家事育児を行うには物理的な時間が必要なため、それぞれの働き方にも関わります。ここでは回答いただいた医師438人の労働時間と家事時間について見ていきましょう。
1日の平均労働時間の最多は「8~9時間未満」(26.7%)でした。しかし、10時間以上と答えた医師は合わせて30.8%と、約3割には長時間労働の傾向が見られました。
図2:1日の平均労働時間(20~70代の医師438人が回答)
一方、家事時間はどうでしょうか。出勤日と休日を比較したところ、両方とも20%超だったのは「1時間程度」。休日だけ20%超だったのは、「家事をしない」、「30分程度」で、出勤日・休日でメリハリをつけて家事に取り組んでいる医師が多いようです。今回集計された労働時間に通勤時間なども考慮すると、家事に割ける時間がそもそも少ないことも予想されます。
一部では平日・休日ともに「2時間程度」、休日に「3時間から5時間以上」の家事時間を割く医師もいるなど、家事育児の負担は人によって差があるようです。
図3:1日の平均家事時間(20~70代の医師438人が回答)
そして、現在の労働時間と家事時間のバランスについて満足度を尋ねたところ、半数以上の医師が「満足している」と回答しました。他方、「満足していない」と答えた人は14.6%にとどまるため、現在の仕事と家事のバランスを肯定的に捉える医師が多いようです。
図4:労働時間と家事時間のバランスに対する満足度(20~70代の医師438人が回答)
それぞれの理由は以下の通りです。
とても満足している
- 仕事が楽しくできて、家の居心地も良い(30代女性/精神科)
- 夫が家事をたくさんしてくれる。自分も外来・健診のみで呼び出しもないので、普通の会社員のような生活をしている(40代女性/呼吸器内科)
- 家庭でのストレスがないので、仕事にも影響なし(60代男性/脳神経外科)
まあ満足している
- 一応家事分担はできている。なお、休日の子供の送り迎えをいれると4時間になる(50代男性/糖尿病科)
- ハウスクリーニングなどの有料サービスの助けも借りることにしているのと、在宅での仕事が多いので、今のところ犠牲にしている分野はありません(50代女性/放射線科)
- 1時間程度であれば、特に負担感はないので(60代男性/リハビリテーション科)
どちらとも言えない
- 子どもが成長しており自分の仕事にも理解してくれていること、自分の両親の助けがあるといった環境の上で成り立っているけれども、労働時間は過剰だと感じている(40代女性/小児科)
- 本当は何かしないといけないと思うのですが、家事スキルが不足していて逆に迷惑をかけてしまいそう(40代男性/泌尿器科)
- 家事時間を増やすべきとは思うが、体を休めたい(60代男性/消化器科)
あまり満足していない
- もっと子育てに関わりたいが、家計の収入が少ないために、やむを得ず、当直や休日勤務をしないといけなく、子供と関わりにくくなっている(30代男性/脳神経内科)
- 家事、家計に関わること、もっと色々やりたいのに時間がない(30代男性/小児外科)
- 自分の時間がないことはないが、休日に好きなことができない(40代男性/精神科)
まったく満足していない
- 仕事以上に育児、家事が忙しく仕事が思うようにできない。しかし、仕事も家庭も中途半端で不安(40代女性/内科)
- 共稼ぎだが自分(開業医)の労働時間が毎日16時間程度で休日もないため、家事をほとんど妻(勤務医)に依存しており、申し訳なく思っている(40代男性/精神科)
- 家事も育児も学校の保護者会も地域の役員もほとんど女性。学校からの電話も、まず母親(50代女性/糖尿病科)
今の生活に満足している医師もいれば、やむを得ずどこかにしわ寄せがきて不満を感じている医師もいるとわかりました。家庭でのストレスが少ない先生は、仕事にも気持ち良く取り組めているようなので、今後本シリーズでご紹介する家事分担や負担軽減策などを参考に、自身にとっての最適なワークライフバランスを探ってみてはいかがでしょうか。
中編では、夫婦の家事分担について、具体的に紐解いていきます。