求めるのは緊急時も率先して動ける骨太な医師
東京都立病院機構は東京都が設置する地方独立行政法人として、2022年7月にスタートしました。高度かつ専門的医療を担ってきた都立病院と、地域医療を強みとしてきた公社病院がそれぞれの機能を生かしつつ、一つのメディカルグループとして密接な横連携が実現。同機構法人本部の廣部誠一理事は「14病院が一体となったスケールメリットを最大限に引き出し、都民の誰もが質の高い医療を受けられ、安心して暮らせる東京の実現を目指します」と話します。
![廣部誠一理事](https://career-review.s3.amazonaws.com/images/featured_articles/project/tmhp/dr_hirobe.jpg)
「都立病院の役割には「行政的医療」「地域医療の充実への貢献」「災害や公衆衛生上の緊急事態の対応」という3つの柱があります。「少子高齢化が進み、働き手が減少する中、災害や新型コロナウイルス感染症など緊急事態への対応は、もはや一医療機関での対応は困難です。都立病院の医療資源をフル活用し、緊急時も東京都や地域の医療機関と連携しながら、率先して対応できる骨太の組織体制を構築しました」(廣部誠一理事)
そうした背景から、同機構で働く医師には高度な専門性はもちろん、総合診療能力も求められます。加えてライフスタイルという観点において、医師にとっても育児や介護は重要な問題ですが、ライフステージに応じて転職先を探さなくとも、機構内の異動であれば、生涯給与や退職金を減らさず、東京都で安定して長く働くことができるでしょう。廣部理事は「入職後、若手医師が着実にステップアップできる研修制度や、人材育成の仕組みづくりも強化しました」と胸を張ります。
平時においても感染症、小児医療、周産期医療、精神科医療など、他院では受け入れ困難な医療を安定的に供給することも重要な役割の一つ。
「現在、特に人材を必要としているのが小児科、麻酔科、循環器内科です。入職の入口を、これまで以上に広げていますので、安心して仲間に加わってください」(廣部理事)
仕事も子育ても研究も無理なく両立
現在、最も積極的に募集を行っているのが小児科です。豊島病院に大学の医局人事で入職して以来、同院で長年勤務する村野弥生医師は、2021年10月に小児科医長へ昇任。仕事と子育てを両立しながら、キャリアアップを実現しています。
![村野弥生医師](https://career-review.s3.amazonaws.com/images/featured_articles/project/tmhp/dr_murano.jpg)
「豊島病院は地域に根差した病院で症例数が多く、小児科医として必ず経験しておきたい基本的な疾患はほぼすべて診ることができます。一方で、日本大学医学部附属板橋病院や帝京大学医学部附属病院といった三次救急施設が近隣にあるため、地域内での医療のすみ分けが明瞭で、子育て中でもオンオフの切り替えがしやすい環境です。当直は月4回程度ありますが、日常診療の他に、自分の興味のある学びに費やす時間を確保できる点もやりがいにつながっています」(村野弥生医師)
大学の研究室に通う人、地域や実家のクリニックを手伝う人など、学びの内容は十人十色。村野医師も社会人大学院で公衆衛生学を学んだり、研究費の補助を受けながら複数の論文を発表したり、自己研鑽にも積極的です。
「当院は学閥もありませんし、この規模の病院だからこそ、他科の医師やコメディカルとの関係も良好です。そういったコミュニケーションが取りやすい点も働きやすさの一因で、医療関係者や患者さんの保護者の方々との対話から研究テーマがひらめくこともあります」(村野医師)
一つの医療機関で長く働くメリットについて村野医師は次のように語ります。
「この病院で生まれたお子さんや病気を抱えた子どもに長く寄り添い、成長を見守っていけることが一番の魅力です。そうした医療に興味がある方なら、どなたでも歓迎します」(村野医師)
患者を中心にしたチーム医療にやりがい
小児科同様、同機構で現在積極募集をしている麻酔科。江村彩医師は2012年に研修医として多摩総合医療センターに入職。以降、長期にわたり同センターの麻酔科医として活躍しています。
![江村彩医師](https://career-review.s3.amazonaws.com/images/featured_articles/project/tmhp/dr_emura.jpg)
「多摩地域の基幹病院である当センターには、複数の合併症をお持ちの方をはじめ、ハイリスク妊娠や精神疾患を抱えた方など、他では受けてもらえない患者さんが多く集まってきます。多くの症例を幅広く経験できる環境は、麻酔科医にとって大きな利点です」(江村彩医師)
研修医時代から一貫して、幅広い症例を経験したいと望んでいた江村医師には理想的な職場である反面、経験値が上がるにつれ、苦手意識のある診療科も出てくると言います。
「個人的には心臓や呼吸器、産科の手術はとても難しいと感じるのですが、1人で乗り越えるというよりは、その分野を得意とする上級医に相談し、緊急時はサポートを受けながら成長できる環境です。麻酔科医として10年目になりますが、上級医の助言は心強く今でも頼りにさせていただいています。今後は自分が後輩の助けになることが目標です」(江村医師)
特定分野の専門性を極めたい場合は、各指導医から直接指導が受けられる。あるいは機構の強みを活かし、機構内の医療機関で興味のある分野の研鑽を積み、再び同センターに戻ることも可能。「一つの専門を極めるというよりは、広く対応できる麻酔科医を目指したい」と話す江村医師は、最近ペインクリニック外来の診療も始めたそうです。
患者中心の姿勢を大切に、患者にとって最善の治療をチームで相談しながら対応する同科。
「自由度が高く、新しい取り組みを受け入れやすい雰囲気で、ベテラン医師の転職も歓迎です。麻酔科は縁の下の力持ち的なところがありますが、上の先生方は、ここで働くすべての人が幸せになるにはどうしたらいいかを常に考えてくださいます。仕事が負担になるのではなく、楽しみながら医療に貢献したい方には最高の職場です」(江村医師)
実力をつけたい医師こそ自由度高く挑戦を
循環器内科医として墨東病院で勤務している大橋浩一医師も、研修医時代に機構に入職し、継続勤務をしている一人。「実家が墨東病院の近くで、昔から何かあった時にかかる身近な病院でした。地元の病院で地域医療に貢献したいという思いがあって、迷わず研修先に選びました。専門は循環器内科ですが、元々救急医療にも興味があり、地域の三次救急医療施設として24時間体制で重症患者の治療を担う点も魅力でした」と入職当時を振り返ります。
![大橋浩一医師](https://career-review.s3.amazonaws.com/images/featured_articles/project/tmhp/dr_ohashi.jpg)
「研修プログラムに融通が利く点もメリットだった」と話す大橋医師。心臓の超音波検査・治療、心臓弁膜症のカテーテル治療で有名な病院で経験を積んだことが、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の院内立ち上げにつながったと言います。
「TAVIの導入は都立病院では初の試みでした。当時の部長とともに、各部署のスタッフにこの治療がいかに画期的で素晴らしい治療かを説明するには時間も労力も必要でしたが、診療科や職種を超えた理解・協力を得て実現に至ったことで、自分も成長できました」(大橋浩一医師)
墨東病院にはさまざまな合併症を抱えた高齢者も多いそうです。
「心臓だけを治してもあまり意味がなく、健康に長生きするための全身的なサポートが不可欠です。心臓以外の知識や手段が必要で、私にとっては難しくもあり、やりがいも感じています」(大橋医師)
日々やりがいある診療に向き合う中で、大橋医師は2020年2月に育児休業を2週間取得。「医師の妻と一緒に試行錯誤しながら、子育てについて話す時間はとても貴重だった」と言います。2023年7月には同科医長に昇任。病院をより良くしたいと考える同世代の同志が各部署にいること、加えて医長同士でコミュニケーションが取りやすいことは、一つの病院に長くいる利点であると話します。
「東京都内にありながら、育休も含めてこれほど働き方の自由度が高い病院はそうはありません。もちろん自由の裏返しとして、やりたいことを自分で探して動くマインドは必要です。とにかく症例数が多いので、実力をつけたい医師こそ、働いてみる価値があります」(大橋医師)
ジェネラリストからスペシャリストまで、良い人材が集まる理由
機構には都立病院14病院が一体となって提供する「東京医師アカデミー」という臨床研修システムがあります。コンセプトは「総合診療能力を備え、質の高い専門医を育成すること」。14病院で7000床を超えるスケールメリットによって、豊富な症例を幅広く、より深く経験できます。さらには、多くの優秀な指導医や仲間に出会うことで、自分の未来のキャリアパスにも出会えるチャンスも。
![東京医師アカデミー](https://career-review.s3.amazonaws.com/images/featured_articles/project/tmhp/image_academy.jpg)
同アカデミーの顧問で、都立小児総合医療センター名誉院長でもある廣部理事は、「2008年の開講以来、毎年全国から約100人が入講し、常時約300人の若手医師が専門研修に励んでいます。また、研究を充実しなければ、良い医師や患者は集まりません。都立病院の医療ネットワークを活用し、大規模かつ革新的な研究プロジェクトを推進して、医療者の専門性向上と患者の健康の向上の両方を目指します」と話します。
![T型人材](https://career-review.s3.amazonaws.com/images/featured_articles/project/tmhp/image_T.jpg)
東京を医療で支えることをミッションとする機構が必要とする人材は、多少のことでは倒れない筋肉質な「T型人材」です。
「Tの文字の縦棒は専門性、横棒は総合力、横連携を表しています。T型人材はその両方を備えた人材で、チーム医療に必要不可欠です。当機構では多様な研修、多くの指導医、仲間との交流、多職種連携での経験などを通じて、T型人材の人間力を育成していきます。全国の医師の皆様が、当機構の一員として腕を磨かれることを心から期待しています」(廣部理事)