訴訟リスクを下げる医師の心得【救急科の魅力とキャリア Vol.3】

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訴訟リスクを下げる医師の心得

訴えられる理由は「医療の内容」ではない?

なぜ患者さんたちが訴訟を起こすかというと、医師の態度が悪いからです。つまり、医療の内容ではなく、医療を提供するときのコミュニケーションの取り方が悪くて訴えられるのです。メラビアンの法則によると、コミュニケーション上で相手に影響を与える要素は、外見55%、声質38%、内容7%です。患者さんと話すときは内容だけでなく、立ち居振る舞いや外見、声の使い方にも十分に気を配ってください。

知識や技術だけでなく、心も育てよう

誤嚥性肺炎と心不全で88歳の患者さんが来たとしたら、誰が主治医になりますか。誤嚥性肺炎だから呼吸器科でしょうか。それとも心不全だから循環器科でしょうか。どちらの科も「うちの科じゃない」と言って、とりあえず総合診療科に受け持ってもらう―。大学病院や研修病院では珍しくない光景ですね。

ところがもしも、この患者さんが自分の祖母だったらどうしますか。誰も積極的に診てくれないのは悲しくないですか。同じことを患者さんの家族も思っています。この気持ちを忘れないでほしい。研修では知識や技術だけでなく、自分の心も育ててください。そういう医師を、患者さんやその家族は信頼するようになります。

患者を社会に戻すところまで考える

誰かに押し付けるのではなく、責任を持って患者さんを診てください。それは単に治療すればいいというわけではありません。その患者さんをどう社会に戻すのかまで考えないといけません。どのように自宅や施設へ戻すのか、訪問看護や在宅医療へどう橋渡しするのかといったことは、病院の外にある“社会資源”を知らないとできません。
逆に言えば、それを知っていれば大学病院でもうまく逆トリアージができます。「患者を抱えたら死ぬまで俺が主治医だ」なんてことは、絶対にありません。「患者さんに最高の予後を送ってもらうために、自分に何ができるのか」といった視点で勉強すると、みんなハッピーになれますよね。

ここまで、救急科について紹介してきました。次回からは2回に分けて、初期研修における研修医の心得を伝授します。