目指すのは、“断らない医療”と“医師の自己実現”が創る好循環
2018年の新築移転を機にHCUやヘリポート、血管内治療と外科手術に対応したハイブリッド手術室を新設、さらに民間病院では珍しい放射線治療装置やPET-CTの導入、緩和ケア病棟の開設も果たし、急性期から慢性期まで地域完結型の医療提供体制を着実に拡充している羽生総合病院ですが、設立の背景には、地域に救急病院がないためにお子様を事故で失った住民の悲痛な想いがあります。これは徳洲会設立者の原体験(※)と共鳴するものでもあり、「だから、基本的には救急の患者さんをきちんと受けて診ていくということが、根底にずっと流れているんです」と話すのは院長の松本裕史先生です。 ※:離島出身の徳田虎雄名誉理事長は、幼少期に診療を受けられず弟を亡くした
「“断らない医療”を継続的に提供するためには、それを支える“人”が不可欠です。良い人材を迎えて、その人材が自己実現を叶えられる場を提供する。それは最終的に地域へ還っていきます。病院としてこの循環をコントロールしていくために、広い意味での医師にとって働きやすい環境づくりという部分には力を入れています。ハード面はもちろん、医師秘書課を活用して医師がより医療に専念できるようにすることもそうですし、他にもキャリアアップのためのグループ内外での研修体制を整備したり、研究支援を充実させたりと、様々な取り組みを行っています。やはり、『ここで働いて良かった』と思えるような病院でなければいけませんから」(松本院長)
設備、人脈、研鑽機会…あらゆる面で成長を徹底サポート
松本院長が言う「医師の自己実現」をここ羽生総合病院で体現しているのが、2009年に後期研修医として同院でのキャリアをスタートし、現在は外科医長を務める鈴木敏之先生です。急性期から慢性期まで、また埼玉県北部のみならず群馬県南部からも患者が集まることから、多様な症例を経験できる点に惹かれて入職を決めたそうです。
「獨協医科大学埼玉医療センター(旧・越谷病院)で初期研修を修了した当時、消化器外科と肝胆膵外科に関心がありました。羽生総合病院の外科では、消化器や肝胆膵に加え、呼吸器や乳腺の手術も行っているので、外科医として幅広く学べると思いました。また、診断や手術だけでなく術後管理も自分で受け持つので、最初から最後まで診ることができます。外科医としてベースとなるスキルを身につけたい医師には、非常に適した環境だと思います」(鈴木先生)
同院では、院外との人的ネットワークも充実しています。鈴木先生は、松本院長の勧めで入職7年目から国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)で5年間の研修を受けました。
「がん研究センターでは、肝胆膵の手術や研究を経験してきました。その学びを持って羽生総合病院に戻ってきてからは、新築移転を機に大幅に新しくなった設備環境のもと、地域医療に大いに貢献できている実感があります。研修を通じて、がん研究センターの医師とのつながりができたことも大きな収穫でした。患者さんの紹介がスムーズになりましたし、今後に若手医師に対して自分がしてきたような研鑽の機会を提供することもしていきたいですね」(鈴木先生)
大規模グループだからこそ労務管理を厳守。働きやすさに安心感
羽生総合病院は、成長環境を確立しているだけではありません。医師の負担軽減にも積極的で、さまざまなフォロー体制が敷かれています。松本院長は「限界を超えるような働き方は絶対にさせません」と力強く語ります。
「当院は、特定の職員に負荷をかけず、チームとして努力する病院です。そのために、医療クラークを採用し、診断書や診療のサマリー、紹介状の下書きなど、医師の書類業務全般をサポートしています。また、当直や夜間救急は非常勤医を中心にシフトを組んでいます。常勤医は本人が希望する場合を除き、当直に入らないことが可能です」(松本院長)
前出の鈴木先生に、実際の働き方を伺いました。
「外来は木曜の午前中のみ、手術は週3~4回くらいです。その他の時間は病棟管理をしており、基本的には17~18時に退勤できます。土日の診療は当番制で、日曜日を月2回担当しています。当直はゼロにもできますが、私は経験を積むために週1回程度、受け持っています。また、週1日は研究日で院外に出ています。このペースであれば、家族とゆっくり過ごす時間をとれますし、学会にも参加できます」(鈴木先生)
徳洲会グループというと、ハードワークのイメージがあるかもしれませんが、同院にはまったく当てはまらないことがわかります。副院長で循環器内科医の高橋暁行先生は、「むしろ徳洲会ほど労務管理が厳密」と話します。
「徳洲会グループはコンプライアンスを重視しており、職員の労働時間はしっかりと管理されています。やむを得ず残業をした場合は残業代が支給されますし、マンパワーが足りないところにはスタッフを増員します。救急車がたくさん来るので忙しそうに見えるかもしれませんが、基本的には週休2日制です。もう昔のように身を粉にして働く時代ではありません。当院は、医師がモチベーションを維持しながら、安心して働いていただける病院です」(高橋副院長)
今後は院内保育所を充実させ、子育て中の医師のキャリアアップを強力に支援するそうです。
「今は少し離れたところにある保育所(24時間保育)を敷地内に設け、病児保育も始める予定です。現段階でも産休・育休は希望者全員が取得しており、復帰後の時短勤務も本人の希望に応じています。子育て中の医師が働きやすいように、フレキシブルに対応したいですね」(松本院長)
理想は高機能かつ小回りの利く病院
1983年の開院から38年の歴史を重ねる同院ですが、今なお進化がやむことはありません。高橋副院長は、今後の道筋についてこう思い描いています。
「うちに来る患者さんは、基本的に地域で完結することを望んでいます。理想は“大学病院の縮小版”のような高い機能を持ちつつ、患者さんが1日で複数の診療科を受診できる“小回りの利く病院”です。スペシャリティの高い医師を集め、各診療科のセンター化を実現したいと考えています。循環器センター、消化器内視鏡センター、脳血管センター、呼吸器センター、救命救急センターなどを立ち上げ、患者さんにより細やかで質の高い医療を提供することを目指しているのです。こうした新たなチャレンジに参加できることは、当院の一番の魅力だと思います」(高橋副院長)
地域にとってのメリットになるならば、どんなチャレンジも後押しする姿勢があると高橋副院長は続けます。
「ある医師は、自身の希望により循環器内科医でありながら、脳血管治療も手掛けています。他の病院では、2つの診療科にまたがることは難しいそうですが、当院では問題ありません。そのスキルを発揮できれば、患者さんの利益になります。自身の得意分野で存分に活躍してください」(高橋副院長)
果たすべき使命
意欲ある医師の自己実現に向けた惜しみないサポートは、臨床だけにとどまりません。徳洲会グループ内の臨床データを研究に利用できる準備が進んでおり、今後グループのスケールメリットを生かした大規模な研究も可能になるそうです。そんな羽生総合病院が期待する医師像について、松本院長は次のように語ります。
「間口は広く開いていますが、特に自分で『こういう医療を目指したい』という目標を持っている医師や、地域密着型の医療に興味のある医師は、当院の方向性にマッチすることでしょう。医療はやはり“人”が大切です。意欲的に頑張る医師を増やし、地域住民の皆さんに貢献していくことは当院にとっての使命でもあります」(松本院長)
“断らない医療”と“医師の自己実現”―― 一見すると相反するようにも見えますが、地域の中核病院としてのあり方を支える二本柱になっています。持続的に医師が活躍することで、サステナブルな地域医療への貢献を果たすべく、羽生総合病院は進化を続けています。
【医師プロフィール】
・名前:松本裕史
・役職:院長
・専門分野:胸部外科(肺)・消化器外科(食道)
・卒年:1984年
・名前:高橋暁行
・役職:副院長
・専門分野:循環器科
・卒年:1992年
・名前:鈴木敏之
・役職:医長
・専門分野:一般外科・消化器外科・肝胆膵外科
・卒年:2007年