師が増えていくのに対し、45歳以上になると年齢が上がるにつれ「決めておくべきとは思わない」医師の割合が増えていく傾向にある。