東京都の公衆衛生医師~その魅力を現場から~
公衆衛生をダイナミックに経験するなら、東京都がおすすめです。
大都会もあれば、昔ながらの下町や山間部、島もある。
都の保健所だけでなく、特別区(23区)や保健所設置市といった基礎的自治体の保健所も経験できる。
あるいは、都庁での本庁業務もある。
研修・サポート体制も整った東京都で、様々な健康施策の企画立案や地域に根差した事業に、一緒に取り組んでみませんか。
活躍するフィールド
公衆衛生医師のキャリアパス
- 主査・課長代理級
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専門職として、保健医療・福祉分野の幅広い専門知識・技術をもとに、医学的・公衆衛生学的判断を行います。
- センター長・課長級
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事業の企画、立案、実施、進行管理等、管理職としてマネジメント業務を行います。
- 所長・部長級
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組織の責任者として、中長期的、実質的見地から、実効性のある施策を展開して行きます。
- 技監・理事
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大局的な視点を持ち、保健衛生行政に関する重要な施策の推進・判断を行います。
役職別インタビュー
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課長代理級のお仕事
東京都福祉保健局
保健政策部
疾病対策課課長代理
土方奈々医師 -
採用されると課長代理級からスタートします。
医師として専門的な知識や経験を生かし、他職種と連携を図りながら仕事をしています。様々な分野(感染症対策、健康危機管理、母子保健等)がありますので、飽きることなく、新たな知識を吸収し成長できる環境です。保健所や本庁には、先輩の公衆衛生医師が配置されており、困ったときにすぐ相談できるのも有難いです。夜間や休日は基本的にお休みでオンオフもはっきりしています。常勤で働きつつ家族との時間も大切にできます。
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課長級のお仕事
東京都福祉保健局
疾病対策課長
鈴木祐子医師 -
課長級になると、政策の実現のため、議会や関係機関への説明や折衝などの対応を求められます。マスコミ対応をすることもあります。
さまざまな関係者の話をきいて、合意を形成していくことは行政の醍醐味です。
その時に、医師としての専門性を活かせるか戸惑うこともありますが、東京都は公衆衛生医師が多く、相談もできます。私もいつも、先輩や同期の公衆衛生医師をはじめ、多くの方々に助けられています。
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保健所長のお仕事
東京都福祉保健局
健康安全部
感染症危機管理
担当部長
吉田道彦医師 -
保健所業務というと、対人というイメージがありますが、保健所長は「対物」の対応、折衝がメインです。感染症や食中毒を未然に防ぐ指導を各関連施設へ行ったり、医療機関の開設許可はもちろん、葬儀場、お化け屋敷などの各種認可業務も行います。
また、議会対応をはじめ、各医療機関へも改善提案・指導を行う等、医学知識だけでなく、法律をうまく解釈しながら、政策形成を行っていく必要があります。
課長代理級医師の一日
東京都におけるがん対策のうち、一次予防を行うがん検診の普及啓発を主に担当しています。
東京都がん対策推進計画に基づき、2023年までにがんによる75歳未満年齢調整別死亡率の67.9以下(10万人対)を達成するため、科学的根拠に基づくがん検診の実施、検診受診率50%以上、精密検査受診率90%以上を目標としています。
東京都では各がんの講習会の開催、勧奨資材の提供、普及啓発キャンペーンを行い各自治体に支援を行っています。
AM
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9:00
出勤。
各自治体のがん検診の実態調査や専門家への講演会依頼等を行うため、東京都の各自治体や医療機関に直接出かけることが多いです。
- 10:00 東京都で適切ながん検診が実施されるよう、年間を通して様々な講習会や調査等の準備と実施を行っています。
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12:00
お昼ごはん。
特に庁内や自分の部署にいる必要はないので、都庁の外にでかけることもあります。
PM
- 15:00 外へ出かける用事が無いときは、基本的には各種講習会や講演会の準備、自治体や都民の方からのがん検診に関するお問合せに対する対応を行っています。
- 17:45 おおむね定時である17:45に退庁することができますが、突発的な事案が発生した時にはやむをえず残業となる場合もあります。
島しょ地域での働き方
島しょ保健所 小笠原出張所
副所長 佐藤正子医師
わたしが赴任している小笠原村の人口は、父島が約2000人、母島が約500人。本土との交通手段は週に1回、片道24時間かかる定期船しかありません。そんな地域特有の制限内で、いかに健康危機管理を行うかを考えています。
具体的な業務は、対物サービス(食品管理・営業許可、生活衛生関係の営業許可、医療監視)から対人サービス(精神保健、感染症、母子、栄養、難病)まで多岐にわたり、健康診断や保健指導といった住民サービスの一部支援も行っています。業務が非常に幅広いため、研究分野、臨床現場、本庁といった様々なフィールドで働いてきた経験はもちろん、私生活の子育て経験など、すべてが生きる場所だと感じていますね。
一家そろって赴任したので、オフの日はみんなで海に行って波と戯れたり、高台に登って見える広大な海原と島々の風景に感動したりと、楽しい時間を過ごせています。
A1
わたしは小児科医から公衆衛生医師となり、保健所で感染症対策などを行っていました。公衆衛生全般について幅広く知りたいと思っていましたが、3年ほど経っても自分の担当業務で手一杯。他の部や課と仕事をすることはありましたが、さすがは東京都、組織が大きく、全体像や動きを把握できずにいました。
そんなとき、月1回行われる研修で島しょ保健所について学ぶ機会があり、「小規模なので保健所業務全体に携われる」「島には支庁というミニ都庁のような組織があり、公衆衛生全体の動きもわかりやすい」という話を聞いて挑戦したいと思ったんです。あわせて、島ならではの職住近接の環境で、家族と過ごす時間を持てたらいいなという希望もありました。
A2
小笠原諸島の島民は2500人ほどですが、年間約2万人の観光客が訪れます。人が動けば感染症の原因となる細菌やウイルスも運ばれ、また、万が一感染症が持ち込まれたときは、あっという間に広がってしまう可能性があります。さらに、本土への緊急搬送は(距離的にヘリコプターによる搬送ができないため)自衛隊の協力を請うしか手段がなく、本土と比較して時間もかかるため、現地診療所との打ち合わせや対策立案はより緊張感を持って取り組んでいます。
また、人口の少なさから、文字通り「顔の見える関係」が島民の間にできています。ですので、役場や警察といった関連機関との連携はとてもスムーズ。島民の皆さんもウェルカムな雰囲気なので、こうした環境に慣れるのに時間はかかりませんでした。
A3
本庁とは週に1回、定例的にウェブ会議を行っています。そこで、島しょ保健所の各出張所(大島、三宅、八丈、小笠原)の医師全員とも顔を合わせられるのはありがたいですね。この他、担当業務に合わせて月1~2回は会議にウェブ参加をしています。と言うのも定期船の便が限られていて、一度小笠原村を出発すると約1週間は帰りの便がないので、本庁への出張は回数が限られます。そんな状況なので、研修にもなかなか行けないのですが、e-ラーニング形式を利用したり、資料を取り寄せて学ぶ機会を確保するようにしています。