「女医さんで良かった」
患者さんからのこの言葉を、心からうれしいと思えるようになるまで長い時間がかかった。
女子高から、男子が圧倒的多数の別世界である医学部に飛び込み、戸惑いだらけだった大学1年生。それから年を追うごとに男性の多い世界に慣れていったが、病院実習に行っても、卒業しても男性が多い。そんな中で目につくのは、男性にはできても、女性には難しいことばかりだった。
解剖学的に言っても男性は筋肉量が女性よりも多く、圧倒的に体力が上回る。
そんな事実は認めたくなくて、「わたしだってやればできるもん!」と突っ走った医局時代。
でも、体力は男性にかなわない。そして、女性には必ず月経周期がやって来る。いつもフラットに仕事ができるわけではなく、PMSで感情に波があったり体が重怠かったり、月経困難があると人によっては痛すぎて失神するくらいだ。しかし「だから女って」と言われたくないから必死で頑張る。毎日全力で走って息を切らしている状態だった。そういうひずみは必ずどこかに出てくるわけです。どんなひずみかって?化粧をしなくなる。オシャレをしなくなる。仕事着のまま病院と家の往復をする。言い方がきつくなる。笑わなくなる。動きがガサツになる――。