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  • 東京都 公衆衛生医師

公衆衛生医師とは

WHO世界保健機関は、健康について「単に疾病に罹患していないだけではなく、身体的、精神的、社会的に健全であること」と定義しています。

この真の「健康」の保持推進のためには、臨床医療だけではなく、社会制度として健康を推進する公衆衛生行政の強化が必要です。公衆衛生医師は、医師としての立場から、医学的知識や臨床経験に基づいて事業の評価や判断を行う一方で、事業の企画・立案、調整、実施、進行管理を行う行政職としての役割も担っています。

比べてみました!「臨床医 VS 公衆衛生医師」

Check1
活躍するフィールド
病院という1か所ではなく、東京都は、都庁をはじめ31の保健所を一定サイクルで異動します。複数のポストを経験し、将来は、組織の管理職や保健所長として、公衆衛生行政における指導的な役割を担っていきます。
Check2
チームプレイ
組織の一員として、保健師、栄養士、薬剤師などの医療系専門職や事務職員と力をあわせて仕事をすすめていく点は、チーム医療と共通で、施策の実現にあたっては、関係部署や関係機関等の協力、理解が得られるよう、的確にわかりやすく説明する能力、調整する能力も求められます。
Check3
患者とのかかわり方
何かしら罹患している患者が受診に来るのを待って治療を行う臨床とは逆の矢印となり、地域に出向いて、相手の持ち場や生活の場にこちら側から入りこみ、地域住民全体の健康問題の予防に努めます。
Check4
考え方のプロセス
相手が個人か集団かという違いはありますが、状況を分析して問題を発見し、対応策を打っていくプロセスは、臨床現場での「問診・検査・治療」の流れと同様です。臨床をやってきた方にはそんなに違和感がないのではないでしょうか。

こんな人にオススメ

オススメ1

セカンドキャリアを考える方

臨床現場もやりがいはある――。しかし、今後のキャリアパスや体力、就業環境を考え、次のステージを模索されているアナタへ!
実は考え方は、「臨床と変わらない」お仕事です。

オススメ2

ワークライフバランスを重視される

出産・育児を経て職場復帰を考えているアナタへ!当直なし、福利厚生の充実した環境で、1370万人の都民の命を守る、働きがいもQOLも充実したお仕事です。

オススメ3

プロジェクトリーダーとして活躍したい方

臨床時代、疾病の発症予防や早期発見・早期治療の重要性や疾病の背景にある社会的な課題を解決する必要性を感じたことのあるアナタへ!数十億規模の事業にも挑戦できるお仕事です。

公衆衛生医師の主な業務

主な業務

公衆衛生医師は、都庁や都内の保健所等に勤務し、地域住民の健康増進や健康危機管理に関わる様々な業務に従事しています。

地域保健法はじめ各種の関係法令等に基づいて、感染症、生活習慣病・がん予防や健康づくり、母子保健、精神保健、難病や医療安全などの保健分野の事業を担当するほか、地域包括ケアや子育て支援などの医療や福祉の分野の施策にも関っています。

ここでは、都内(特別区)保健所で多く取り組まれる対策をご紹介します。

感染症対策
フラットこそが到達目標
感染症対策
感染症対策

東京都福祉保健局 多摩府中保健所
保健対策課長
村上邦仁子医師

感染症は人とともに動き、かつ国境がないもの。国際都市東京では、外から来るものを防ぐことはほぼ不可能です。よって、入ってきた感染症をいかに早く見つけて対処するかという視点が対策の中心となります。これには、現場の臨床医の先生方の御協力が必要不可欠です。

現在、サーベイランスという考え方で、ちょっとした変化をどう数値として見つけていくかという仕組みを検討しています。矛盾するようですが、サーベイランスの結果、数値がフラットである、すなわち変動がないということも重要です。臨床現場では、状態の悪くなった患者様を治療する場面が多いですが、我々は悪くなるまえに、安定した社会を維持することが目標であり、やりがいでもあります。

健康づくり
「1次予防」が実践できる現場
健康づくり
健康づくり

東京都福祉保健局 保健政策部
中坪直樹医師

健康診断という「2次予防」の前に、良い生活習慣を指導する「1次予防」対策として、行政が手を出しにくい働き盛りの男性30~40代にターゲットを定めて、メタボにならない健康づくりやそのためのモチベーションを上げる事業を行っていました。メンバーの中心である保健師だけではなく、栄養師、歯科衛生士、臨床検査技師、事務職等、保健所内の専門職の方々と一緒にやっていく事業で、医師の視点から事業の進め方を助言し、課長であれば、予算編成、議会対応も行います。

臨床と違い、直ぐには結果が見えにくいものですが、実際、毎年定員を超える応募をいただくような人気イベントになっていることからも、健康を実感して頂いているのではないでしょうか。

母子保健
妊娠期から切れ目のない支援
母子保健
母子保健

東京都福祉保健局 少子社会対策部
事業推進担当課長
佐瀬一葉医師

核家族化、地域のつながりの希薄化等により、地域において家族を支える力が弱くなっており、出産・育児に係る不安や負担が増えています。それを解決するため、行政として事業を企画し、予算化し、実施に向けて調整することも重要な業務です。例えば、東京都では「ゆりかご・とうきょう事業」という年間予算規模12億円の事業があります。区市町村の体制づくりを推進するもので、各家庭に一万円分の育児用品の配布や専門職の配置等により、妊娠期からの切れ目ない支援を行いやすくしています。このように自治体規模で母子保健の水準を高める事業に関われ、とてもやりがいがあります。

健康危機管理
地域住民の生命と健康を守る
健康危機管理
健康危機管理

東京都福祉保健局
多摩立川保健所
企画調整課課長代理
(健康危機管理担当)
桑波田悠子医師

健康危機管理では、食中毒や新型インフルエンザ等、日頃から講じておかなければならない対策のほか、災害やテロ等の日常的には起こらない有事に備えた取り組みも重要になります。有事には私たちも現場に出向いて対応をお願いすることになるため、各自治体や地域の病院、医師会等と連携を取りながら、顔の見える関係作りを心掛けています。災害は日本のどこの地域にも起こり得ます。災害派遣の活動や訓練等を通して、新たに出てきた課題に取り組み、随時マニュアルの見直し等も行っています。実際の臨床現場ではなくても、結果的には何十万人という地域住民の生命と健康を守ることにつながりますから、十分にやりがいを感じています。

※掲載されている医師の所属はインタビュー当時のものです