オスラー先生の言葉に学ぶ 臨床推論の真髄 明日から役立つ臨床推論!vol.5【総合内科・徳田安春先生】
これまで4回にわたって、臨床推論を行う上での基本的なポイントについて紹介してきました。
「 臨床推論2つのアプローチ システム1とシステム2 」でも触れたように、直感的思考と分析的思考を使い分けることを意識して、研修に励んでいただきたいと思います。右脳と左脳、両方合わせていかないと、パフォーマンスインプルーブメントにはつながりません。
バイアスに気をつけ、尤度比などを用いる分析的スキルを磨く一方で、様々なクリニカルパールを身につけて、直感的思考を鍛えてください。クリニカルパールは指導医の先生から聞くのでも、文献を読むのでも、自分で編み出すのでもいいでしょう。これまで蓄積されたノウハウを受け継いでいくことはとても重要ではないかと思います。
オスラー先生の言葉に学ぶ
Medicine is a science of uncertainty and an art of probability
(医学とは不確実性の科学であり、確率の技術である)
今から約100年前、医学教育の基礎を築いたウイリアム・オスラー先生が残したこの言葉は、たったワンセンテンスではあるものの、臨床推論の本質をついているように思います。オスラー先生は、医師の能力として、「沈着冷静な姿勢に勝る資質はない」とし、次のようにも述べています。
最後にみなさんに、この言葉を贈って「明日から役立つ臨床推論」を終わりにしたいと思います。是非勉強を進めて、臨床推論に挑んでください。
「沈着な姿勢とは、状況のいかんに関わらず、冷静さと、心の落ち着きを失わないことを意味する。嵐のまっただなかでの平静さ、重大な危機に直面した時に下す判断の明晰さである。何事にも動じず、感情に左右されないことである。時として誤解されることもあるが、沈着な姿勢は人々から感謝されるであろう。
不幸にもそのような資質を欠いた医者、優柔不断で、いつもくよくよし、それを表面に出す医師、緊急事態に狼狽し、取り乱す医師、こういう医師はたちどころに患者の信頼を失うことであろう。…この沈着な姿勢を完璧なものにするためには、幅広い経験と疾患の諸症状についての詳しい知識が必要である。」
(『平静の心・オスラー博士講演集』日野原重明訳)