2005年を境に起こった劇的な変化
今まさに、“総合内科の時代”に突入しています。2005年を境に、人口動態に劇的な変化が起こったからです。15-64歳の生産年齢人口がはっきりと横ばいから減少に転じています。さらに、年少人口(14歳以下)と老年人口(65歳以上)の逆転が決定的になりました。そこから両者の隔たりは増す一方です。
図1 国立社会保障・人口問題研究所の資料より
また、図2を見ていただくと、高齢者は地方でも増えているのですが、特に都市部において急激に増加していることが分かります。
図2 国立社会保障・人口問題研究所の資料より
わたしたち臨床医は、この大きな変化に適応していくことが求められています。なぜなら、この人口動態の変化は、社会の疾病構造の変化を意味するからです。
それでは、この変化に適応するにはどうすればいいのでしょうか。先ほどお伝えしたように( 総合内科の魅力とキャリアVol.1参照 )、臨床医学のコアとなる全人的医療を行える医師が必要です。これまでの医療は、基本的には元気な若者が多い社会の中で、一つの臓器に着目してフォローしていくアプローチをしてきました。しかし、現代では80-90歳の高齢者が珍しくなく、一つの臓器だけではなく、多臓器において病気にかかるようになっています。これには、総合的なアプローチが必要になってくるわけで、総合内科の出番がますます増えていくことになります。
医師が高齢になっても地域ニーズに応じ続けられる
総合内科医というキャリアにおけるもう一つのポイントは、医師自身が高齢になっても、現場第一線で働き続けることができるということです。
先ほどは患者の高齢化について言及しましたが、医師も同様に高齢化していきます。わたしは50歳になりましたが、同年代の医師の半数はクリニックを開業しています。
下図を見ると、われわれ医師も年齢とともにキャリアを変えていくことがわかります。30歳以降は年齢が上がるにつれ、青い部分が示す病院や大学附属病院などでの勤務医が減り、黄色で示されている開業医の比率が高まります。開業医は60歳になっても、まだあと20年は現場で働けています。ただそのとき、手術やカテーテルをたくさんこなすというよりは、おそらく問診やフィジカルアセスメントなど、患者さんとコミュニケーションすることに比重が置かれるのではないかと思います。
そう考えると、診断が強みの総合内科は、高齢になっても第一線で働ける分野なわけです。
総合内科はどこででも活躍できる
総合内科のキャリア上の魅力として、年齢を選ばないことを説明しました。もう一つ、場所を選ばないことも挙げられます。
もし皆さんが、10年、20年診療して、ある時ふと「沖縄の離島の診療所で働きたい」と思ったら、果たして行くことができるでしょうか。わたしは沖縄にいたとき、離島にある診療所の医師に休みが必要だということで、診療所への応援に行っていました。
「離島だからどんな患者さんが来るかわからない」と心配することはありませんでした。どこに行ってもすぐに実践できるのはジェネラリストの強みです。当然、相応のスキルを身に付けた上でという前提あっての話ですが、場所を選ばないフットワークの軽さは総合内科の魅力ですね。
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