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日本の縮図・兵庫県で公衆衛生医師に!
行政での勤務経験や専門分野を問わず、活躍の場が用意されています
取材日:2024年7月24日(エムスリーキャリア編集部)
臨床医は一対一、公衆衛生医師は一対集団の医療を目指す
公衆衛生医師の仕事は多岐にわたります。管内の市町や医療機関、医師会などと連携しながら、感染症対策や精神・難病保健対策、健康づくり、食品・生活衛生関連、地域の医療体制など幅広い業務に関わります。兵庫県の公衆衛生医師は本庁や計12カ所の健康福祉事務所に勤務しながら、前記の業務に携わります。幅広いフィールドで活躍する公衆衛生医師の多くは、かつて医療現場で臨床経験を積んだ医師です。県内の健康福祉事務所を統括する保健医療部長の山下輝夫部長(平成25年入職)も心臓血管外科医から身を転じた一人。すでに県職員として活躍していた出身大学OBの誘いによるものでした。山下部長は「臨床医が一対一の医療であるのに対し、公衆衛生医師は社会の仕組みを活用した一対集団を目指します」と両者の違いを表します。
山下輝夫部長
「大抵の臨床医は『自分の治療で患者が元気になる』といった分かりやすい医療を目指します。一方、公衆衛生医師は兵庫県の場合、約540万人の県民の健康に関わる幅広い業務にあたります。保健行政の役割はすべての施策を健康に寄り添う形にすることです。例えば、在宅の人工呼吸器の支援や不妊治療に対する助成などを進めています。しかし、社会性が強い分、一人一人の治療結果をつぶさに確かめる現実感に乏しい面があります。ですから、公衆衛生医師の実態は当の医師にさえ、あまりよく知られていません。その上、現在従事しているのは比較的ベテランの医師が多い。このため、県では次代を担う新たな力となる若い医師の募集を積極的に進めています。日本の縮図と言われる兵庫県だからこそ、好みや関心に応じて選べるフィールドはたくさんあります。各地域の特性に応じて数多くの現場や事例に向き合ったり、臨床医時代に培ってきた、それぞれの経験を生かしたりすることもできます」(山下輝夫部長)
誰も取り残さない医療体制づくりにやりがい
令和6年4月から龍野および赤穂健康福祉事務所の2カ所を統括する圓尾文子所長(令和5年入職)も、心臓血管外科医からキャリアチェンジした一人。心臓血管外科医として28年の経験を持つ圓尾所長にとって、公衆衛生医師の仕事は「毎日が社会見学のような学びの連続」と言います。
圓尾文子所長
「西播磨地域は高齢化による人口減少が進み、医師不足や一見医療と無関係な空き家問題といった課題を抱えています。地域に出向くと看取りを含めた在宅医療や“人生会議”の取り組みの重要性を身近に感じます。そうした様々な地域課題について、医療・福祉チーム、市町・関係団体らと話し合いながら、 “誰も取り残さない医療体制”の確立に取り組む日々はとてもやりがいがあります。勤務医時代に医療安全管理及び感染対策委員会の仕事に携わっていた時は、仕組みの矛盾や医師1人にできることの限界を強く感じていました。現在、地域の全病院が参加する地域医療構想の会議を開催し、行政側として調整できる点はこの仕事の醍醐味の一つです。一方、医療的ケア児の災害時個別避難計画の作成にあたって個人のご自宅に伺うこともあり、私が兵庫県立こども病院に勤務していた医師と分かると、保護者によりご理解いただけたり、県内での長い臨床経験が様々な場面で活きていると感じます。人生会議啓発動画を医師会と共同制作するような楽しい経験もしています。時々『手術したくならない?』と聞かれますが、『みんなで次は何ができるか』とワクワクする今の仕事が楽しくて仕方ありません」(圓尾文子所長)
少子高齢化時代見据えた、実践的な施策を打ち出す
コロナ禍で中断を余儀なくされた業務の再開に取り組む鷲見宏所長(平成15年入職)。内科の臨床医として勤務医時代を過ごし、恩師の勧めもあり学生時代から関心を持っていた公衆衛生の道へ進みました。
鷲見宏所長
「中でも加速する少子高齢化は、行政サービスの提供を担う人を減らし、必要とする人を増やします。ですから、事務所長として、人の面でも予算の面でも限りある医療資源の有効な活用に心を砕いています。例えば高齢化対策では、『転倒⇒骨折⇒寝たきりの未然防止』『嚥下機能の低下や誤嚥性肺炎を招かぬようにするための口腔ケア』『他地区に比べて多い心不全対策』などを重点的に進めています。その効果を上げるため、病院や医師会、住民団体などとの連携にも力を入れています。多くの物事は健康福祉事務所だけで完結するのではなく、外部の人や組織との協力で成し遂げられるからです。現在の臨床現場が多職種連携で運営されているのと似ています。それだけに、事務所の単独判断だけではなく『自助、共助、公助』の精神で、総合的に取り組む姿勢が求められると思います。また、これまで経験したことがない新たな状況に向き合うことも多い中で的確な判断を下すために、科学的根拠を明らかにし、外国の状況や国際機関などの考えを参考にすることを心がけていますね。行政機関という性質上、外部からは『ちゃんとやって当たり前』と見られていますから」(鷲見宏所長)
病気の背景にある社会問題に取り組むため、20代で公衆衛生医師を経験
兵庫県の養成医師である守本陽一医師(平成30年入職)は、医師5年目である令和4年豊岡健康福祉事務所に配属。医師キャリアの早期に公衆衛生の道を選ぶメリットとして「所長のそばで仕事を学び、積極的な議論を交わせること」と話します。
守本陽一医師
「在学中に厚生省で医系技官の仕事を見学したり、保健所への実習、公衆衛生の授業や研修を受けたりするうちに、医療課題の根本原因にアプローチできる仕事に就きたいと考えるようになりました。臨床現場の課題の多くは病気そのものよりも、実は病気の背景にある社会課題が大きかったりします。例えば、お金がないから医療機関を受診できず病気が悪化したり、地域の繋がりがないために、孤独でアルコール依存症になってしまったり。現在はそうした方々を医療従事者や地域コミュニティにつないで、地域共生社会の実現を目指す地域連携の仕組みづくりに力を注いでいます。職場は気軽に何でも相談できる雰囲気ですし、未経験でも研修制度が整っているので、安心して仕事に取り組めます。また、臨床スキルの維持のため、現在も週1回は県立病院で外来を続けています。若いうちに公衆衛生医師の経験を積み、臨床に戻る方もいますし、両方を行き来しながら大学院を目指す道もあります。公衆衛生は長く関わることで、取り組みの変遷や人との関わりがより深く見えるのも魅力です。公衆衛生を一緒に盛り上げていこうという仲間と一緒に、今後も兵庫県でしっかりと仕事をしていきたいです」(守本陽一医師)
公務員だからこそ実現できるワークライフバランス
フレックスタイム制、テレワークも積極推奨
「特定の患者さんやその家族ばかりでなく、担当する地域全体の健康に関わることができるのが何よりの喜び」と鷲見所長が言及するように、臨床にはない醍醐味を持つ公衆衛生医師。医療職であると同時に公務員という側面を持っていることも特徴です。仕事に対して一定の責任を伴う一方で、公的な組織として働くため、職員同士が互いに助け合える仕組みが整っています。「ワークライフバランスもきちんと取れているので、子育てを考えている人には男女の別なく、働きやすいフィールドが用意されているはず」と山下部長。
「兵庫県はワークライフバランスを全庁的に推進する方針を明確に打ち出しています。その一環として導入しているフレックスタイム制のおかげで、私の勤務時間は原則的に7時45分~16時30分です。業務によっては在宅勤務を極力推奨しています。資料の丁寧な読み込みや発表資料の作成などは事務所よりも自宅のほうが集中できるからです」(鷲見宏所長)
勤務医時代には休みがなかなか取れなかったのですが、高齢の両親に会う時間ができましたし、念願の一級小型船舶操縦士免許 も取得できました」と笑顔で話す圓尾所長。さらに外科医時代から真の意味での“ジェンダーフリーの実現”に向け取り組んだ経緯もあり、「性別に関係なく、誰もが活躍できる職場を作るため、政策決定の場にまずは女性が参画できる環境整備に力を注いでいきます」(圓尾文子所長)
圓尾文子所長
大切なのは、専門でも経験でも知識でもスキルでもない
公衆衛生医師を志す動機は人それぞれであり、興味を持ちながらも様々な不安を抱くのは致し方ないことでしょう。しかし、兵庫県で働く上では杞憂であると現場の医師たちは口を揃えます。
「前職の専門分野は問われないばかりか、未経験者でも問題ありません。入職後のフォローアップ体制もしっかりしていて、外部の研修に派遣される機会もあります。希望によっては社会医学系専門医が所得できるプログラムも用意されています」(鷲見宏所長)
「私は総合診療医時代に図書館型地域共生拠点「だいかい文庫」を開業し,ソーシャルワーカーを配置して,本を軸としたコミュニティ形成と来訪者や医療福祉機関から紹介された方を地域コミュニティにつなげる活動を行ってきました。 現在も、社会的処方に関する本の執筆を担当するなど、公衆衛生医師の枠を超えた活動も認めていただいています」(守本陽一医師)
「兵庫ビジョン2050 では、誰もが希望を持って生きられる、一人ひとりの可能性が広がる『躍動する兵庫』を目標に掲げています。異なる考えや異なる業種の人に尊敬の念をもって接することができる方なら、新しいことに自分らしく挑戦できる魅力ある職場だと思います。みんなで幸せを作り上げたい、そのために何をすべきか考えたい医師は、ぜひ仲間に加わっていただきたいですね」(圓尾文子所長)
「県が求める医師像に難しい基準はありません。ただし、コミュニケーション能力が高いに越したことはないでしょう。『専門的な知識や高いスキルが求められるのではないか』と心配する人がいるかもしれませんが、それらは入職後にいくらでも磨くことができます。大切なのは、ワイワイガヤガヤしながら物事を前に進められる一種のノリです。要するに、気の置けない家族のように振る舞える人です。実は、部内の親睦会で、私の還暦をサプライズで祝ってくれたことがあり、素直に嬉しかったですね。本庁であれ、健康福祉事務所であれ、職場にはそういう家族的な一体感があるように思います」(山下輝夫部長)
地域住民の命を守り、健康的な生活を創る使命感
公衆衛生医師の仕事について、4人の方々にご自身の経験を踏まえた心がけや、やりがいなどを伺いました。それぞれの考え方を一括りにはできませんが、共通しているのは「地域住民の命を守り、健康的な生活を創る」ことに対する強い使命感です。保健所で経験を積んでキャリアアップを目指したい、県職員として地域社会に尽くしたい、臨床医時代の成果を地域住民のために役立てたいーーなど、この仕事を目指す人の動機は様々でしょう。臨床経験がある方、大学や研究所での勤務経験がある方、研修医の方などにも広く門戸を開けています。兵庫県保健医療部には公衆衛生に関心を持ち、意欲のある方が活躍できる舞台がたくさんあります。その舞台の主役になってみませんか。
※掲載されている医師の所属は2024年8月時点のものです。