わたしが耳鼻咽喉科医になるのを決めたのは医学部5年生の時。
薬剤師の両親から「医者になりなさい」と言われて医学部に行ったものだから、そこに自分の意志はなかった。それでも一生懸命やれば勉強はなんとかできたし、医学の理屈がわかれば面白かった。
ただ、5年生で病棟に出たとき、現実に直面した。自分の長い人生を加味して考えると、仕事だけでなく、結婚や子育てなどの家庭生活との両立を願う気持ちが大きくなったのだ。正直、何科を選んでも良かったのだが、「学問として面白いかどうか」だけで専門科目は決められないと愕然とした。
うまくいけば24才で医学部卒業。それから80~90才まで医師をすることになる。親に言われたからという理由だけで医師になったら、途中で仕事を辞めたくなるのではないか。かといって、医師を辞めたところで、一般常識も無ければ何の技術もないわたしが、一般社会でやっていけるわけがない。このままでは人生やばいかも。大きな不安が襲ってきた。
趣味と関連した仕事なら、ずっとやり続けられるかもしれない!苦肉の策でひねり出した。わたしの趣味は、バスケットボールと音楽。バスケだったらスポーツドクター?でも、整形外科はわたしには難しい。音楽だったら歌い手さんの助けになれたら楽しいかも。声?耳鼻咽喉科?耳鼻咽喉科は、授業でも実習でもまったく興味は持てなかったが、ナシではなかった。こうして耳鼻咽喉科医になることを決めた。