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医師の脳裏に焼き付く医療ドラマ、その理由とは―医療ドラマ調査(中編)
2020年10月14日(エムスリーキャリア編集部)
m3会員を対象に、医療ドラマについて聞く本シリーズ。中編では、医師455人の医師が回答したアンケート(※)結果に基づき、印象的だった医療ドラマとそれを選んだ理由、ドラマにまつわるエピソードについてご紹介します。
(※)2020年8月29日~9月6日、m3.com会員の医師を対象にエムスリーキャリアが実施
白い巨塔
大阪・浪速大学付属病院を舞台に、次期教授の座を狙う第一外科助教授・財前五郎と、財前の同窓であり、患者を第一に考える第一内科助教授・里見脩二の対立を描く。
主演・田宮二郎版
- こんな世界が本当にあるのかと思っていたら、間近で同じ状況をみて驚きました。(40代/泌尿器科)
- まさに大阪大学で研修していたから。納得できるシーンが多かった。(50代/小児科)
- 田宮二郎の迫真の演技、結果からみれば命を賭したものであったとも思われ、いまだに心に焼き付いています。(50代/内科)
- 衝撃的だった。(60代/糖尿病科)
- 学生時代に小説と田宮二郎のテレビドラマを見て、医学会に成り上がろうと考えた。今思えば、大学医局なる物の実態はあの小説やドラマに描かれていた封建的な体質とは遙かに異なっていた。それだけ時代が変わっていたのだろう。それはともかく、卒業後は大学でアカデミックな雰囲気を楽しむ方針でいたのはこの小説とドラマの影響が大きい。(60代/脳神経外科)
- 漠然と医学部を志していた頃に観て、主演俳優の演技の迫力に圧倒された記憶があります。医師になるのに一抹の不安を覚えたものでした。(60代/内科)
主演・唐沢寿明版
- 学生時代に唐沢版の白い巨塔を観て、衝撃を受けた。それに近い医局に入局してしまったが、入局先のサブスぺ同士で対立して分離して、その医局を離れた。(40代/血液内科)
- 唐沢寿明と江口洋介が良かったです。特に、唐沢寿明の財前教授の孤独さが、強く印象に残っています。(60代/腎臓内科)
ER緊急救命室
1994年9月にアメリカで放送が始まった海外ドラマシリーズ。シカゴのクック郡総合病院のER(緊急救命室)に勤務する医師、看護師たちの日常を描く。
- 医療系ドラマの中で1番現実に近い印象だから(20代/内科)
- まだ学生の頃にドラマERを見て、モチベーションが上がりました。(40代/小児科)
- 救急医療のリアルな状況が描かれており、当時駆け出しだった自分にとっても勉強になるエピソードが多かった。初期のエピソードで胎盤早剥?の妊婦さんがなくなる回は、グリーン先生が痛々しくて見ていられなかった。(50代/心臓血管外科)
- あまり詳しく覚えていませんが、看護師の役割や医師の働き方がずいぶん日本と違ってシステマチックであったことが印象に残りました。(50代/心療内科)
- とにかく設定がリアルで斬新だった。(60代/麻酔科)
- 登場する医師役の俳優が、医師である自分から見ても同僚であるように思えた。(60代/外科)
コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-
翔陽大学附属北部病院救命救急センターに赴任した、フライトドクター・フライトナースを目指す4人の若者たち。人生や職務に思い悩みつつも、救命救急や災害医療に奮闘する姿を描く。
- ドクターヘリやっている人、すごいと思った(40代/眼科)
- 研修医の活躍や葛藤、進路が2人の子供とだぶる。(40代/内科)
- ドラマである点、誇張した表現はあるが、ストーリーが現実に沿ったもの、ありえない話でないこと、ドラマの視点が医療者側にも向けられている点がよい。救急現場において人手不足による状況で経験の浅い医師が重症患者に対応しないといけない現場、医療ミスではないが、結果的に患者が亡くなる場面も描かれる。医療に対し批判的な立場でなく、救命救急に携わる医療スタッフ、医療現場の問題がドラマ内で取り上げられているところがよい。医療者以外の一般の方にも医療の現状を垣間見ることができるよいドラマと思う。(50代/循環器科)
ドクターX ~外科医・大門未知子~
天才的な腕を持ちながらも特定の病院や医局に属さない、フリーランスの女性外科医・大門未知子の活躍を描く。
- 「私、失敗しないので」と言って失敗しないところがスカッとする。(40代/脳神経外科)
- 水戸黄門みたいで面白い。現実とあまりにもかけ離れているので、純粋に物語として楽しい。(40代/内科)
- ブラックジャックの現代版と思いながら見ていました。(50代/精神科)
- かなり漫画的だが、医療界への願望等が垣間見えて面白かった。(60代/総合診療科)
JIN−仁−
幕末の江戸にタイムスリップしてしまった脳外科医・南方仁。現代とは異なる医療器具、環境の中で人々の命を救っていき、坂本龍馬など幕末の英雄たちと交流を深め、自らも歴史の渦の中に巻き込まれていく。
- 幕末当時の医療の状態などもわかり、今までの医療ドラマとはひと味違う印象を受けた。(50代/内科)
- 主人公がかっこよすぎる。(50代/放射線科)
- 江戸時代にペニシリンを作る。(60代/小児科)
コウノドリ
産婦人科医であり、謎のジャズピアニストでもある鴻鳥サクラ。彼が勤務する聖ペルソナ総合医療センターで出産する妊婦とその家族を中心に、命が誕生する現場を丁寧に描く。
- 医師になって、不満なく見られたドラマはこれだけ。(40代/整形外科)
- 染色体異常(18トリソミーでしたか)の赤ちゃんが実際に出演されていて、こんなに医療が進んだんだなと本当に感動しました。(50代/精神科)
- 同窓の医師がモデルだったので。(60代/内科)
振り返れば奴がいる
超一流だが冷酷な外科医・司馬と、誠意ある治療を志す外科医・石川。方針の違いから、2人は事あるごとに対立していく。
- 今見たら、医療機器のセットやタバコ吸いまくりなど突っ込みどころが多いのだろうが、とにかく織田裕二さんと石黒賢さんがかっこよくて、毎週楽しみに見ていた。主題歌も最高。あんなにいい先生だった石黒さんが、後半日に日にやつれていって、織田さんを追い出そうとダークになっていく様は見ていて心が痛かった。(40代/消化器外科)
- チャゲアスの「YAH YAH YAH」を上の先生方がいる飲み会で歌いまくっていた。(50代/脳神経内科)
医龍
かつて、世界最高レベルの救命医療チームを率いていた天才外科医・朝田龍太郎。片田舎で自堕落な生活を送っていたところ、明真大学付属病院胸部心臓外科の助教授・加藤晶から心臓外科医にとって最高峰の技術を要すると言われる「バチスタ手術」をしないかと持ちかけられる。
- 阿部サダヲの演技が絶品。(50代/精神科)
- 現実離れしたところと病院内部の真実が混在して面白かった。(60代/麻酔科)
ブラックペアン
出世には興味がなく一匹狼ながらも、天才的な手技を持つ外科医・渡海征司郎。彼が働く東城大学医学部付属病院に、他大学出身の医師によって手術用最新医療器具が持ち込まれ、新しい手術の形が導入されようとする。それについて疑念を持ち、反対する渡海は組織に真っ向から立ち向かっていく。
- 外科に興味を持った。(20代/外科)
- 二宮和也の演技が最高でした。麻酔科医は心臓外科医と仕事上深いおつきあいがあり、その姿、特に手術中の姿を一番よく知っていると思います。あれほど心臓外科医の真の姿を演じられる人は他にはいない、彼は天才です。医療ドラマは意図的に作られた感がありありで真実とはかけ離れているものがほとんどなので見ることはなかったですが、ブラックペアンだけは例外、夢中になりました。(60代/麻酔科)
ベン・ケーシー
1960年代にアメリカ、後に日本でも放送されたテレビドラマ。総合病院の脳神経外科に勤務する医師ベン・ケーシーが、指導医の教えのもと研鑽を積み、院内の医師、患者やその家族との交流を通じて、医師として成長していく姿を描く。
- 数年前、見返す機会がありました。「神経外科医」(今なら脳外科医でしょうが、そう訳されていました)の主人公はとてもストイックで、意識の低い同僚には厳しく、患者にはケースワーカー顔負けの寄り添いぶりを見せます。医師のアルバイト、ガラス瓶の点滴、ディスポでない注射針、気脳写など当時を懐かしく思い出しました。(60代/循環器内科)
- 古いテレビ番組ですが、医者の道へ進むか、宇宙へ行くか悩んでいる時に決心させてくれた。脳外科は体力的に無理そうなので、神経科へ進んだ。(70代/眼科)
- まだ駆け出しの医師であった小生には、大変示唆になる内容が多かったと思います。(70代/内科)
アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋
萬津総合病院薬剤部に勤務する薬剤師・葵みどり。1人でも多くの患者を救いたいという気持ちから患者に深入りしがちで、他の薬剤師から「もっと効率的に仕事をすべき」と叱られることもしばしば。ある日、彼女はある医師の処方箋に疑問を抱き、すぐに疑義照会をするが……。
- 医師から見た立ち位置のドラマでないから、きれいごとでないリアリティのある描写ができたんだと思います。もっと仲良く仕事できないものですかね。(40代/脳神経内科)
- 賛否両論ありますが、あれだけ頑張る薬剤師を見たことないし、あんな薬剤師さんなら一緒にがんばれそうな気がする。(40代/腎臓内科)
グッド・ドクター
驚異的な暗記力を持つ一方、コミュニケーション能力に障害があるサヴァン症候群の新堂湊。小さい頃から小児外科医になることが夢だった彼は、研修医として小児外科で働き始める。トラブルを起こし、偏見の目で見られながらも、「子どもたちを救いたい」という一心で行動する彼の姿は、いつしか周囲をも変えていく。
- ベッドサイドに張り付いて患者を観察し、文献も調べて治療にあたる姿がリアルで、患者を助けたいという強い主人公の思いは、自分も若いころの思いを取り戻させてくれた。(40代/小児科)
- アメリカ版のものが好きです。主人公はサヴァン症候群(自閉症あり人と上手に会話が出来ないが天才的頭脳をもっている)の外科医です。ドラマの中では難病や手術時予期していなかった病気が見つかるのですが、外科医として経験の浅い主人公は指導医も考えつかない方法で患者さんを救っていきます。彼の外科医の並外れた才能を高く評価してくれている院長に対し、外科部長から患者・その家族の病気の説明が正直すぎ(嘘がつけず)不信感を持たれ、病理に回されるも紆余曲折を経て、同期の研修医達の助けもあって外科医に戻り、徐々に自閉症を克服し、名医・普通の男性となる過程を描いています。リアルな医学的病名が毎回出て、こんな難病の方の命を助け、徐々に自閉症を克服する主人公の演技に感動を覚えました。ただ彼にはなれません。(60代/外科)
救命病棟24時
大病院の救命救急センターの研修医となった小島楓は、初日から指導医である進藤一生と衝突してしまう。救命救急センターの過酷な日常、患者や家族、医者や看護婦といった人間模様、そして小島楓の成長を描く。
- 災害医療をテーマにした第3シリーズで、トリアージをする主人公の姿は、自分ではまねできないと思いました。(50代/脳神経内科)
白い影(主演・中居正広)
優秀だが不愛想な外科医・直江庸介と看護師・志村倫子の恋愛、直井と対立する医師との確執を描く。
- 中居正広の迫真の演技。多発性骨髄腫の病態を知る機会になった。医学生だったので、これから医療現場に出るに当たってとても役に立った。(40代/救急医学科)
ドラマをきっかけに、医師が身を置く世界に興味を持って医師になった、主人公と同じ診療科を選んだというエピソードが目立つ結果となりました。医師になった後では、ドラマの内容が勉強になった、現実と比較して考えを巡らせたといった声が多く集まりました。後編では、医療ドラマが現在の職業・仕事観に影響を与えたか、どんな医療ドラマを観てみたいかについて取り上げます。