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企画記事 転職ノウハウ

まわし蹴り、叱責…医師の壮絶なパワハラ体験―医師のパワハラ調査vol.1


2021年1月6日(エムスリーキャリア編集部)
記事KV

2020年6月に通称パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)が施行され、パワーハラスメントの防止が企業に義務付けられました。医療機関も例外ではなく、常時使用する労働者数が100人以上であれば、2020年6月1日から対象となっています。今回は医師499人が回答したアンケート(※)から、「医師のパワーハラスメント」(回答数440件)の実態を、赤裸々なエピソードと合わせてご紹介します。

※2020年10月3~11日、m3.com会員の医師を対象にしたアンケート調査。「医師のパワーハラスメント」(回答数440件)、「医師の逆パワーハラスメント」(回答数59件)をテーマにエムスリーキャリアが実施


2人に1人がパワハラの被害あり

はじめに、職場で何らかのパワハラを受けたことがあるかどうかを尋ねたところ、55.2%の人が「はい」と回答しました。本アンケートの回答者に限れば、およそ2人に1人が、職場で何らかのパワハラ被害があるとわかりました。
グラフ1

図1:職場で何らかのパワハラを受けたことがありますか(20~70代の医師440人が回答)

では、具体的にどのようなパワハラを受けたのでしょうか。現在、厚生労働省によって定義されている6つの類型から選んでいただきました。

グラフ1

図2:受けたパワハラの内容(20~70代の医師のうち、「パワハラを受けたことがある」と回答した243人の複数回答)

最も多いのは公の場での叱責、侮辱、長時間にわたる非難といった「精神的な攻撃」で38.2%です。続いて教育しないまま過大なノルマを課す、終業間際に大量業務を押し付けるといった「過大な要求」が23.9%、無視、隔離、仲間外れといった「人間関係からの切り離し」が16.4%でした。。

罵倒、仕事の押し付け…理不尽なパワハラエピソード

具体的にはどのようなパワハラを受けていたのでしょうか。一部抜粋してご紹介します。

1位:精神的な攻撃


  1. 研修医の時のこと。当直明けの申し送りで、救急部の部長から「プレゼンがなってない!話にならん!」と、持っていたファイルを机に叩きつけながら、スタッフステーションで罵倒された(30代男性/消化器科)

  2. 初期臨床研修医として働き始めて3カ月たった時、看護師に、多くの人が見ている前で長時間叱責された。人格否定もされた。一方的にあることないことを責められて、こちらが泣いても止まらなかった(30代女性/内科)

  3. 3領域の専門がある内科で、専攻を決める前に、教授の専門領域でない領域を希望していたら、カンファであからさまに出来ない医者扱いされ、さげすまれた。更に、カンファ中の電子カルテのフリーズも自分のせいにされるなど、自分の原因でないことでも揶揄される状態だった(40代男性/内科)

  4. 執拗なメールがあり、細かい指摘をして、どのような理由で何をやったのかを、ねちねち書いてくること(50代女性/科目未回答)

2位:過大な要求


  1. 長時間労働が多く、1か月に100時間以上の時間外労働に加えて月4回の当直があり、1年の半分以上は体調不良であるが、当直をしない医師から「まだ倒れていないためもっと働け」と言われた(30代女性/腎臓内科)

  2. ICU患者で手が離せないのに、外来患者対応をお願いされ、無理であることを伝えたのに「新患担当でしょ」と半ば強制的に押し付けられたこと(30代男性/脳神経外科)

  3. 研修医時代、まったく適切な指導を与えられないまま過剰な業務を押し付けられた上、物理的に無理だと断るとその後のカンファレンスにおいて些末で意味不明な質問を執拗に繰り返し、答えられない、あるいは答えないと罵詈雑言を浴びせられた(40代男性/小児科)

  4. 休日や時間外の病院行事への無報酬、交通費なしの参加強要。有給取得を強要するが、休暇中の業務バックアップなし(50代女性/科目未回答)

3位:人間関係からの切り離し


  1. 急患対応以外は医局から一歩も出ることを禁じられた。平日日勤、平日時間外、休日の急患対応、平日の新患外来をすべて一人で担当、入院での主治医や手術の執刀もすべて一人で担当(40代男性/脳神経外科)

  2. 「手術室に入るな」と言われる。論文や学会発表の共著者から削除される。送別会の開催なし(60代男性/外科)

  3. 会議で私が話すと研修医が萎縮するので、発言を禁止された(70代以上男性/内科)

4位:過少な要求


  1. 仕事を与えられず、医局で椅子に座って過ごしていた(40代男性/放射線科)

  2. くびを言い渡された。担当患者がいなくなった(60代男性/リハビリテーション科)

  3. 外科医だったのに麻酔科の仕事を余儀なくされて、数年間は麻酔医として仕事をした。昨年から麻酔医を雇用して仕事がなくなり病棟と外来の勤務を言われたが、常勤医を外された(60代男性/科目未回答)

5位:身体的な攻撃


  1. 研修医だった頃、自分のミスを怒られる時に殴られた(40代男性/内科)

  2. 顔に紙カルテを投げつけられる(40代男性/耳鼻咽喉科)

  3. 後輩の前での罵倒、まわし蹴り(40代男性/救急医学科)

6位:個の侵害


  1. 人の交際関係をべらべら言いふらす(30代男性/消化器科)

  2. 病棟で好意を持った看護師の名前を言わされ、その看護師に私が好意を持っていることを勝手に暴露された。また、バイト代を含めた年収を言うように強制され、答えたくないとはぐらかすと「君は秘密主義だ。それはよくない!」と結局言わされた(50代男性/呼吸器科)

  3. 当時の理事長から給料や私生活についてとやかく言われた(50代性別未回答/小児科)

その他


  1. 一方的な方針の押し付け(40代男性/小児科)

  2. 病気を理由にした給与の大幅減額(60代男性/産婦人科)

多くの対処法は我慢や諦め

パワハラを受けた人は、どのように対処していたのでしょうか。本アンケートの上位は「気にしない、あるいは我慢して特に何もしなかった」が21.6%で、「職場を変えた(異動・休職・退職など)」が15.2%でした。パワハラの場合、誰かに相談してパワハラの解決を試みるよりも、我慢を続けたり、諦めて職場を変えたりしている人の方が多いのかもしれません。

グラフ1

図3:パワハラを受けた際の対処法
20~70代の医師のうち、「パワハラを受けたことがある」と回答した243人の複数回答)

そして、「これまでに、職場で何らかのパワハラを受けたことがある」と答えた方243人に、職場のパワハラがきっかけで転職を考えたことがあるか尋ねたところ、ある人は79.8%で、ない人の11.5%を大きく上回る結果になりました。パワハラの多くが、進退を考えさせるほど医師に大きな影響を与えているようです。

グラフ1

図4:職場のパワハラがきっかけで転職を考えたことがありますか
(20~70代の医師のうち、「パワハラを受けたことがある」と回答した243人の回答)

本アンケートから、パワハラは嫌な思いが残ることはもちろん、職場を変えざるを得ないなど、医師のキャリアにも影響を及ぼしかねないことがわかりました。vol.2では立場が下の者から上の者に対して行われる「逆パワーハラスメント」についてご紹介します。

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