後輩医師が自殺した。あまりにも急で、悲しい知らせだった。学年は随分下だったが、共にスタジオに入り音楽をやって、仲良くしていた仲間だった。
どうして相談してくれなかったんだろう。なぜ?なぜ?わたしがもっと気にかけて話を聞いてあげていたら、死を選ばずにすんだのでは?
気持ちが整理できないまま月日が経っていった。その後も、2人の後輩医師が自殺。一体どうして?わたしの中で、疑問はさらに大きくなっていった。
自分のことを振り返れば、離婚を目前に控えた卒後4年目の頃、わたしは自身が抱える問題について誰にも相談できずにいた。元夫とは同じ医局に所属していたため、同僚には口が裂けても家庭の問題を持ち出せないと思っていた。反対を押し切って上京した手前、親にも言えない。その上、当時は後期研修で忙しく、友人ともなかなか連絡が取れない。八方塞がりとはこのことだ、と思った。
卒後6年で退局し、7年目からフリーランスとして勤務することになった。親類に医師がおらず医局員としてのキャリアしか知らなかったわたしは、退局してフリーになることがとても怖かったし、社会に投げ出される不安でいっぱいだった。しかし、いざフリーになってみると、勤務時間が減ったことで勉強時間が確保できるだけでなく、仕事中は全力で取り組めるようになり、効率も上がった。同じような形態で働いているドクターは複数いた。怖がらなくて良かったのだ。こんな働き方、誰も教えてくれなかった。医学部は専門学校みたいなものなのに、どうしてキャリア教育がないのだろう?