「苦手な人と交渉できるようになった」
「物事の優先順位づけが上手くなって、業務の効率が向上した」
「不可能と思っていた事項に突破口を見出せるようになった」
「自分や周囲を客観視できるようになった」
「5年後位かと思っていた目標が1年後に達成できそうになった」――。
「苦手な人と交渉できるようになった」
「物事の優先順位づけが上手くなって、業務の効率が向上した」
「不可能と思っていた事項に突破口を見出せるようになった」
「自分や周囲を客観視できるようになった」
「5年後位かと思っていた目標が1年後に達成できそうになった」――。
これらは、わたしたちの勤める国保旭中央病院でコーチングを受けた医療スタッフから挙がった声です。
皆さんは、「コーチング」「コーチ」という言葉から何を想像しますか?トレーナーやメンター、コンサルタントとは何が違うのでしょうか?
ヒントは「コーチ (Coach)」の語源にあります。1500年頃、ハンガリーのコチという小さな村で世界初の馬車が作成され、村の名前にちなんで「コチ」と呼ばれました。コチの役割は乗客や荷物など大切な物を目的地まで運ぶことであり、そこから「人の目標達成を支援する」という意味で「コーチ」という言葉が使われるようになりました。
色々な考え方がありますが、コーチングとは「対話によって相手の自己実現や目標達成を促す技術」だとわたしたちは考えています。
コーチングでは、教えたりアドバイスしたりすることはありません。知識や技術を教えたり、「こうした方がいいよ」とアドバイスしたりするのは、「ティーチング (Teaching)」に該当します。これはこれで医療職のような専門職では欠かせないものなので、コーチングとの使い分けが大切です。
もう少し詳しくご説明しましょう。コーチングのイメージをわかりやすく理解するために、下図をご覧ください。コーチとその相手が同じキャンバスに向かって並んで座り、コーチは相手が未来に向けてビジョンを描くのをサポートしています。ここでコーチは相手をリラックスさせ、よく話を聞き、時々「ここのところを詳しく教えてください」「次はどんな絵を描きたいですか?」「他の人からはどう見えるでしょうか?」といった質問を投げかけますが、評価や指示・命令はしません。課題の解決や行動の決断は相手に委ねるのです。
こうした姿勢の根底には、「答えは相手の中にある」という考え方があります。決して、自分の思うように他人を変えることはしません。
次に、コーチングが力を発揮しやすいシチュエーションについて考えてみましょう。仮に、あなたが以下の3つのタスクにこれから取り組むとします。
A. 10日後に締切を控えた学会演題の抄録作成
B. ずっと先延ばしになっていた研究データに基づく論文作成
C. 本日締め切りのサマージャンボ宝くじの購入
目標達成のために1つのタスクだけコーチをつけられるとしたら、どれを選ぶでしょうか?オススメはBです。
Aのように緊急性が高いタスクはコーチがいてもいなくても始めざるを得ないものですし、Cは緊急性が高いですがそこまで重要ではないように思えます(宝くじ好きの方、すみません)。Bのように緊急性や決まった期限がないためになかなか着手できないが、自分や組織の成長・キャリアを考慮すると極めて重要になってくるタスクこそコーチングに適しています。
コーチングは医療分野だけでなく、経営、教育、組織の風土改革、家族とのコミュニケーションなど幅広い応用が可能なのも魅力です。しかし、何から何まで解決できるわけではありません。1つのツールであるということを認識しておくことが重要です。どのように使うと効果を発揮できるのか、その具体的な活用法については次回以降で述べていきます。
コミュニケーションを工夫したりコーチングを少し取り入れたりするだけで、日常は大きく変わってきます!理論を学んで実践する習慣をつければ誰でも習得できるものですから、是非ともこの連載にお付き合いください。
横尾英孝
所属 千葉大学医学部付属病院総合医療教育研修センター
大西俊一郎
所属 旭中央病院糖尿病代謝内科
糖尿病を専門として、地域、病院院内のチーム、糖尿病患者を良くするためにコミュニケーション、コーチングを学ぶ。それぞれ「教える」、「楽しむ」ことを第一義の価値観として持ち、人のエンパワーメントを通じて新しい形の医療を望む。