医師の転職、一番の難所は「辞めどき」
医師の皆さまの退職、とくに退局において、一番の難所は「辞めどき」であるとお感じになる方は多いかと思います。退局は先生方のキャリアにおいても大きな転換点になりますから、これまでのご関係をなるべく壊さず「円満に退局したい」とお感じになるのは当然です。
円満な退局に向けては、とくに以下の3点にご留意いただくことが大切ではないかとお伝えしています。
- タイミング:いつ伝えるか
- 相手:誰に伝えるか
- 伝え方:どう伝えるか
順番に解説して参りましょう。まずは、タイミング「いつ伝えるか」です。
私どもエムスリーキャリアに退局のご相談をいただいた場合、辞意を表明するタイミングは「次の転職先が決まってから」をおすすめしております。しかし実際は「転職先が決まる前に辞意を表明したい」という先生は少なくありません。
職場の規定上、半年前・1年前までに退職を申し出ねばならない。また、医局に対して筋を通したい。あるいは、転職先を探していることが漏れて教授の耳に入ることを恐れる、といった理由が多いようです。
確かに、円満に退職をすることは大事なのですが、一度表明した辞意は簡単には撤回できません。退職日が決まっていると、次の常勤先を焦って決めざるを得なくなるリスクもあります。とくに、首都圏・大都市圏など人気の高いエリアでご転職を検討されている場合、先生方が思っていらっしゃるほど売り手市場ではない可能性もあり、転職活動が長引く、転職を断念するというケースも考えられます。辞意の表明は転職先の目途がついてからをご検討ください。
次に、退局を伝える相手「誰に伝えるか」です。
私どもが相談を受けた際には、退局を申し出るのはまず「実際の監督をされている上長」をおすすめしております。ところが、エムスリーが2020年に実施したアンケート調査によると、退局したい旨を最初に伝えた相手の1位は教授。次いで医局長、直属の上司の順となっており、実態とは少々乖離があるようです。
人事に関すること、辞めたいと思っていることなどは、ご自身の思っている以上に組織内で噂などが広まることもあります。誰かに相談することは悪いことではありませんが、あまり広範に言わないことも大切です。
最後に、伝え方「どう伝えるか」です。
ご職場で活躍されている先生が辞めるということになれば、病院側は当然ですが何とか引き止められないか、とまず考えるものです。「患者さんの引継ぎは?」「先生がいなくなったらこの地域はどうなるんですか?」「うちでもやりたい診療ができるはず、不満があるなら改善します」などの声をかけられたり、「後任を探すから、1年でいいから伸ばしてくれ」と、引き延ばされてしまったり。あの手この手で慰留されることになるかと思います。
こうした留意策はどのような転職でも見られがちなもので、この段階から2~3回の話し合いを経て、ようやく退局が決まることも珍しくありません。
退局に対する本気度を確認されるプロセスだと考え「既に退局を決意している」「次のステップを考えている」ことを根気よく伝えることが重要です。
熱心に引き止められるとつい心が動いてしまうこともあると思いますが、そもそも退局を決意されるには、今の職場では実現できないことがあり、それを叶えたいという先生のお考えがあったはずかと思います。ご自身の意志を大事にするなら、一度辞めますと言った後は真摯に、しかし引きさがらずに辞意をお伝えしていくのがよいでしょう。
トラブルを防ぐ「退局」のポイントについて、キャリアコンサルタントの人見氏にお話を伺いました。退局を申し出る際には「タイミング・相手・伝え方」の3点に留意して、気持ちよく次のステップに進みたいものですね。