好調なのは7府県、28都道府県でマイナス傾向
はじめに、都道府県ごとの傾向を見てみましょう。
図2:2020年7~9月における都道府県ごとの求人倍率と下限年収(平均値)
※前回(2020年4~6月)から上昇している場合は赤字
まず、求人倍率が上昇したのは岩手県、山形県、栃木県、福井県、滋賀県、京都府、島根県、山口県、徳島県、香川県の10府県です。中でも岩手県、徳島県は求職者数が減ったことで、求人倍率の上昇幅が10ポイントを超え、求職者1人あたりの選択肢が増えています。
また、下限年収(平均値)が上昇したのは岩手県、山形県、茨城県、群馬県、新潟県、福井県、愛知県、滋賀県、京都府、島根県、徳島県、高知県、大分県、宮崎県の14府県です。ただし、2020年4~6月と比べて微増のところがほとんどで、最大値は高知県の+14万円でした。
そして、求人倍率・下限年収(平均値)ともに上昇したのは岩手県、山形県、福井県、滋賀県、京都府、島根県、徳島県の7府県にとどまりました。2020年4月以降、中部、中国・四国エリアは転職市場の活況が続いています。
一方、求人倍率・下限年収(平均値)ともに下降している地域は28都道府県でした。中でも東北、関東、近畿、九州エリアは下限年収が10~30万円ほどダウンする医療機関のほか、求人自体を取り下げる医療機関が多く、コロナ禍による経営悪化の影響が予想されます。
緊急事態宣言解除以降、転職市場は徐々に回復中
このほか、医師・医療機関を取り巻く転職市場の変化について、エムスリーキャリアで医師の転職支援にあたるコンサルタントに聞きました。
求職者の変化
「2020年4~6月と比べて求職者数は増えており、1年以内など、短期で転職希望の医師も増えています。また例年に比べ、急性期で疲弊して退局するケースが増えているのも今期の特徴です。
緊急事態宣言中は他院訪問を禁止する医療機関もありましたが、宣言が解除された6月以降は緩和され、アルバイトをする医師、転職活動の面接に行く医師も増えています」(医師転職支援コンサルタント)
医療機関の変化
「2020年4~6月の急性期病院では、採用活動は止めないものの、当直必須にするなど条件を厳格化するケースが増加。そのため、応募できない状況や、面接しても内定が出ない状況にありましたが、2020年7~9月は条件緩和が進み、徐々に内定も出るようになってきました。
一方クリニックは、2020年4~6月は外来患者数の減少により、採用活動の取り止めも多く見られましたが、2020年7~9月にかけて外来患者数が戻ってくると採用活動を再開しています。また2020年4~6月は感染リスクが低いこと、収入が安定していることなどから自由診療を希望する医師が増え、内定が出づらい状況でしたが、2020年7~9月にかけては徐々に落ち着いてきています」(前出のコンサルタント)
診療科別の変化
「自由診療の美容系クリニックや小児科、耳鼻咽喉科といった外来中心のマイナー科は、徐々に求人募集を再開し、内定が出やすくなるなど変化が出ています。メジャー科は2020年4~6月と変わらず採用を進めているので大きな変化は感じていません。」(前出のコンサルタント)
全体としてはコロナ禍で混乱していた春先に比べ、転職市場は求職者数・求人数ともに回復し、勤務条件も緩和されるなど、転職市場は徐々に活気が戻ってきたようです。とはいえ、転職市場は刻々と変化しています。転職時期を迷っているのであれば、医師人材紹介会社なども上手に活用し、最新情報を得ながら考えてみてはいかがでしょうか。
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