北海道道立病院局が提示する、これからの地域医療の環境
ーー道立病院局として、現在羽幌病院・緑ヶ丘病院をはじめとする地域病院で医師採用を強化している背景や目的についてお聞かせください。
人口減少や高齢化の進行により、全国的に医師の地域偏在が課題となっていますが、特に北海道は広域で、札幌などの主要都市とそれ以外の地域との医療資源の偏りが顕著です。道立病院は、そうした主要都市以外の地域で、地域の医療機関と連携しながら必要な医療を提供する役割を担っています。地域医療を将来にわたって維持していくためには、医師の確保・定着が欠かせません。道立病院局として、こうした地域の医療体制を維持し、道民の皆さんが住む場所にかかわらず必要な医療を受けられる環境を守っていくことが、医師採用を進める大きな目的です。 (井上事業管理者)
ーー都市部や大手病院と比較した際、道立病院局が提供できる独自の勤務環境や強みは何でしょうか。
大きな特徴の一つは、道立病院の医師が「北海道職員」として働くことです。「北海道職員」の医師ですから、勤務先の病院はもちろん、北海道全体の医療課題や北海道の文化や道民生活に触れる機会があり、都府県から来ていただいた方は新しい発見や出会いがたくさんあると思います。また地域病院では、診療科の垣根を越えて患者さまを診る機会も多く、医師としての守備範囲を広げ、現場で判断する力を身につけられることも強みです。地域に密着しているので、自分が診た患者さまのその後経過をたどることができるのも魅力の一つです。 (井上事業管理者)
ーー残業月15時間程度、年休取得14.5日程度という労働条件を維持できている、組織的な取り組みや体制についてご教示ください。
医師の働き方を持続可能なものにするため、個々の医師の努力だけに頼らず、組織として病院業務を支えることを重視しています。多職種連携、ICTの活用による情報共有などを進め、医師が本来担うべき業務に集中できる体制づくりに取り組んでいます。また、時間外勤務や休日の当直体制を非常勤医により確保し、常勤医に過度な負担が掛からないようにしています。「地域医療だから忙しくて当然」ではなく、医師が安心して長く働ける環境を整えることを大切にしています。 (井上事業管理者)
羽幌病院:明確な機能分化と連携が生む、無理のない総合診療
ーー病理医としてのキャリアを経て、総合内科として北海道の地域医療に携わろうと考えられたきっかけをお聞かせください。
私は稚内市の出身で、いつかは北海道に戻ろうという考えをもっていました。もともとは専門である病理医として働ける病院を道北部エリアで探していましたが、あいにく求人が見つかりませんでした。病理を続けたい気持ちもありましたが、病理医になると決めた当初から「最終的には臨床に戻ろう」と考えていたので、良い機会だと思ってキャリアチェンジに踏み切りました。そして、北海道医師会の医師斡旋・再就職支援窓口から羽幌病院での「臨床再研修」という枠組みをご紹介いただいたという流れです。 (佐藤先生)
ーー病理から総合内科に移られ、実際の診療で手応えや苦労を感じたエピソードがあれば教えてください。
病理ではある程度経験を積んできましたが、今回臨床に戻ってからは「初期研修医をもう一度やり直している」ような感覚があります。病理は基本的に患者さまと直接接することはなく、臨床医との対話が中心でした。また、検体が対象であれば自分のペースで時間をマネジメントできますが、臨床では患者さまが来られたらすぐ対応しなければなりません。朝から晩までの緊張感が全く違いますね。その分、目の前の患者さまを治療するやりがいも感じています。 (佐藤先生)
ーー地域の医療・介護機関との連携体制についてはいかがですか。
必要に応じて高度医療機関にご相談しますし、現在は訪問診療や特別養護老人ホームへの回診なども担当しているため、院外のスタッフとのコミュニケーションも取れています。羽幌町は人口に対して高齢者施設が比較的多いですが、それでも交通手段がなく通院が困難という事情を抱えた方がいらっしゃいます。患者さまご本人はもちろん、支えるご家族の大変さを実感する場面が多くあり、訪問診療・在宅医療の大切さを実感します。 (佐藤先生)
ーーメディカルスタッフとの連携はいかがでしょうか。
前職は大学病院などの大規模施設が多かったのですが、ここに来て感じたのは、看護部や地域連携、リハビリといったコメディカルの皆さんが非常に頼りになるということです。地域のことを熟知したプロフェッショナルとしてしっかり力を発揮してくれており、彼らの協力なしには地域医療は回らないと実感しています。 (佐藤先生)
緑ヶ丘病院:指定医取得とワークライフバランスを両立できる環境
ーーご着任の経緯について、今回緑ヶ丘病院に入職されたきっかけをおうかがいできますか。
神戸出身で、大学進学のために旭川に来て以来、ずっと北海道に住んでいます。医局人事などの兼ね合いもあり、一度医局を離れて釧路の消化器・内科系病院に就職した際に港町の雰囲気が気に入り、「ここに骨を埋めたい」と思いました。釧路市内から通勤可能で精神科の研修を続けられる場所を探していたところ、緑ヶ丘病院に出会うことができました。決め手は児童精神科があり、症例の幅が非常に広い点です。以前検討した病院は認知症診療が中心でしたが、緑ヶ丘病院では若い世代の疾患や精神科救急も積極的に扱っており、研修として学ぶにあたって症例のジャンルや幅がとても魅力的だと感じました。 (津吉先生)
ーー釧路から帯広へ通勤し、週4日勤務という働き方を選択されています。このフレキシブルな働き方の満足度はいかがですか。
遠距離通勤になるため、週5日勤務だと体力的にも費用面でも負担が大きいと考え、最初から週4日勤務が可能な条件で探していました。条件交渉もスムーズで、交通費の支給も含めて柔軟に対応していただけました。月・火・木・金と勤務し、水曜日に固定でお休みをいただいています。気持ちのゆとりが全然違いますね。週の半ばで「今日頑張れば明日で一区切り」と思えるので、このサイクルは自分に非常に合っています。 (津吉先生)
ーー日々の診療における症例経験や、指定医をお持ちでない状態でのバックアップ体制はいかがですか。
症例数が豊富で次々と患者さまが来られるので、しっかり経験を積むという意味では申し分ない環境です。かといって救急車がひっきりなしに来るような過酷さでもなく、夜もしっかり睡眠が取れていて快適に働けています。私は現在非指定医ですが、何かあれば指定医の先生へ電話でいつでも相談でき、サポート体制が整っています。初期研修後にすぐ入職して10年以上勤務し、指定医を取得された先生もいらっしゃいます。転勤なく長く働き続けられる環境で、指導体制や症例数も十分だと感じています。 (津吉先生)
ーー十勝エリアにおける連携や、院内のスタッフとの関係性はいかがでしょうか。
身体合併症のある患者さまは連携病院へご紹介しますし、地域連携で困ったことはありません。また「十勝精神科医会」のような集まりや懇親会もあり、他病院の先生方とも交流の機会があります。開業者にも当院出身の先生が多く、アットホームな雰囲気があります。また、コメディカルの皆さんが非常に優秀で優しいです。隔離のスケジュール調整や、患者さまが安心して過ごせるような工夫を率先して提案・実行してくださるので、医師としては非常に心強いですし頼りにしています。 (津吉先生)
体験談で見る北海道移住のリアル
ーー北海道での暮らしについて、生活環境や食事の魅力について率直な感想をお聞かせください。
関東にいた頃は車に乗っておらずペーパードライバーだったのですが、羽幌町は碁盤の目のようになっていて非常にコンパクトな街です。冬場に車がない時期でも、歩いて買い物に行ったりバスを利用したりして十分生活できました。困る点としては、大きな買い物やおしゃれなものを買いたい時に近場に店舗がないことくらいですが、皆さん必要に応じて旭川や札幌まで出かけているようです。食べ物はお魚が安くて非常に新鮮です。特に甘エビが有名ですが、カレイなども種類が豊富で近海で獲れたものが安く手に入ります。 (佐藤先生)
帯広・十勝エリアは、十勝和牛や乳製品、ジャガイモ・玉ねぎなどの野菜が新鮮で格安で手に入ります。釧路からのアクセス面でも、車はもちろん、帯広駅から病院前までバス一本で来られるため、公共交通機関での通勤も十分可能です。駅近くに住んで居酒屋巡りを楽しむような暮らしもできます。自然豊かな環境で子育てにも向いていますし、雪も少なめで暮らしやすいエリアです。私は虫がすごく苦手なのですが、北海道は冬場に虫がほとんど出ないのも魅力です。 (津吉先生)
ーー道外や遠方から着任する医師向けの福利厚生制度について具体的にお教えください。
道立病院の医師は北海道職員として採用されるため、北海道職員としての給与・手当等の制度が適用されます。寒冷地手当や公宅、住宅手当といった生活コストを軽減できる制度もありますし、赴任手当は転居先までの移動費が支給されます。一定の要件を満たす必要がありますが、遠方からの赴任にも対応できます。制度を活用し、安心して新しい地域で勤務を始められるよう支援しています。 (井上事業管理者)
現地見学から始まる、新しい医師人生
ーー今回募集する羽幌病院、緑ヶ丘病院において、新しく着任する医師にどのような活躍を期待されていますか。
それぞれの専門性を生かしながら、地域に必要な医療を支えていただくことを期待しています。羽幌病院では、総合診療を軸に救急、外来、入院、在宅、離島医療など幅広い診療に携わることができます。緑ヶ丘病院では、児童精神や救急も含めた多種多様な症例を経験でき、精神科医としての幅を広げられる機会があります。また、措置入院にもことかかないため、指定医取得を目指している若手にもマッチすると思います。 (井上事業管理者)
ーー最後に、応募や見学を検討している医師に向け、事業管理者からのメッセージをお願いいたします。
地方で働くことに興味はあっても、「北海道の暮らしは実際どうなのか」「どんな医療ができるのか」「忙しすぎないだろうか」と、不安に思う方にこそ、まずは一度現地を見ていただきたいと思っています。羽幌町では就業支度金の制度(※1)があり、公宅や借り上げ住宅など住居面での支援もあります。また、道立病院局では「地域医療視察・体験募集制度」(※2)を実施しており、旅費を全額支給し、実際の医療現場や地域を見ていただく機会を設けています。
医師として長い人生を考えるとき、都市部の大規模病院だけでなく、地域医療もまた選択肢の一つです。地域では患者さまとの距離が近く、診療科や職種の垣根を越えて患者さまを支えていきます。こうした関わりを持って行く中で、医師としての経験や判断力を磨かれていきます。道立病院では、北海道という大きな組織の中で、安定した環境で医師として働くことができます。道立病院局として、皆さんを歓迎していますので、町や暮らしも含めて実際に感じていただき、その上で「ここで働いてみたい」と思っていただければうれしいです。
(井上事業管理者)
※1
羽幌町 医師研究資金・就業支度金貸与制度
https://www.town.haboro.lg.jp/kurashi/fukushi/kenkou/shikin.html
※2
北海道道立病院局 地域医療視察・体験募集制度
https://hospital.pref.hokkaido.lg.jp/recruit/internship/