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救急医療中止から復活へ! 生まれ変わった三重県立志摩病院が実践する、地域を越えた地域医療

取材日:取材日:2018年3月12日(エムスリーキャリア編集部)

県立志摩KV

 県内の医療圏で最も人口あたりの病院数が少なく、医療資源も豊富とは言えない三重県志摩市。この地域において、起死回生を成し遂げたのが三重県立志摩病院です。同院はかつて、内科医不足から救急医療を中止せざるをえず、病院機能の縮小が危ぶまれていました。その窮地から脱し、地域医療の中核を担う病院として再生できた理由とは。その裏側に迫りました。

立ち行かぬ救急医療…医療崩壊に歯止めをかけるために

 「このままでは、この地域の医療は崩壊してしまう」

 2012年、こんな声が各所から聞かれるほど、同院は危機的な状況にありました。志摩医療圏唯一の県立総合病院として地域になくてはならない役割を果たしてきた一方で、院内では医師数が一気に減少し、現場への負担が増加するという事態に。その影響から、医師の退職もさらに加速してしまう悪循環が続いた結果、救急部門を閉鎖せざるを得ないところまで追い込まれたそうです。

 同院が救急医療を止めてしまえば、地元の救急患者は車で40分程度かかる医療機関を受診しなければならなくなると、住民からも病院再建を求める運動が巻き起こりました。とはいえ、この苦境を打破することがそう簡単でないことは、誰の目にも明らかでした。そこで当時の経営層は、「地域医療振興協会に病院の経営・再建を委託する」という一大決心を下します。地域医療振興協会は、自治医科大学の卒業生が中心になって設立した、いわば地域医療のスペシャリスト集団。2012年4月に地域医療振興協会から管理医師として抜本的な経営改革を任された片山繁先生が、地域医療の生命線である救急医療を立て直すために打ち出したのは、「若手医師を志摩病院に呼び込む」というアイデアでした。

管理医師 片山繁先生
管理医師 片山繁先生

「地域医療振興協会傘下の医療機関に所属している後期研修医に、地域医療研修先として選んでもらう体制を構築しました。まず始めたのは、研修医を呼び込むために必要な志摩地域と当院ならではの魅力を協会に提示することです。そこでわたしは、志摩市の高齢化率が37%と全国平均を大きく上回っている状況と、長年地域を支え続けてきた当院の能力に目を付けました。10~20年先に都市部で起こりうることが既に起きているため、今後の日本に求められる医療を既に取り組んでいる地域だと言える。課題先進地域の中核医療機関あり、最後の砦として地域医療を一手に担う志摩病院で地域医療について学べることは、若手医師にとってよい経験になるはずだと確信しました」(片山繁先生)

 片山先生の「地域医療の研修機関になろう」というアイデアは着実に形になり、成果につながりました。もともと臨床研修病院として、これまでも数々の医師を輩出してきた同院。年数を重ねるにつれ、屋根瓦式での教育が進んでいったこと、そして指導医層も徐々に増加したことから、わずか3名だった内科医も2017年度には12名までに増え、救急医療の復活を果たしました。

研修連携施設は全国最多⁉様々な環境をクロスしながら学べる

 片山先生の発案から、地域医療を支えるために地域を超えてネットワークを拡大してきた同院。その恩恵を受けているのは病院と勤務医だけではなく、研修医も例外ではありません。地域医療振興協会傘下の医療機関だけでなく、初期研修では県内全ての基幹型初期臨床研修病院提携しているMMCプログラムの施設にもローテーション可能。地域医療振興協会とMMCプログラムの連携医療機関を合わせると、ローテーションできる施設の数はおよそ90を超え、全国最多を誇っています。実際に同院を初期研修先として選んだ日比亨先生は、選択肢の幅広さに満足しているようです。

※県内にあるすべての基幹型初期臨床研修病院が提携・協力している三重県独自の研修プログラム。

「連携医療機関が多いことのメリットは、大いに実感しています。地域医療については山間部や海沿いの病院や診療所で深く学べましたし、救急対応も連携先である東京の急性期病院で数多く経験できました。特に都心部の病院で経験した研修は忘れられません。疾患や治療方法をロジカルに説明する仕方を指導医の先生から具体的に教えてもらえたおかげで、患者さんへのプレゼンに対する苦手意識も克服できました。

 また、外部の施設で研修を受けられることに加え、県立志摩病院では院外の医師からも学ぶことができます。出身大学の異なる医師が集っていますし、外部の病院からも多くの先生方が来院されていますので、手技・症例についての知識や医師としての考え方、病院ごとの文化など、一つの病院だけでは知ることができない多種多様な情報を得ることができます」(日比亨先生)

 

初期研修2年目 日比 亨先生
初期研修2年目 日比 亨先生

 院内外・県内外と繋がれる同院の環境は、初期研修医に限らず総合診療や地域医療に興味のある医師も惹きつけています。地域医療振興協会グループの東京ベイ・浦安市川医療センターと当院のたすきがけプログラムに所属する稲田崇志先生もその一人。稲田先生は、同院の地域医療を学べる環境についてこう話します。

「これからの高齢者社会で必要なスキルが得られていると実感しています。東京ベイ・浦安市川医療センターでは都市部でしか診療を行っていませんので、へき地で高齢者医療・地域医療を提供する上で求められている“家庭環境や地域の特性まで把握するスキル”を身に付けられる機会はそうそうありません。それを短いローテート期間であっても深く学べるのは、県立志摩病院が長年地域医療に向き合い、知見を積み重ねてきたからこそだと思います」(稲田崇志先生)

次なる目標は医師に長く働いてもらうための職場づくり

 課題先進地域である志摩市において、危機的な状況から一転、全国各地に拡がる地域医療振興協会のネットワークを活かした医師体制の構築に成功した同院。同院が目指す次の目標は、志摩地域に腰を据えて活躍する医師を増やすことです。そのため最近では、医師をサポートするためのスタッフの採用や働きやすい環境作りにも励んでいます。事務作業は医療クラーク、退院時支援はソーシャルワーカーに任せられる環境を整えたことで、医師が診療に専念できる体制を構築。さらに、2016年には院内保育所を完成させ、時短勤務の要望にも応えています。その活動が評価され、2017年には「女性が働きやすい医療機関」として行政から認証されました。

院長 勝峰 康夫先生
院長 勝峰 康夫先生

「当院は長年医師不足に悩まされてきました。今では当時の教訓を活かし、医療クラークやメディカルソーシャルワーカーの採用を積極的に行うことで、医師がオーバーワークにならないよう配慮しています。また、これから地域包括ケアシステムの構築を当院が主導していくなかで、全てを医師に任せっきりにすると医師に負荷がかかりすぎてしまいます。そのため、当院では医療連携室が積極的に外部の医療機関と接触を図り、連携することで効率良い地域医療の実践と負荷の分散を図っています」(勝峰康夫先生)

手技・知見の循環から、地域医療の発展に貢献

 医師の確保と、医師が安定的に働くための環境改善に取り組んでいる同院は、並行して機能面の充実にも力を注いでいます。65歳以上の患者が多い地域特性に応えるべく、地域包括ケア病棟の導入や、介護や訪問診療を実施していくために必要な他職種連携の推進などを積極的に実施してきました。救急の中止に追い込まれた以前の状態とは打って変わって、未来志向の改革を進める同院にはどのような医師が求められているのか、そしてどのようなことを医師に期待しているのか、最後に片山先生に伺いました。

「救急医療が復活したのも、新しい取り組みができるようになったのも、三重県内のみならず全国各地にネットワークを広げられたから。そんな当院だからこそ、若手医師には志摩地域で得た学びを他地域で活用したり、他地域で得た学びを志摩地域に持ち帰ったりなど、知見を循環させて地域医療の発展に寄与してほしいです。

 また、指導経験をお持ちの先生にも当院に来ていただき、ご自身のノウハウを次世代へと継承して欲しい。志摩だけでなく日本の地域医療の発展に貢献できる仕事には、大きなやりがいがあるはずです。この志摩地域から、どこで何が起きても対応できる医師を1人でも増やしていければ本望ですね」(片山繁先生)