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企画記事 転職ノウハウ

学会で見かける「本当に残念なスライド」とは
医師が知っておくべきプレゼン術vol.1


2018年9月25日(村上大道)

 みなさん、はじめまして。中部徳洲会病院集中治療科の村上といいます。突然ですが、読者の先生方は、プレゼンテーションはお得意でしょうか。医師であれば、学会はもちろん、カンファレンスや市民公開講座など、プレゼンの機会が数多く存在します。そのときに、どうしたら効果的に伝えることができるのか。私自身数多くの試行錯誤を重ね、得られた知見を集中治療医療安全協議会(CCPAT)で若手医師たちに伝授してきました。
 そこで今回から『プレゼン術』として、4回ほど連載させていただきます。初回のテーマは、ちょっと残念な感じのするスライドについて。学会シーズン間近ですので、何らかの参考になれば幸いです。

医師の日常は、プレゼンだらけ


 まず、一口に『プレゼン』と言っても、発表の場や目的によって若干の違いがあります。個人的には、医師が行うプレゼンは大きく2つに分けられると思っています。「学会での発表」と「学会以外」(カンファレンスや市民公開講座など)です。

医師が知っておくべきプレゼン術01

 学会での発表では、スライドの作り方や話し方に一種の定型フォームのようなものがあり、ここから逸脱すると、会場で浮いてしまいます(笑)。学会発表となると聴衆のリテラシーや意識も高い文、「発表の仕方」というより、「発表の内容」に注目が集まる点も特徴と言えるでしょう(余程大きなミスをしない限り、ですが)。要するに、目新しい内容を盛り込んでさえいれば、きちんと注目してもらえるということです。勿論、さらに効果的なプレゼンにするためのテクニックは幾つかあるのですが……。

 一方、「学会以外」のプレゼンでは、スライドの構成や話し方の自由度が格段に上がります。しかしそれは、人を惹きつけるようなプレゼンと、残念ながらそうではないプレゼンの差がはっきり出てしまうことを意味しています。

 この2つのプレゼンは全くの別物なのかと言えば、そうではありません。同じ『プレゼン』である以上、共通点があります。その共通点の1つが「スライドを作成し利用する」ということです。そして、この段階で既に残念なプレゼンになっている例が非常に多いのです。

「本当に残念なスライド」とは?


 どのようなスライドが残念なスライドなのか?例えば、フォントの種類や大きさが合っていない、背景の選択ミスでスライド自体が見難い、使っている色が多すぎる、アニメーションが多いなどがそれに該当します。ただ、これらはちょっと意識するだけで容易に改善が可能です。修正も容易な分、指導医やプレゼンテーションに長けた同僚から指摘があるかもしれません。そう言う意味では、「残念なスライドとして初歩の初歩」と言えるでしょう。

 では、「本当に残念なスライド」とは一体どんなスライドなのでしょうか。それは情報量が多すぎるスライドです。残念なスライドの筆頭は、一枚のスライドにこれでもかと言った感じで情報が詰め込まれているスライドなのです。そして、熱心にスライドを作成するあまり、このミスに陥る演者は非常に多くいます。善意が仇となるタイプといえるかもしれません。

 なぜ、情報が多すぎるスライドはいけないのか。まず考えていただきたいのは、スライドは何のために存在するのかということです。プレゼンにおけるスライドは決して主役ではありません。大切なことは、『何をどのように伝えるか』。スライドは、セミナーや講演であれば、最後の”take home message”を伝えるための、学会発表であれば、得られた知見を効果的に理解してもらうためのツールに過ぎないのです。「そんなことわかってるよ」とおっしゃる方もいるかと思います。ですが、もう一度ご自身が作成されたスライドを次のような視点で見ていただきたいのです。

スライドは「道具』であって、「資料』ではない


 情報が多すぎるスライドとして挙げられるのが、『資料』として見られることを前提に作成されたスライドです。
 学会発表のスライドで言えば、非常に詳細な現病歴がスライド2枚に渡っているケースや詳細な血液検査データなど。また非常に長い治療経過を時系列やグラフで表現するのもこれに該当するでしょう。正確を期すためには、全てきちんと記載すべき……と言う方もいるかと思います。ですが、学会発表であれば、時間はせいぜい5分。聞き手の皆さんは、本当に全てを見ているでしょうか。例えば、血液検査などは診断のポイントになる部分だけ拾っているかもしれません。『伝えたいことを、しっかり伝える。』というプレゼンの基本に立てば、病歴や血液検査データなどは重要な部分にしぼり、ポイントを整理して発表する方が効果的だと言えるのです。

 気合を入れて準備をすればするほど、「あれもこれも伝えたい」という状況になってしまいがちですが、院内のカンファレンスと違って、学会発表では議論の時間はそれほどありません。質疑応答の時間も長くとも5分程度です。十分な時間が確保された議論を前提にするのであれば、正確なデータが記載された『資料』が必要でしょう。しかし、今必要なのは発表の場において、皆さんが伝えたいことを効果的に伝えるための『道具』。そして、それこそが皆さんが作成するスライドなのです。

「スライド作成の落とし穴」にはまらないために


 効果的なプレゼンを行うための1つのコツは、まず伝えたいことをしっかりと決め、そこから逆算して「道具』としてスライドを作ることです。順を追ってボトムアッップ型でスライドを作成すると、得てして「資料』としてのスライドができてしまいます。是非、「ご自身が何を伝えたいのか」という観点で、一度スライドをつくってみてください。これだけでもだいぶプレゼンが変わってくるはずです。

   次回は、具体的にどのようにスライドを作ったら良いのかについて、お話出来ればと思っています。

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