大学病院であり県立病院、
全国有数の「守備範囲の広さ」が活きる和医大の専門研修
取材日 : 2022年6月
高度先進医療を担う、県内唯一の大学病院としての機能と、地域密着型の医療を担う県立病院としての機能を併せ持つ和歌山県立医科大学附属病院(和医大)。双方の役割を担う全国有数の“守備範囲の広さ”を活かし、専門研修では各診療科が現場の哲学に基づいた指導を実践しています。今回は、そんな和医大の救急科・血液内科・産婦人科の第一線で活躍する医師に、この地で医療を学び、患者さんに向き合う意義について伺いました。
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【救急科】救急医の専門性・醍醐味は「地域の救急体制のマネジメント」
10万人当たりの医師数が全国9位と、比較的多い和歌山県。しかし、医師の分布にはバラつきもあり、紀伊半島南部や高野山地区など、高次医療機関までのアクセスが困難な地域が点在しています。こうした地域からの搬送にも対応すべく、1-3次救急まで対応する和医大ではドクターヘリも配備。年間約400件ものフライト、約2万人の救急患者を通じ、和歌山市内はもちろん県全体の救急医療体制を支える、重要な役割を果たしています。
県内全域の救急需要に責任を持って幅広く応じる――。そんな使命感に満ちた環境で腕を磨く醍醐味について、救急集中治療医学講座の加藤正哉教授は次のように語ります。
「地域によって異なる、求められる救急医療のあり方を見極め、その土地に必要な救急体制をつくっていくことこそが、実は救急医の専門性であり、醍醐味だと言えます。そのため当院の救急医には、大学病院である当院においてERや外傷中心の対応能力を身につけるだけでなく、どの地域・病院でも身近に必要とされる救急体制を学ぶため、県内医療機関との連携も強固に実施しています」
和医大では、多いときには1日で20-30人の救急受け入れを担当し、年間800人超のICU患者を受け持ちます。一方で地域の中核病院では、他科や他職種を巻き込みながら実現させられるマネジメント能力を磨いています。幅広い症例を経験して、大きな裁量を任せられる和医大の環境を活かせば、サブスペの進路が広がりつつある救急科ではいくらでもキャリアパスは描けそうです。
その魅力に惹きつけられ、新専門医制度下では毎年複数名の専攻医を受け入れ続けています。福島純一先生(専門研修3年目)は、研修の手ごたえを次のように語ります。
「当院には1-3次の様々な症例が集まりますし、どんな症例にも対応できる環境が整っています。大学病院として診療科も充実しているので、『どの科に患者さんをつなぐべきか』『救急で受け入れた患者さんのその後はどうか』といった経験を養うことができます。一方で県内市中病院では、大学病院では診ることの少ない症例に対し、総合診療的な見方も必要とされます。市中病院では、専攻医とはいえ『救急医』としてスタッフからも信頼され、非常にやりがいを感じています。
また、集中治療科領域のサブスペシャルティが、日本専門医機構から認定さたことで、過去の『なんでも屋の救急医』のイメージから『専門性をもった救急医』としてのキャリアを積んでいける将来も見据えることができるようになりました」
【血液内科】スタンスは『内科医』その中の得意分野が”血液”なだけ――。
県内唯一の大学病院であり県立病院でもある和医大は、Common Diseaseから専門症例まで、地域のニーズに包括的に対応。その特性は内科系診療科の専門研修にも強く現れています。中でも、園木孝志教授が率いる血液内科は、「血液疾患が疑われるものは何でも診ます」というスタンス。造血幹細胞移植といった大学でしか対応できない症例を年間20-30件実施する傍ら、南北に長い和歌山県全体の血液疾患をフォローできるよう、「ロングフォローアップ外来」を設置して専攻医たちも診療にあたっています。
同科の根底にあるのは、「血液内科医である前に『内科医』であれ」という姿勢。園木先生によると、「血液内科というのは特別な『技』が必要なわけではなく、勉強したことをそのまま生かして治癒させることができる領域です。つまりどんな医師にも血液の専門性を磨くチャンスがあります。また、患者さんと長期に渡り過ごすため、患者さんの全身、つまり内科全般を診て治療していく必要もあります。そういった点では総合内科にも近く、将来は総合内科志望の方も当科の専攻医として研修しています」
岡部友香先生(専門研修3年目)は、同科の魅力を次のように語ります。
「私は総合内科で研修を積んでから、血液内科の専門研修を始めました。白血病や悪性リンパ腫は、抗がん剤のみで完治を目指せる可能性のある癌です。日々新しい治療薬が開発されているため、最新の文献を調べて患者さんに一番適した治療法を考え、リスクを含めて情報を提供します。若い患者さんも多く、患者さん自身やご家族が最新の治療法などを調べてこられることもあり、同じ方向を向いて治療に当たれることに大変やりがいを感じています」
他にも、血球の数値異常というのは日常的にしばしば認められ、他科の医師から相談を受けることも多く、『医師のための医師』という側面もあると岡部先生は実感しています。
一方で、血液は研究サンプルが集めやすいこともあり、研究色の強い科目とも言え、専攻医たちも日々診療と研究に励んでいるそうです。
【産婦人科】最先端医療を求める患者の“最後の砦”として
最後に話を伺ったのは、県内唯一の総合周産期母子医療センターであり、基幹施設である産婦人科。人口が分散している和歌山県内では、ドクターヘリなどのインフラを活かして和医大が高度症例を一手に全例応需し、地域住民が安心して医療を受けられる体制を整えているのが特徴。必然的に和医大には、県内全域の高度症例が集積される状況となっています。故に、「お産難民、がん難民をつくらない」をモットーに、県内唯一の大学病院として、“最後の砦”の役割も担う同科には、県内全域から最先端医療を求める患者が集まります。
井箟(いのう)一彦教授によると、「このように、『われわれの限界が、この地域の産婦人科医療の限界』と言っても過言ではない環境は、産婦人科医としてどこへいっても通用するスキルが身につく」といいます。専門医制度下においては、県内の主たる基幹病院として、他9つの連携施設と3年間の専門研修プログラムを上手く分担。研修の特徴について、次のように語ります。
「産科・婦人科領域ともに、“高度な症例は和医大へ”という流れができているのが和歌山県の医療提供体制の特徴。大学では、リスクの高い帝王切開、前置胎盤や胎盤早期剥離など、重症症例をまんべんなく経験し、地域の連携施設では、住民のニーズに応えるべく、正常のお産や良性疾患を数多く経験するよう、棲み分けができています。婦人科領域においては、当院が県内のがんセンター的な立ち位置で、 全ての婦人科がんの患者さんに対応できる体制を整えており、腹腔鏡手術も多いです。よって、サブスペも「周産期」「婦人科腫瘍」「腹腔鏡」の専門医・認定医取得も見据えることができ、国内外の留学も積極的に進める方針です」
専門領域が幅広く、母体・子ども双方の命を預かる産婦人科医において最も大切なのは『チームワーク』。行き場のない患者さんにいつでも対応できるよう、3つのチームにレベルの様々な医師を配置し、組織化して患者さんの情報を共有しています。医局では“輪”と“和”も重視し、お互いをリスペクトしながら壁を取り払ってどんなことも話し合える雰囲気をいつも作っているそうです。
その環境もあってか、スタッフは過半数が女性。高度な産婦人科医療を持続的に提供できるよう、若手の産休育休期間にも十分配慮があり、例えば6ヶ月の休暇後復帰しても同じ3年で専門医取得が叶うようなコース設計も相談可能です。寺本綾女先生(専門研修2年目)は、次のように語ります。
「教授の外来枠に同席しているため教授との距離が近く、チーム制をとっているので上級医へも相談しやすい。また、子育て中の女性医師でもフルタイムで働く方が多いので、“どうしたら自分の目指すキャリアが積めるか”をイメージできます。サブスペはまだ決められていませんが、大学でのER経験、早くから実践できた婦人科オペの経験含め、患者さん一人ひとりの緊急度や、お産のあり方もそれぞれ違う中で、『あれもこれも』経験できる環境はとても貴重だと実感しています」
大学病院と県立病院、双方の強みを活かして
個性豊かな3つの診療科に話を聞いた今回の取材。どの診療科においても「和歌山県の医療提供体制は自分たちが支えなければならない」という使命感を持ち、日々の臨床に向き合っている点が共通していました。大学病院・県立病院、双方の使命感と強みを兼ね備えた和医大。広い視点を持って地域医療に携わりたいという方は、問い合わせてみてはいかがでしょうか。
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