医師の転職において最も難しい局面とされているのが、現勤務先との退職交渉です。今回は、後腐れなく退職を進めるためのポイントを解説します。
医師の転職において最も難しい局面とされているのが、現勤務先との退職交渉です。今回は、後腐れなく退職を進めるためのポイントを解説します。
医療機関にとって医師は、診療の中核を担う重要な存在。ケースバイケースとはいえ、退職の申し出をしても一度は引き留めにあうのが一般的です。退職の意を伝える局面では具体的に以下のような言葉で、引き留められるケースが多いようです。
このように責任感に働きかけられる状況は、医師にとっても心理的負担が大きいもの。
中には、劇的な待遇改善を約束された結果、残留に至ったり、非常勤で週1日程度働き続けたりして関係を維持しようとするケースもあります。残留を検討するのであれば、「人事担当者のメンツのための引き留めではないか」「約束が反故にされる懸念はないか」「一度退職の申し出をした中で働きづらくないか」を見極めましょう。
引き留めにあうのは、それまで多大な貢献をしてきたと認められた証。現勤務先としても、「患者さんに迷惑を掛けないように」「先生の人生のために」という素直な気持ちで引き留めに至っている場合が多く、半端な気持ちで退職交渉に臨むとかえって迷惑をかけてしまう可能性もあります。「そもそも辞められないのではないか」と不安に思う医師もいらっしゃいますが、原則として雇用契約なので、退職する権利がある点は心に留めておきましょう。「いくら引き留められても気持ちは変わらない」という場合は、次に紹介する3つのポイントを踏まえて、退職の意を真摯に伝えることが大切です。
原則として退職の申し出は、直属の上長にストレートに申し出ましょう。上長や院長との話がまとまるまでは、同僚の方には話さないことが賢明です。「あの先生が辞めようとしている」という話が広まると、現場の士気を下げてしまいかねませんし、万が一、上長に申し出る前に退職の話が伝わってしまうと、転職自体がしづらくなることも考えられます。過去の退職者の事例や職務規定も確認した上で、万全を期して行動するのがポイントです。
責任感に訴え掛けられるような言葉で引き留められると、思わず閉口してしまう医師も。その結果、なかなか自分の気持ちを伝えきれず、「退職理由を説明するために何度も機会を設けなければならない」という状況に陥ることが珍しくありません。その場の雰囲気に負けず、しっかり意思を伝えるようにしましょう。
転職活動では、在職期間中に転職先となる医療機関を探すのが一般的。転職実現の目途がついてから、“決定事項” として退職の意向を伝えることで、確実に転職を進めようというケースが多くなっています。
転職理由を伝える際は、現職への不満ばかりを言い連ねないよう配慮が必要です。
「逃げの転職をしようとしている」という印象がある退職者を、現勤務先としては素直な気持ちで送り出しにくいもの。「待遇改善などで解決を図れるのでは」「このまま転職してしまうのは、先生の人生にとって良くない」と心配され、より強く引き留められることが想定されます。
将来に対する明るい展望を描けていない状態で「退職したい」と言っても、現勤務先はもちろん、家族や周囲の人を納得させることは困難です。本気で転職するのであれば、「なぜ転職しなければいけないのか」「次に何をしたいのか」を明確にし、前向きな姿勢で医局長・診療部長といった上司に掛け合うことが必要です。
在籍してきた医療機関を去るのは、非常に体力のいるもの。退職交渉をする中で、思わぬ人から高い評価をしてもらえたり、熱を持った言葉をかけてもらえたりしたことで、“自分がしてきた貢献”を実感する医師も多いようです。
さまざまな思いが交錯するのが退職交渉ですが、だからこそ意識すべきなのは「なぜ、自分が転職を決意したのか」という原点の思い。感謝の言葉を伝えつつも、将来どうなりたいのかをしっかりと伝えましょう。ともに働き続けられなくなったとしても、恩返しができなくなるわけではありません。お世話になった方々のためにも、新天地でしっかりと自己実現を行う決意を持つことが大切です。