働き方改革・AI普及後もさらに進化 プログラム別マッチ者数全国2位の和歌山県立医科大学附属病院

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働き方改革・AI普及後もさらに進化

プログラム別マッチ者数全国2位の和歌山県立医科大学附属病院

追加取材日 : 2021年6月
初回取材日 : 2016年3月

研修は大学か市中か―。医学生を悩ませる永遠のテーマを全国初の手法、通称“和歌山研修ネットワーク”で解決し、並みいる大学病院を押さえてプログラム別マッチ者数全国2位、大学病院別マッチ者数全国7位(2016年実績)に輝いた和歌山県立医科大学附属病院(和医大)。新専門医制度をはじめとする制度改革に医療界がゆれる中、同院の研修体制はさらなる進化を遂げようとしています。年々“大学離れ”が進む中、なぜ和医大には研修医が集まるのか―。その魅力に迫ります。

将来の選択肢を広げる、18領域のプログラム

医師の働き方改革やAIの普及等、昨今は「医師の在り方」も変化し続けています。2018年にスタートした新専門医制度やNCD(National Clinical Database)を通じて、医師一人ひとりの経験症例数や治療実績の“見える化”も進められており、各地の医療機関全体も混乱期にあると言えるでしょう。

そんな環境下でも、「医師として重要なこと」を身に着けることができる研修体制へと進化させようとしているのが、中尾直之病院長。

「AIが普及すると、診断だけでなく治療方針の決定もAIが行うようになるかもしれません。そこで重要なのは、AIが出来ないこと、つまり患者や家族のバックグラウンドも考慮しつつ、コミュニケーションを図りながら最適な診療方針の決定へと導くことで、これは医師にしかできないことです。

よって初期研修中は、もちろん指導医の下でという前提ではありますが、病状・治療の説明(ムンテラ)の場数を踏む機会を増やせる仕組みとし、必要とされるコミュニケーション能力を涵養するようなプログラム設計を行っています。

更に、“和歌山研修ネットワーク”を活用して、大学・市中病院などあらゆる環境で研さんが積める和歌山県では、Common Diseaseから専門的な症例まで幅広く経験できます。その中で大局的に考える力を養い、そこに基本的臨床技能、専門能力がつけば、医師としてのスキルは飛躍的に向上するはず。

また、2024年の働き方改革に向けては、効率よく研修できるシステムが必要です。タスクシフティングや他職種とのチーム医療が重要になり、そのためには協調性が養われる教育体制も必要です。初期研修中は現時点でも特に過重すぎることはなく問題ありませんが、専門研修では科ごとに忙しい状況は続いているので、病院全体としての一定ルールを敷き、負荷のかかりすぎない永続的な働き方を模索しています」

これまでも、時代の要請を見極めながら研修体制を改善させてきた和医大。その象徴とも言えるのが、“和歌山研修ネットワーク”。 超高齢社会の到来、国際標準の医療の追求、それに伴う専門医制度・病院機能の再編―。これらの環境変化に対応するために、“抜きんでた専門領域を持つ”、“いつでも、どんな疾患、患者さんでも診られる救急医・総合診療医としての側面を持つ”、“考える力やコミュニケーション能力といった高度なヒューマンスキルを持つ”という3つの条件を備えた医師を養成しようと、上野雅巳先生が“和歌山研修ネットワーク”を構築したのは、2014年のことでした。

「国際標準や最新医療、専門症例に精通するためには大学病院、Common Diseaseに幅広く対応するためには市中病院で経験するのが最適。さらにヒューマンスキルを育むとなると、色々な環境で色々な経験をするしかない―」

そのような苦悩の末、上野先生は和医大に所属しながら、自身の成長や変化に合わせて柔軟に市中病院での研修ができ、更に県外の提携病院や、MDアンダーソンがんセンター・スタンフォード病院など、海外の有名病院での短期研修もできるプログラムを構想。

壮大なビジョンを持って始まった和医大の研修プログラム。実際の運用や作りこみは、当時の研修医と一緒に行ったそうです。

「研修医と一緒にプログラムを作ったのは、若い人たちのアイデアが医療の未来をつくると思っているため。皆で作り上げたものを次の世代にわかりやすく提供する、そして常にアップデートしていく。その積み重ねが今につながり、結果、『自由度』と『救急』を重視した内容となりました。

総合診療、救急は当然診られる、その上で特定領域のスペシャリストである、という医師を目指していただければと願っています」

中尾直之病院長

中尾 直之 病院長

上野雅巳先生

上野 雅巳 先生

和歌山研修ネットワークの概要

和歌山研修ネットワークの概要 (クリックで拡大)

10病院以上で研修する猛者も!?自由な研修プログラムは新専門医制度にも最適

和医大の研修の最大の特徴は、「研修先」、「期間」、「診療科」の決定権が研修医にあること。更に一般的なたすき掛けとは異なり、研修医の意思で3か月ごとにローテート先を決定・変更できる柔軟性を備えています。このプログラムを活用し、10病院以上まわる猛者もいるとか。

高度先進医療を提供する大学病院の顔と、1~3次救急を受け入れる県立総合病院の顔を併せ持つ和医大、更に地域に密着したCommon Diseaseを多数経験できる市中病院と、様々な研修環境が用意されているプログラムには、思う存分興味の赴くままに学んだ上で、方向性を定めてほしいという願いが込められています。

そしてそれは、基礎領域で複数の専門医を持つことが難しくなり、初期研修中に自身の方向性を見極めることが重要となる新専門医制度においても、最適なものとなっています。

ヘリポート

4月オリエン時の初期1年次集合写真

自分達で医療をやっているという実感が持てる!全国トップクラスの高度救命救急センター

和医大のもうひとつの特徴と言えるのが、厚生労働省による評価結果で全国的にも最高得点の実績を誇る高度救命救急センター。1~3次救急まで幅広く対応する同センターでは、ウォークインからドクターヘリで搬送される重症者まで、初期・後期研修医によるチームがファーストタッチを行っています。

こうした環境が人気となり、研修医専用医局では初期研修医120人超が同じフロアで過ごしています。その雰囲気について、先輩研修医はこう語ります。

「高度救命救急センターでは1年目から3年目の研修医でチームを組みますので、“自分達で医療をやっている”という実感が持てますし、研修医専用医局では研修医同士で、ローテート先の診療科や病院について活発に情報交換ができます。約半数がわたしのように他大出身者ですが、学閥のようなものを感じたこともありません。“絶対に後悔しない”と自信を持ってオススメできる環境です」

研修医室には仲間が沢山

研修医室には仲間が沢山