わたしにとって、研修医と主婦の両立は難しかった。
当時は、医師2年目。耳鼻咽喉科の初期研修医として少しずつできることが増え、スムーズに動けるようになってきたなと思っていた。そんな中迎えた、麻酔科のローテート。早朝出勤が苦手なわたしは、学生の頃に麻酔科の道を諦めていた。そして、たった3カ月でさえ、患者さんに全身麻酔をかけて管理することは重責を感じるものだった。手技の不安だけでなく、急に上司が変わったために人間関係をいちから作り直さなければならず、誰に相談するのがベストなのかを知るまでにも時間がかかった。そんな状況に大きなストレスを抱え、顎関節症にまでなる始末だった。
その頃、同時並行で進んでいたのは結婚の話だった。麻酔科ローテート中は勤務時間が短く、結婚準備にはもってこいだと思っていた。しかし思いのほか仕事の精神的ストレスが大きく、結果的に結婚準備に逃げていた気がする。
結婚の準備は、それはそれで大変だった。両家へのご挨拶、結納の日程や場所を決めていろいろなところに連絡したり、実際に赴いたり。多くの方が関わってくるので、そう思い通りにはいかず、物事はスムーズに決まらなかった。そういったことも負担になってくると、仕事と結婚準備の両方でわたしのストレスは逃げ場を失っていた。