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企画記事 転職ノウハウ

「雇われ院長」のメリット・デメリット―医師の転職カルテvol.23


2021年1月12日(エムスリーキャリア編集部)
記事KV

クリニックでは院長職や施設管理者、いわゆる「雇われ院長」を募集することがあります。クリニックで働く勤務医になりますが、病院勤務医とは異なるメリット・デメリットがあることをご存知でしょうか。今回は雇われ院長ポジションの特徴とその転職事例について詳しくご紹介します。


一長一短「雇われ院長」の実態

「雇われ院長」とは、クリニックの常勤医師求人で「院長」や「管理医師」、「施設管理者」といったかたちで募集しているポストのことです。雇われ院長を招聘したい医療機関の背景は、経営母体から分院を新規開設する、運営の体制変更に伴い人事を刷新する、現院長が別院開業や退職のため後任を募集する――といったケースが多いようです。

医師にとって、雇われ院長として働くメリット・デメリットは次のような点です。


メリット

  1. 開業希望の場合、初期投資不要で経営ノウハウが学べる
  2. おおむね、病院勤務医の時より給与は高い
  3. 当直、夜間・休日の呼び出しがない
  4. 給与や待遇が、来院数の多寡にあまり左右されない

デメリット

  1. 行政上の管理責任が生じるため、経営破綻等が起こった場合は責任を負う必要がある
  2. 院内設備や医療機器購入の権限、人事権がない場合がある
  3. 診療以外の業務(労務管理、医師会への参加等)が増える可能性がある
  4. 経営者の方針には従わなければならず、意見が合わないと致命的になる

なお、クリニックにおける雇われ院長の仕事内容は、ほとんどが外来患者の診療です。法人によっては、院長に採用や経営管理などを任せるところもあるようですが、近年は診療に専念できるクリニックが増えています。

その他、病院勤務医との違いとしては、幅広い疾患・患者への一次対応が求められる、医局(休憩室)がない、特定の看護師や事務職とのコミュニケーションが密になることなどが挙げられます。


雇われ院長の転職事例

雇われ院長のメリット・デメリットを踏まえると、どのような医師が、どのようなタイミングで働くのに適しているのでしょうか。以下、医師人材紹介会社を利用してクリニックの雇われ院長に転職した事例を紹介します。

Case1

  1. 30代男性
  2. 整形外科
  3. 医局派遣の関連病院勤務医 → 整形外科・リハビリテーションクリニックの院長
  4. 勤務条件:年俸1700万円 週5日/外来/病棟管理 → 年俸2100万円 週5日/外来

    医局人事により、1年限定で関連病院に勤めていたが、「今後は勤務時間を固定して外来中心で働きたい」と思い、その勤務が終わるタイミングで退局・転職を検討。COVID-19の影響で、当初、転職活動は難航したものの、最終的には体制強化のために後任の整形外科医を募集していたクリニックへ入職した。(1)既存施設で.看護師や事務職がクリニックの運営方法を理解している、(2)法人理事長(同じく整形外科)が車で駆けつけられる距離に開院している、(3)院長は診療に専念できる――など、安心材料が多いことも決め手になった。

Case2

  1. 40代男性
  2. 呼吸器内科
  3. 呼吸器内科クリニックの院長 → 呼吸器内科クリニックの院長
  4. 勤務条件:年俸1800万円 週5日/外来 → 年俸1800万円 週4.5日/外来/検査業務

    以前から雇われ院長として働いていたものの、運営法人が変わり、オーナーの意向で新院長の登用が決まったため、やむを得ず転職活動を開始。これまではクリニック経営にも積極的に携わっていたが、今後は診療に集中したい意向があったため、呼吸器内科の専門性が生かせる新規開設クリニックに院長として入職した。新規開設のため、前職で行っていた診療内容や使っていた医療機器の導入など、さまざまな交渉にも柔軟に応じてもらえた。

Case3

  1. 40代女性
  2. 産婦人科
  3. 3次救急を担う医療センターの医長 → 産婦人科クリニックの院長
  4. 勤務条件:年俸不明 週3.5日/外来/健診/当直/分娩/新生児対応 → 年俸1900万円 週4.25日/産婦人科の診療全般

    未就学児2人の子育てのため、総合病院で週3日勤務。数年以内に分娩と産後ケアができるクリニックを開業する意向があったため、「スタッフの採用や診療内容にある程度の裁量権を持てるなら…」と「雇われ院長」を視野に入れて転職の情報収集を行う。結果、開業意向を正直に伝えた上でバックアップをしてもらえる法人に管理者として入職。この医師の着任により、医師不足によって休床していた産科が再開した。

Case4

  1. 30代男性
  2. 耳鼻咽喉科
  3. 大学病院勤務医 → 耳鼻咽喉科クリニックの院長
  4. 勤務条件:年俸1200万円 週5.5日/外来/病棟管理/当直 → 年俸1400万円 週3.5日/外来

    卒後から大学病院で勤務。大学での役職が上がって診療以外の業務が増えてきてしまったことと、時期は決まっていないものの将来的には開業したい思いがあって、「一度クリニックで働きたい」と転職活動を開始。結果、現院長が別の地域で開業するため、その後任を募集していたクリニックに応募し、内定した。コメディカルへの教育や、患者数に応じたインセンティブ制度も整っており、「開業自体は応援するが約3年は勤務してほしい」という条件付きで入職。


「臨床に専念したい」「開業意向がある」医師には有効な選択肢


グラフ4

これまでの転職事例で示したように、臨床に専念したい、あるいは開業のために数年修行をしたい医師には、「雇われ院長」はひとつの選択肢になるでしょう。

特に開業意向がある場合、法人によっては診療報酬で収益を上げるための方法、コメディカルの指導方法といった経営ノウハウを教えてくれるところもあります。

「数年後に開業・退職が決まっていると、選考上不利になるのでは」と不安を抱く方がいるかもしれませんが、雇われ院長を募集する法人の中には、診療・経営に対して意識が高い開業意向のある医師を評価し、期間限定という希望を踏まえて採用を決めるところも多くあります。

なお、開業前に雇われ院長として修行を希望するのであれば、30代後半から40代が最適な時期と言われています。自身で開業する場合は何歳でも問題ありませんが、「雇われ」の場合は、法人からの指示に柔軟に対応できるか、組織に馴染めるかも重要なポイントになるからです。自身のタイミングや希望が合い、メリットがデメリットを上回ると納得できるのであれば、「雇われ院長」も検討してみてはいかがでしょうか。